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べてるの家のメールマガジン「ホップステップだうん!」 Vol.211

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今号の内容
・巻頭写真 「元旦の浦河」 江連麻紀
・続「技法以前」181 向谷地生良「心をあわせて、力をあわせて、助け合って働く」
・伊藤知之の「50代も全力疾走」 第15回 リモートで振り返り研修会、そして2021年は…。
・なおのん(ありす)便り
・福祉職のための<経営学> 073 向谷地宣明 「強いシステム」
・ 丑年イラスト:すずきゆうこ


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あけましておめでとうございます。

元旦の浦河は曇り空で雪が薄っすら積もっています。午前中は密を避けながら「カフェぶらぶら」に元旦礼拝で集まりました。

3人に今年の豊富を伺いました。
左から
伊藤知之さん
「仲間が地域で暮らすことを考えていきたいです。」

和田智子さん
「マイナスも楽しむ。」

早坂潔さん
「まぁ、普通に暮らす。カレーライス食べたい。作ってくれ。」

今日のグループホームの夕食はどこもカレーです。北海道は多くの家庭で大晦日が豪華でお正月はお雑煮で過ごすそうです。

ちなみに大晦日はすき焼きでした!


(写真・文/江連麻紀)

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新刊『弱さの研究 ー「弱さ」で読み解くコロナの時代ー』

著者 向谷地生良・高橋源一郎・辻信一・糸川昌成・向谷地宣明・べてるの家の人々

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本体価格:1600円+税
出版社:くんぷる

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べてるpresents
〜「理念空間を作る」「一人一研究」〜 いま改めて振り返る、当事者研究の理念 Vol.1
ゲスト:清水義晴氏(えにし屋)

日時:2021年1月23日(土) 13:00~15:30

浦河べてるの家のオンライン企画、第1弾!
コロナ禍のなか、オンラインを活用したミーティングや当事者研究など、べてるでも様々な取り組みを行なってきました。全国に講演に行けない昨今、オンラインを活用してなにかできないか考え、今回は当事者研究を柱に一つのシリーズとしたウェブセミナーを企画をしました。
このシリーズではゲストも交えながら、浦河で当事者研究が始まった歴史や15の理念それぞれをテーマとして取り扱い、その理念を各々がどのように活用しているのか分かち合いながら深めていきたいと思っています。
そのシリーズ第1弾として、今回は『変革は弱いところ、小さいところ、遠いところから』の著者で、30年前にべてるが起業するきっかけにもなった清水義晴氏をゲストに迎え「理念空間をつくる」「一人一研究」をテーマにべてるのメンバーたちや向谷地生良氏と対談を行います。
当事者研究の基本的な情報から、浦河で当事者研究が始まった歴史なども話題として扱う予定です。
みなさんぜひご参加ください。

コーディネーター:向谷地生良氏
出演:べてるの家のメンバー
ゲスト:清水義晴氏(えにし屋)

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清水義晴氏プロフィール

1949年、新潟県新潟市生まれ。早稲田大学法学部卒。卒業後、家業の印刷会社に勤める。 26歳のとき、父親(社長)の突然の死によって若くして(株)博進堂の代表取締役となり、教育・デザイン・美術・出版など次々と新事業に取り組む。懸命に経営にあたっていたある日、社員たちから反発を受けたことをきっかけに、「人間尊重」を根底に据えた企業のあり方を模索し、様々な企業改革を進める。1984年に森の共育実修所「点塾」を設立し、「教えない教育」をコンセプトに固有のプログラムを開発。38歳で経営をバトンタッチし相談役となる。
2年間、現代美術の「創庫美術館・点」の運営などに携わった後、「えにし屋」という屋号で全国のまちづくりやコミュニティづくりに貢献。その活動は、学校や教育、福祉や介護、企業などへも発展し、幅広い分野での事業プロデュースを行う。活動の多くに独自のワークショップ手法や自らが考案した「未来デザイン考程」を取り入れ、数々の大きな成果を残す。また、持ち前の鋭い洞察力によって、精神障がい者の自立支援施設「べてるの家」や河田珪子氏の「地域の茶の間」を全国へ伝える橋渡し役も果たす。2002年には新潟市長選挙の選対本部長を務め、まちづくりの手法を取り入れたボランティアによる選挙活動によって、新聞記者だった新人の立候補者を見事当選へと導く。
2006年、和歌山での講演中に脳出血で倒れ、車椅子の生活に入るも、多くの人の支えと情熱によって元気を取り戻し、多方面で精力的に活動。 入院中に「新潟を日本一の福祉都市にする」という新たな目標ができ、関連書を次々と出版する。これらの一連の実績が、映画「降りてゆく生き方」(武田鉄矢主演・2009年公開)の関係者の目にとまり、ストーリーのベースとなるとともにエグゼクティブプロデューサーを務め、映画出演も果たす。「物事は何でも始めは一人です。世の中を良くするのも、悪くするのも、ただこの一人からです」というセリフは、自身のこれまでの歩みから生まれてきた言葉であり、自らが編集長を務める雑誌『動』の根底に流れる思想でもある。
また、町に、人の心に、事業に火をつけることから「点火人」と呼ばれ、20年以上に渡って企業や起業家の人材育成、まちづくりコーディネーターやファシリテーター、学校教育コーディネーターの育成に携わり、現在では多くの人が育ち、全国各地で成果をあげている。2014年からは「企業教育」という分野を開拓しようと、新たに企業教育コーディネーターの育成に取り掛かり、テキスト『ソックラトン』の開発、講座のプロデュースなどに力を注いでいる。
著書に『変革は弱いところ、小さいところ、遠いところから』『集団創造化プログラム』『経営創造化プログラム』『理念空間の創造』『経営つれづれ草』などがある。現在「えにし屋」主宰、「特定非営利活動法人 在宅介護支援協会」理事長、株式会社博進堂 顧問。(facebookより引用)

参加費:2000円

会場:オンライン開催(ZOOM)
(参加申し込み後、開催直前にZoomウェビナーのURLをご案内します)

定員:80名(先着順)

○詳細・お申し込みはこちら(Peatix)
申込締切:2021年1月20日(火)17:00まで

<参加方法>
・本イベントはzoomウェビナーを用いて配信します。
・パソコン・スマートフォンなどの端末、インターネット環境が必要となります。
・ご登録いただいたメールアドレス宛にzoomウェビナーのURLをご連絡いたします。
・お客様の環境等が原因で発生した視聴トラブルにつきましては、当方での対応はできませんので、予めご了承ください。

<ご参加に際して>
・記録のため、主催者の方で開催中のイベントを録画させていただきます。
・参加者による録画・録音はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。
・第三者への参加URLの共有・提供は決して行わないようお願いします。
・当日は無観客開催のため浦河の会場・施設へ来訪はご遠慮ください。
・複数名でご参加される方は人数分のお申し込みをお願い申し上げます。

【お問い合わせ】
社会福祉法人 浦河べてるの家 東・樋口
TEL:0146-22-5612 E-mail:urakawa.bethel@gmail.com

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続「技法以前」181 向谷地生良

「心をあわせて、力をあわせて、助け合って働く」

明けまして、おめでとうございます。「おめでとう」という言葉が、白々しくなるほど、私たちの日常は、新型コロナの蔓延という未曾有の災害に見舞われ以来、あらゆる常識が反転し、混乱の中にあって未だに終息の目途も立ちません。「第一のことは第一に(First Things First)」は、依存症を持つ人たちの自助グループAAの活動で大切にされてきた原則の一つです。私たちの日常は、不確かさと矛盾、もっと言えば不条理に満ちていて、私たちは方向を見失った帆船のように荒波を彷徨うしかありません。そんな時、灯台の灯りが、私たちいる位置を教えてくれるように、「今、私たちがなすべきこと、大切すべきことは何か」が大切になってきます。ここで大事になってくるのが、有りがちな「自分がどう思うか」ではなく、自分の「思い」を一端、脇に置いて、さまざまな違った角度から考える“のりしろ”が必要だということです。

今から40年前にはじまったべてるの歩みは、何度か紹介しているように「違ったもの同士が、どうやったら共に生き合えるか」と問うことからはじまりました。その社会実験として、私たちは「共に働く」起業を選び、このテーマを自分ごととして生きることにチャレンジしてきました。それは社会に組み込まれた「精神科病棟」という「精神“囲”学-囲い込んで」「“管”護-管理して」「“服”祉-服従させる」“装置”というテーマ「排除の構造」を、単に第三者的に批判するのではなく、起業という事を通じて自らの生活の中に“架装”する(取り込む)ことによって、それを乗り越える方策を考える社会実験を試みてきました。その結果、「社会的な排除の構造」としての“精神科病棟的”なシステムは、いとも簡単に私たちの起業活動の中に、侵入し、根を張り、支配されるということを実感することができました。そのことを通じて、このテーマは、私たちのものになり、当事者になることができたのです。

この排除の構造は「地域コミュニティなど、集団の中では必ず起こりうる現象」であり、「人間という生物種が、生存率を高めるために進化の過程で身につけた、機能集団を作り生き残るために、共同体にとって邪魔になりそうな人物を見つけた場合にはリスクを恐れず制裁行動を起こして排除しようとする機能が脳に備え付けられている」(中野信子『ヒトは「いじめ」をやめられない』小学館新書)と言われています。ですから、「精神科病棟」は、精神科医などの専門家が生み出したものではなく、社会的に生まれたものだと言えます。そして、この構造から誰も逃れることができないのです。精神医療の変革を考えるキーワードが、世界的に「民主化」や「対話」につながってるのは、歴史的にも、精神医療のシステムが、例外的に「非民主的」な仕組みだったことの反動と言えます。

ここで戦後、文部省がつくった「民主主義」という教科書からそれを再確認してみたいと思います。

「民主主義 とはいったいなんだろう。多くの人々は、民主主義というのは政治のやり方であっ て、 自分たちを代表して政治をする人をみんなで選挙することだと答えるであろう。それも、民主主義の一つの表われであるには相違ない。しかし、民主主義を単なる政治のやり方だと思うのは、まちがいである。民主主義の根本は、もっと深いところにある。それは、みんなの心の中にある。すべての人間を個人として尊厳な価値を持つものとして取り扱おうとする心、それが民主主義の根本精神である。 人間の尊さを知る人は、自分の信念を曲げたり、ボスの口ぐるまに乗せられたりしてはならないと思うであろう。同じ社会に住む人々、隣の国の人々、遠い海のかなたに住んでいる人々、それらの人々がすべて尊い人生の営みを続けていることを深く感ずる人は、すすんでそれらの人々と協力し、世のため人のために働いて、平和な住みよい世界を築きあげてゆこうと決意するであろう。そうして、すべての人間が、自分自分の才能や長所や美徳をじゅうぶんに発揮する平等の機会を持つことによって、みんなの努力でお互の幸福と繁栄とをもたらすようにするのが、 政治の最高の目標であることをはっきりと悟るであろう。それが民主主義である。そうして、それ以外に民主主義はない。」(文部省. 民主主義 (角川ソフィア文庫)

戦後の復興期だからこそ書くことのできる希望に満ちた素晴らしい言葉が綴られている。対話とは、そして、研究するという人生に向き合う態度は、多大な犠牲を払って手に入れた民主主義という生き方暮らし方を、絶やさないための大切な営みの一つだということができます。コロナの時代にあって、私たちは、対話以上に危機管理の考え方から「指示・命令・系統」を重視し、多様性よりも、一体的な判断と行動を求めがちです。私たちは、この危機をどのように捉えて生きて行けばいいのか。今日、新聞の政治欄で面白い記事を読みました。コロナが発生してから、選挙で現職が落選しているというのです。従来のアナログな組織選挙や地縁血縁選挙が通用せずに、情報発信の巧みさによって選ばれる傾向があるというのです。

私は、これからは「豊かさ」「お金」「働き方」「責任-当事者になる」の4つのキーワードが、大事になってくる様な気がします。年末に成立した「心をあわせて、力をあわせて、助け合って働く」ことをモットーとした「労働者協同組合法」は、それらの4つのキーワードを用いて新たな社会実験を可能にするものだと考えています。

向谷地生良(むかいやち・いくよし)
1978年から北海道・浦河でソーシャルワーカーとして活動。1984年に佐々木実さんや早坂潔さん等と共にべてるの家の設立に関わった。浦河赤十字病院勤務を経て、現在は北海道医療大学で教鞭もとっている。著書に『技法以前』(医学書院)、ほか多数。新刊『べてるの家から吹く風 増補改訂版』(いのちのことば社)、『増補版 安心して絶望できる人生』(一麦社)が発売中。

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伊藤知之の「50代も全力疾走」 第15回

リモートで振り返り研修会、そして2021年は…。

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明けましておめでとうございます。べてるの伊藤知之です。

昨年は新型コロナウイルスの流行のため、べてるが各拠点ごとに分散通所になったり、それに伴って事業所がリモートでつながり、私たちの日常が大きく変化した年でした。

例年ですと、回復者クラブどんぐりの会の振り返り研修会は浦河町総合文化会館のふれあいホールでオードブルを囲んで行いますが、今年は感染防止のため会食は行わず、ニューべてる・カフェぶらぶら・生活介護事業所をリモートでつないで行いました。

今年の研修の部のテーマは「さようなら」「こんにちは」の年で、GHべてるの仲間が新GHのさくら・ヨブに移ったり、GHぴあの仲間が新しい建物のGHぴあに移動したりと、昔のGHに「さようなら」を告げ、新たなGHに「こんにちは」と感じつつ移っていった年でしたが、今回は主にGHを移った人に語ってもらう研修会になりました。

早坂潔さんは、GHべてるからGHヨブ・さくらに移りましたが、環境の変化などがあり、久しぶりに2週間ほど入院しましたが、その体験も交えて語ってくれました。

話しは変わりまして、多くの人が感じていると思いますが、2020年はコロナに始まりコロナに終わった1年でした。そのような中で、私は手塚治虫さんのコミック「陽だまりの樹」を読みました。
この作品に関心を持ったのは、日本の幕末が舞台となっていること、手塚さんの先祖で医師の手塚良仙が主人公のひとりとなっていたことからでしたが、読み進める中に、幕末に流行した天然痘やコレラ感染症(コロリと呼ばれていました)のことに触れられていることを知り驚きました。現代のコロナウイルス流行にも通じる、感染に関する迷信や、社会の混乱のことも描かれており、牛痘種痘をすると牛になるという迷信や、コレラ流行についての社会の混乱や風評被害なども描かれていて驚きました。

今年もコロナウイルスの流行は、ワクチンが普及するまでは続くと思いますが、2021年は昨年から参加させていただいているオンラインの研修・講演に参加したり、GHが新しく快適なものにリニューアルすることをきっかけに、仲間の地域での生活についてより考えて行ける年にしていきたいと思います。

本年もどうそ、よろしくお願い申し上げます。

伊藤知之(いとう・のりゆき) 統合失調症全力疾走あわてるタイプ
べてるのメンバースタッフとして活躍する傍ら、全国を講演会などで飛び回る全力疾走をしていたが、いまは新型コロナ自粛中。
「伊藤ネット」という独自のネットワークを持ち、営業力と宣伝力はべてるのなかでも随一の実行力を発揮している。

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