COP27とCOP28の共通点 ~ パレスチナの人権弾圧・環境正義問題に沈黙する活動家や著名人たち

思い起こせば、去年(2022年)の10月は、エジプトのシャルムエルシェイクで11月に開催されるCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)に向けて、世界中の環境正義活動家が環境正義/気候正義の意義、概念を問い詰められている真っ最中でした。

エジプトの独裁政権による人権&環境活動家への長年に渡る弾圧に目を伏せ、耳をふさぎ、口を閉ざしたままで、存在そのものがグリーンウォッシュ、人権ウォッシュといわれたCOP27に参加するのは、人種や民族、国や地域、その他社会経済的な属性による差別や迫害、搾取に抵抗するべき環境正義/気候正義活動家としては真逆の行為になるのではないか、と。

温室効果ガス排出量が少ないのに気候変動の影響を偏って受けてきた、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる開発途上国の人々が声を届けるために参加するのはいいとしても、人権弾圧を受け、不参加を呼びかけていたエジプトの活動家たちの声を聞き、先進諸国の活動家は参加を見送るのが公正の問題を訴える者にとって正しい行動だとナオミ・クラインは説き、気候ムーブメントを起こしたグレタ・トゥーンベリさんも活動家らへの弾圧や、リゾート地での開催を理由に参加を見送りました。

日本からも活動家が現地を訪れましたが、弾圧されているエジプトの活動家に連帯して声をあげる姿は見られませんでした。

さて、今年のCOP28は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、11月30日から12月12日まで開催されます。国営化石燃料企業のCEOが議長を務めます。

なんか、去年と空気が似ていてモヤモヤするんですよね。

10月7日にパレスチナのハマスによるテロ攻撃をきっかけに、イスラエルがガザ地区に2週間近く爆撃を続けています。2014年と2021年にもイスラエルによるガザ地区への集中爆撃はありましたが、今回は規模が違います。

パレスチナの人々は、イスラエル国家建設のために住む場所を追われ、それから75年間、国家を持つことなく、イスラエルによって占領されてきました。ガザ地区には、約230万人が住んでいますが、ほとんどが難民で、半分以上が子どもです。ガザから出ることはできません。イスラエルはインフラも全部止めて、食料や水の供給も断って(230万人にトラック20台分の人道支援物資が運び込まれたそうですが)、逃げ場をふさいだうえで、ところ構わず爆撃しています。

ガザの人々は、「逃げろと言われても逃げられる安全な場所がどこにもない」「明日の朝、生きて目が覚めるかどうかもわからない」と言います。

テロに端を発したイスラエルとハマスの紛争に目が行くのは当然ですが、これまでイスラエルがパレスチナ、特にガザ地区の人々にしてきたことは、環境正義問題でもあります。特定の人種や民族、属性の人たちに対する環境汚染や土地収奪などは、まさに環境正義ど真ん中の問題なんです。

また、ちゃんとした国家を持たず、イスラエルや西側諸国の思惑に振り回されて、人々の民意を反映させた自治も思うように行えない状態で、気候変動への適応・緩和策をとれるはずもありません。これは気候正義問題です。

で、そんな状況の中、去年のCOP27開催前と同じように、世界は沈黙しています。沈黙レベルは去年以上かもしれません。

グレタ・トゥーンベリはFree Palestineと声をあげています。ナオミ・クラインも去年同様、イスラエルのパレスチナに対する不公正を糾弾しています。アメリカの若者が率いる環境正義団体サンライズ・ムーブメントは、ずっとパレスチナに連帯しています。

なにもむずかしくありません。世界中のどこのだれが対象であれ、弱者に対する不公正や迫害、弾圧、差別、搾取に対して声をあげる。環境正義/気候正義活動家なら自然なことです。

ましてや、いまイスラエルがパレスチナの人々にやっているのは、大量殺りく、ジェノサイド、民族浄化です。

エジプトの人権弾圧に声をあげなかった人権活動家や環境正義/気候正義活動家、言論人には、2年連続2回目の不名誉で非人道的な沈黙は避けてほしい。心からそう願います。

"Injustice anywhere is a threat to justice everywhere."(どこかの不公正は、あらゆる場所の公正にとっての脅威となる)~ マーティン・ルーサー・キング・ジュニア


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