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べてるの家のオンラインマガジン「ホップステップだうん!」 Vol.248

目次
・巻頭写真 「オンライン企画 第15弾 8月27日(土)13:00~ ゲスト:カーリング女子 ロコ・ソラーレの吉田知那美選手」 江連麻紀
・続「技法以前」200 向谷地生良 「モンゴル訪問記」
・伊藤知之の「50代も全力疾走」第38回「潔さん、久しぶりの販売」
・【粒】わたしは粒で考えるようになった
 ことこ・ざわり
・福祉職のための<経営学> 110 向谷地宣明「DS経営」
・ぱぴぷぺぽ通信 すずきゆうこ 「ガーン」

浦河べてるの家 オンライン企画 第15弾
2022年8月27日(土)13:00~16:00
※都合により7月開催の日程から変更になりました

北京五輪で銀メダルを獲得したカーリング女子日本代表ロコ・ソラーレの吉田知那美選手をゲストにお迎えします。

2018年のべてるまつりで吉田知那美選手と一緒に登壇されたソーシャルワーカーの内田梓さん、向谷地生良さん、べてるメンバーと対談していただきます。

吉田知那美選手の大ファンのミスターべてること、早坂潔さんはこの日を楽しみにしていました。
「日本代表決定戦のとき、毎日俺が4人分お祈りしたから勝ててよかった」と潔さん。

すでに収録済みの対談では、当事者研究の理念「弱さの情報公開」についても語られました。

イベントの申し込みはこちら!(peatix)


(写真・文/江連麻紀)


続「技法以前」200 向谷地生良

「モンゴル訪問記」その1」

2年以上にわたる“コロナ封鎖”によって、断たれていた海外との交流も、6月になってようやく解禁となり、私たち日本調査チーム5名は、モンゴル(6月27日出国ー7月6日帰国)を訪ねることができました。
訪問の目的は北海道医療大学先端研とべてるが、韓国の障害友権益問題研究所精神障害者社会統合研究センターと協力してモンゴルの精神保健福祉の現状に関する国際共同調査を行うことです。

モンゴルと言えば、日本の4倍の国土に330万人の人たちが暮らす世界有数の低人口密度の国で、砂漠で遊牧民としてゲルで暮らしている人(人口の1割)は、近くて隣家が数キロ先、離れている人は、50キロもあり、80%がウランバートルで定住していて、距離感、時間感覚ともに私たちのものとは、かなりかけ離れています。

そのような現状の中で、「精神障害」の概念が無く、「知的障害」の分野に括られ、ロシアの精神医学の影響のもとに発展してきた精神医療制度を理解することを通じて、私たちにできる国際協力の方法を探ることが今回の目的でした。

この調査が目指すのは、一つに東アジアのメンタルヘルス全体の底上げを図ることがあります。
ある資料では東アジア(モンゴルから東チモールまでの東側のアジア諸国)地域で統合失調症などをもつ人たち数千万人が家庭の中に設置された手製の檻の中で暮らしていると言われています。

日本は、かつての「私宅監置」を、戦後は精神科病院に置き換え、結果として世界中精神科病床の2割(33万床)を独占する「精神病床大国」を維持しています。お隣の韓国も日本を後追いし、病床を増やしています。共通しているのは、この問題の解決に精神科病院などの医療が大きな役割と力を持ち、特に日本は精神保健福祉関連の予算の99%を医療に費やしているという特徴があります。ちなみに欧米は、真逆で、医療が1割で福祉に9割の予算が割かれています。

今回の合同調査は、医療に偏重した東アジアの精神保健福祉の現状を明らかにし、医療に変わる「代替プログラム」を模索するための基礎的なデータを得ることが目的です。
そこで、私たちは国立の精神医療センター、障害者人権センター、地域における医療保健福祉の支援拠点のスタッフへのインタビュー、地域で暮らしている障害者の訪問調査と、最終日には三か国合同のカンファレンスを行いました。

調査結果はいま集計中ですが、カンファレンスの場でべてるの伊藤知之さん(統合失調症を持ちながらべてるでソーシャルワーカーとして活躍)が活動紹介をする姿をみて「信じられない」というのが、現地の人の感想でした。
日本で言えば、50年以上前の現状ですが、出会った家族や当事者の皆さんからいただいた一人一人の言葉に、力と希望を感じました。

移動手段は「馬」。馬産地浦河でも一度も乗馬したことがなかった向谷地さんは、モンゴルで初めて馬に乗って何キロも移動しました。

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