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「ホップステップだうん!」 Vol.183

今号の内容
・巻頭写真 「浦河の海を背景に細川貂々さんとツレさん」 江連麻紀
・続「技法以前」157 向谷地生良 「花巻の原則-その1.“非”評価的/“非”援助的態度」
・ 伊藤知之の「スローに全力疾走」 第99回「乗り鉄はえらい!」
・なおのん便り
・福祉職のための<経営学> 045 向谷地宣明 「宇宙のように広大な『外』にこそ大事なものがあるというお話」
・ぱぴぷぺぽ通信 すずきゆうこ 「えみ子さんの努力②」


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浦河の海を背景に細川貂々さんとツレさん。
このあと、川と海が合流しているところの砂を崩したらどうなるかを、わくわくした表情で足で砂を崩して実験するツレさんに貂々さんが「もー、やめなよー。」と止めていました。ツレさんの無邪気な一面を知れた撮影でした。

今年のべてるまつりのゲストだった漫画家の細川貂々さんが関西で当事者研究会をはじめられました。
東京でお会いする機会があって、せっかく東京に来られるから当事者研究しませんか?とお誘いして実現した企画です。当日は貂々さんの書かれた当事者研究の漫画「生きづらいでしたか?」の販売もしています。

すぐに満席になりそうなのでお早めにどうぞ!

関西で当事者研究会をはじめた漫画家の細川貂々さんと「当事者研究ってどうやったらいいんだ?!」公開研究会!
日時:2019年12月1日13時〜16時
参加費:3000円
お申し込み(タイトルに「12月1日イベント申し込み」と書いてください!)
info@base.or.jp

(写真/文 江連麻紀)

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続「技法以前」157 向谷地生良

「花巻の原則-その1.“非”評価的/“非”援助的態度」

今回から、6回に分けて、「花巻の原則」(以下、原則)について、書いていきたいと思います。この原則は、以前にも紹介したような気がしますが、5年前から、縁あって岩手県花巻市にある国立花巻病院の医療観察病棟(司法病棟-統合失調症などの病気の影響によって重大な事件・事故を起こした人の専門治療施設)に足を運ぶようになりました。その際、「もっともスタッフが治療や関りに困難を抱え、長期(観察病棟はおよそ、一年半での退院、回復を想定したプログラムを)の入院となっている患者さんを一人選んで一緒に研究する「研究ミーティング」を週一回ペースではじめました。

最初は、私がスタッフの前でホワイトボードを背にして、いつものスタイルで実際に入院中の患者さんに参加してもらって、ミーティングをはじめたのがきっかけです。それ以降は、心理士を中心に、定期的にミーティングを続けました。すると、山姥との戦いとそれに絡んでくるマジンガーゼットという不思議な世界の中に立てこもっていた本人が、次第にまとまりをもった会話ができるようになり、退院にこぎつけることができたのです。

その回復のプロセスに関わったスタッフは、「当事者研究は、他者と協働での表現の学習と練習、そして創造の場になった」(2017精神看護)と語っています。それは、正直、私にとっても想定外の出来事でした。そこで、その関りのプロセスの中から、生み出したのが「花巻の原則」です。退院が決まった時、「退院に一番、役に立ったこと、世話になった人は誰ですか?」と聞くと、本人は、気恥ずかしそうに「山姥です」と答えてくれました。「リアルワールドばっかりだと疲れます」と言っていたことが忘れられません。

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これから、6回に分けて(もしかしたら、増える可能性もあり)、原則について、私なりの解説を試みたいと思います。最初の会は、「周りは本人の語りに対して内容が妄想的かどうか、何が問題か、などの評価を伝えたり、否定したりしない。治療的・支援的・管理的な態度を少なくする」です。お楽しみに!

向谷地生良(むかいやち・いくよし)
1978年から北海道・浦河でソーシャルワーカーとして活動。1984年に佐々木実さんや早坂潔さん等と共にべてるの家の設立に関わった。浦河赤十字病院勤務を経て、現在は北海道医療大学で教鞭もとっている。著書に『技法以前』(医学書院)、ほか多数。新刊『べてるの家から吹く風 増補改訂版』(いのちのことば社)、『増補版 安心して絶望できる人生』(一麦社)が発売中。

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