見出し画像

「スマートフォン・携帯電話は電源からお切りください」は、なぜか

劇場や映画館などでの鑑賞に対して、お客様へのご案内として伝えられるアナウンス

「スマートフォンや携帯電話は、電源からお切りください」

舞台芸術の制作のお仕事をしていると、前説などで何度もこのような内容の言葉を言うことがあります。

しかし、このようにおっしゃるお客様もいらっしゃいます。

「連絡が入るかもしれないから、電源は入れておきます」
「時間の確認のため、電源は入れておきます」
「通話もしないし、音も鳴らないようにしているからいいでしょ」

お気持ちは察しますが、、そこには3つの問題があります。

音の問題、光の問題、電波の問題

まず、音の問題。

マナーモードにされていましても、振動音がお隣や前後のお客様にも伝わり、観劇の気持ちを途切れさせてしまうことがあります。実際、そのようにおっしゃるお客様と何人も出会っています。

続いて、光の問題。

画面の光が漏れることで、本人にとっては小さな光でも、暗い劇場内ですので、遠くからでもどうしても目についてしまうことがあります。
目につくと、周りのお客様が気になってしまいます。(ぼくもお客さんで行っているときに、観劇の集中が割かれたことが一度二度でもなく。。)

また、最近だとオンライン配信でご覧いただくお客様もありますが、客席からの光が映り込むことは、作品と関係のない情報が画面から飛び込むことになるので、演出上、ご遠慮いただきたく思っております。

最後に電波の問題。

スマートフォンや携帯電話が発する電波により、ワイヤレスマイク等の機材不良の原因にもなってしまいます。残念ながら、会場内の他の電波と干渉して、音にノイズが乗っていたり、仕掛けの機械がうまく作動しなかったりということがあります。

この3つの問題は、一緒に劇場で観るお客様のこともそうですが、
何より作品を創っているアーティストにとっても、本来お客様にお見せしたいと考えている自身の思いが、その時点で成し遂げられないのです。

アーティストにとって、作品は「産みの苦しみ」を経て、世に出します。
大切な我が子です。
時間をかけて産んだばかりの我が子を、どうか傷つけないであげてください。

ぼく自身の思いとしても、
劇場での体験を愛し、作品を楽しみにして劇場に来られている全ての皆様に、より良い観劇体験を味わっていただきたいです。
そのためには、ご来場の皆様のご協力が必要です。

大変恐れ入りますが、観劇中の携帯電話は、必ず電源からお切りいただけますように、ご協力をお願い致します。

舞台芸術でお仕事をする身としては、このように思います。

追伸:電源を入れていてもいい、写真を撮ってもいい、という公演もありますし、それは作り手とそこで過ごすお客さまが、ある種の合意を経ているからもちろんアリだと思っています。あくまで多くの場合の観劇マナーの話で、一緒に過ごす方々との相互協力で、鑑賞体験は成り立っているんだなという話です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?