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べてるの家のメールマガジン「ホップステップだうん!」 Vol.219

今号の内容
・巻頭写真 「向谷地生良さんと赤いジャンパー」 江連麻紀
・続「技法以前」189 向谷地生良 北海道医療大学 最終講義
「クライエントの場からの出発」後編
・ 伊藤知之の「50代も全力疾走」 第20回 「浦河教会新会堂建築祝福式」
・福祉職のための<経営学> 081 向谷地宣明 「暗黙知」
・ ぱぴぷぺぽ通信 すずきゆうこ 「危機一髪です!」


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「向谷地生良さんと赤いジャンパー」

この赤いジャンパーを着た向谷地生良さんにお会いした方はとても多いことと思います。
1978年4月から43年間、ずっと着続けています。

向谷地さんが浦河赤十字病院にソーシャルワーカーとして就職した年、職員の野球チームに入って配られたのがユニホームとこの赤いジャンバーでした。

その日から、向谷地さんは野球のときだけではなく、仕事中も休みの日も、春夏秋冬着るようになりました。

「着やすいしね、不思議と風を通さないんだよ。冬はこの下にベスト1枚で北海道でも温かい。」と、向谷地さん。

ある日「これ、自分はもう着ないからどうぞ。」と1枚くれた方がいたそうです。

最初に着ていた赤いジャンパーはボロボロで風に当たったら裂けるんじゃないか、と思うほどになり、今はもらったもう1枚の赤いジャンバーを着ています。

43年経った今も相変わらず、春夏秋冬いつでもこの赤いジャンパーを着ているため、着てない日は「今日はどうしたの?」とみんなから言われるそうです。

ちなみに、向谷地さんは野球チームでピッチャーをしていましたが、肩を痛めてやめたそうです。
ホームランを打ったことがあって、もらった金一封は今でも開けずにアルバムに貼ってあるそうです。「透かしてみると金一封は1000円だね。」と教えてくれました。

写真の向谷地さんが手に持っているのが最初の赤いジャンパーで、着ているのがもらった現役の赤いジャンパーです。

(写真・文/江連麻紀)

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「当事者研究の源流をたずねて~博進堂における一人一研究のあゆみ~」

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博進堂(新潟)とべてるとの出会い   向谷地生良

べてるが、「研究」というキーワードを手に入れるきっかけになったのは、新潟の地域おこしアドバイザーをされていた清水義晴さん(元博進堂代表取締役)との出会い(1990年)からです。1983年秋に、日高昆布の袋詰めの下請け作業を起業の一環としてはじめ、翌年の4月に「浦河べてるの家」を設立、その後、町内の企業経営者などの異業種交流を目的とした交流会「MUG」に参加する機会を得(1990年12月)、そこのメンバーを通じて出会ったのが清水氏でした。もともとは新潟の印刷会社の経営者であった清水さんの会社(博進堂)で、社員が互いに共同して主体的に仕事をするために取り入れていた活動が「一人一研究」制度だったのです。

「一人一研究」制度は、「社員一人一人がなんでもいいから研究テーマを決めて、一年間そのテーマにとりくむ」(清水2003)もので、清水さんによると創業者である父親が、日本青年団協議会の「話し合う、読みあう、考えあう、調べあう」「共同学習」にヒントを得たものだそうです。注)「日本青年団協議会編『共同学習の手引』(1954)などで定式化された。」矢口悦子(2014)

清水さんによって紹介された社員一人一人が、仕事ばかりではなく日常生活の中に研究テーマを持って取り組み、一年に一回発表しあうという発想は、当時のべてるの起業理念と見事に符合したばかりでなく、驚いたのは、べてるを知った清水さんが、無名で、一度も訪れたことのないべてるの短い記事を読んだだけで「将来、浦河は精神医療のメッカになる」と言ったのです。

その後、清水さんは『べてるの家の本』(1992・べてるの家の本-博進堂)の出版やべてるの日常を描いたドキュメンタリー映画「ベリーオーディナリー・ピープル その1~8」(1995~1997)を企画され、べてるの活動が多くの人たちに知られるきっかけをつくっていただき、長きにわたって経営的な助言をいただいてきました。

その意味でも、博進堂は、理念的にも、事業においてもべてるの歩みの源流とも言える会社なのです。

べてるプレゼンツ
いま改めて振り返る、当事者研究の理念 vol.5
「当事者研究の源流をたずねて~博進堂における一人一研究のあゆみ~」
 博進堂 × 浦河べてるの家

2021年5月8日(土) 13:00 ~ 15:30
参加費 :2000円
会場:オンライン開催(ZOOM)
(参加申し込み後、開催直前にZoomウェビナーのURLをご案内します)

定員:150名(先着順)

申込締切:2021年5月6日(木)17:00まで

○ 参加のお申し込みはこちら


浦河べてるの家のオンライン企画、第5弾!
コロナ禍のなか、オンラインを活用したミーティングや当事者研究など、べてるでも様々な取り組みを行なってきました。
全国に講演に行けない昨今、オンラインを活用してなにかできないか考え、今回は当事者研究を柱に一つのシリーズとしたウェブセミナーを企画しました。
このシリーズではゲストも交えながら、浦河で当事者研究始まった歴史や、当事者研究の15の理念、当事者研究にまつわる様々な事柄をテーマとして取り扱い、当事者研究を各々がどのように活用しているのか分かち合いながら深めていきたいと思っています。
今回は第5弾として当事者研究の源流ともいえる「一人一研究」を会社のなかで行う博進堂の皆さんをゲストに迎え、講演・対談を行います。

当事者研究に興味のある方、これから研究活動をしてみようと思っている方など、みなさんぜひご参加ください!

☆ゲスト 博進堂の皆さん

〇清水 伸(しみず しん)
株式会社 博進堂 代表取締役社長

博進堂の概要と歴史、一人一研究の現状について


〇清水 隆太郎
専務取締役 人事労務担当

2012年に博進堂入社、アルバム営業として配属。専務取締役 人事労務担当

専務取締役 人事労務担当

2016年からは教育事業部で企業教育の企画・運営・講師などを務める。年に経営部の担当役員となり、社内の人事労務全般を統括するとともに社外ネットワーク構築、業務の自動化などに取り組む。


〇坂井公美子(さかいくみこ)
制作部 チーフマネージャー

1990年 博進堂入社
総務部(人事・販売管理)、制作部(DTPオペレーター)、営業部(営業サポート・顧客サポート・内勤業務)を経験。
一研究のテーマ「小さくなってコストダウン」
「あたりまえ」と思い使用し続けてきた大きな原稿袋をその中に入れる中身(原稿)ごと見直し、原稿袋の小型化を実現。また、小型化された原稿袋を繰り返し使用することで、購入費用を大幅に削減。「あたりまえ」を見直し大きなコストダウンにつなげる。


〇松本 章嗣
生産部製本センター サブマネージャー

社内の労働組合にあたる経営委員長を13年間務める。
労使問題解決や社内行事、社内コミュニケーション紙「投網」を発行するなど精力的に活動。
今年で38回目を迎える博進堂の「一人一研究」。委員長として一人一研究を運営しながら、参加者としても研究を発表をしている。
今回は御朱印帖に使われる蛇腹折について研究を行う。博進堂の機械では作ることが出来ないと思われていた蛇腹折。しかし、見て、考えて、自由な発想を持った時に、出来ないものが出来るようになった。


〈プログラム〉
13:00 オープニング
13:05 講話 清水伸氏
13:25 対談・研究発表
    博進堂の皆さん、向谷地生良氏、べてるメンバー
15:00 質疑応答
15:30 クロージング
※スケジュール・内容は都合により変更になる場合がございます。


日時:2021年5月8日(土) 13:00~15:30

参加費 :2000円

会場:オンライン開催(ZOOM)
(参加申し込み後、開催直前にZoomウェビナーのURLをご案内します)

定員:150名(先着順)

申込締切:2021年5月6日(木)17:00まで

○ 参加のお申し込みはこちら


<参加方法>
・本イベントはzoomウェビナーを用いて配信します。
・パソコン・スマートフォンなどの端末、インターネット環境が必要となります。
・ご登録いただいたメールアドレス宛にzoomウェビナーのURLをご連絡いたします。
・お客様の環境等が原因で発生した視聴トラブルにつきましては、当方での対応はできませんので、予めご了承ください。


<ご参加に際して>
・記録のため、主催者の方で開催中のイベントを録画させていただきます。
・参加者による録画・録音はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。
・第三者への参加URLの共有・提供は決して行わないようお願いします。
・複数名でご参加される方は人数分のお申し込みをお願い申し上げます。

【お問い合わせ】
 社会福祉法人 浦河べてるの家 東・樋口
 TEL:0146-22-5612 E-mail:urakawa.bethel@gmail.com

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続「技法以前」189 向谷地生良

北海道医療大学 最終講義
「クライエントの場からの出発」後編

<向谷地>
「弱さの情報公開」というのは、個人情報保護やプライバシー保護が強化されて、これも大切なことですけれども、一方ではこのような大切な経験を生きてた人の存在と、有用な生活知を封印し、二重三重に「自分を語らない」ことを強いて拡大していくわけです。それに危機感を感じた私たちは個人情報保護に対抗をするような形で、あえて「弱さの情報公開」という形で、この大切な経験を世に発信することにチャレンジしました。

当時、精神疾患の体験は、もっとも秘匿すべき情報で、それが公になるということは、今後の人生に多大がリスクを背負うことを意味したわけですし、マスコミにおいても「天皇」「部落問題」「精神障害」は、特にデリケートなテーマとして、扱う際には、慎重をようする領域として扱われていたような気がします。しかし、私たちは逆に「弱さの情報公開に」に自信があったんですね。「病理」としてそれを見なすならば、現実に病気を抱え、たくさんの苦労を余儀なくされて、社会的な不利に直面せざるを得ないわけです。しかし、これは、私たちの実感なのですが、この経験を意味のある大切な人生経験として共有して、生きるための知恵を出し合う。お互いに受け入れ合う。そのことによって生活の質の改善とつながりの回復を得られる可能性を私たちは発見するわけですね。

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