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心の拠どころは柔らかい鼻の持ち主

去年の夏から15年以上ぶりに再開した乗馬。と言ってもそのすごく前に東京郊外で習っていた時もそんなにレッスン数をこなした訳でもなく、初心者の域を抜けることはなかったので、ほぼ0からやり直し。

東京ほどではないにしても、ロンドンの乗馬もなかなかお値段の張る習いごとで、それでもグルーポンの破格コースが終わった後にも続けることにしたのは、乗馬そのものが大好きだったことを思い出したのはもちろんながら、1番の決め手は、私の脆いメンタルの安定効果が抜群だったからでした。

秋は慢性化している怪我が良くなったり悪くなったりを繰り返していて、あまり定期的に乗れなかったものの、12月からはほぼ毎週レッスンを受け、体の使い方もコツを掴み始め、馬との会話も少しずつ出来るようになってきて、特に2月後半くらいからは日々の緊張度も高まっていたので、レッスンはもちろんのこと、レッスン前後に馬と触れ合う時間は大きな癒しとなっていたのでした。

乗馬の性質上、レッスンは屋外だし、そもそも安全のためいつでもどこでも1馬身空けるのが基本なので、感染の可能性という点では割とリラックス出来、ロックダウンの前の週までレッスンを受けることができました。

結果最後となってしまったレッスンは、初めてペアを組んだ馬とだったにも関わらず、ずっと前から一緒に練習して来たかのように、最初から楽に会話が出来るという初めての体験。先生からもレッスン後半、馬の状態がとても良くなったと褒めてもらい、それはそれは楽しい時間を過ごしたのでした。レッスン後は1番の仲良し馬姫のところに行って、いつもより長めにいちゃいちゃ。ツンデレな彼女にしては珍しく、私の肩に頭を乗せて来たので、私は彼女の首にハグをしながら、しばらくじっとしていました。その週はすでに仕事がなくなっていたので、私の不安を取り除こうとしてくれたのかな、なんて。

近い将来そうなるだろうと分かっていながらも、その翌日、乗馬クラブがついに閉鎖しなければならなくなったというニュースを聞いて、なんだかとてつもなく絶望的な気分になったのを覚えています。その時まで、こんなにも自分がダメージを受けるとは思っていなかったのだけれど、もうしばらく馬たちに会えないという事実が、じわじわ、ずーんと来たのでした。どうやら思っていた以上に彼らの存在が心の支えとなっていた模様。

手のひらやお腹のあたりに押し付けて来てはフゴフゴ動くくちびる、とてつもなく柔らかい鼻先、大きくて透き通った目、ポクッポクッという足音、くるくると動く耳、あったかくて大きな胴体。触れられないもどかしさは、しばらくの間、クラブのスタッフがFBライブで配信してくれている厩舎の様子を見て凌ぐのであります。

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