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べてるの家のメールマガジン「ホップステップだうん!」 Vol.213

今号の内容
・巻頭写真 「小柳里映さん」 江連麻紀
・続「技法以前」183 向谷地生良「死者と生者の境目」
・伊藤知之の「50代も全力疾走」第17回 「べてるの感染症対策訓練」
・なおのん(ありす)便り
・福祉職のための<経営学> 075 向谷地宣明 「ミメーシス(感染)」
・ ぱぴぷぺぽ通信 すずきゆうこ 「コロナと関西幻聴さんとべてる」


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小柳里映さん

自己病名「統合失調症、爆発タイプほんとは優しいタイプ」

かまってちゃん爆発しちゃうのよ、と教えてくれた小柳さん。当事者研究をしてスタッフに電話して聞いてもらうようにしたら爆発が減ってきたそうです。

「でも、いつも聞いてもらうスタッフ結婚しちゃって寂しいんだわ。結婚しても私のこともよろしくねって気持ち。」

「爆発って疲れるんだわー。でも、生きてたらかまってほしい瞬間っていうのが出てくるのよ。」
と、おけいちゃん食堂の暖房の前でお昼ご飯を待ちながら話してくれました。


(写真・文/江連麻紀)

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新刊『弱さの研究 ー「弱さ」で読み解くコロナの時代ー』

著者 向谷地生良・高橋源一郎・辻信一・糸川昌成・向谷地宣明・べてるの家の人々

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本体価格:1600円+税
出版社:くんぷる

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べてるpresents
いま改めて振り返る、当事者研究の理念 Vol.2
〜「憑きもの祓い」と当事者研究〜

ゲスト:村澤和多里氏(札幌学院大学臨床心理学科教授)

浦河べてるの家のオンライン企画、第2弾!
コロナ禍のなか、オンラインを活用したミーティングや当事者研究など、べてるでも様々な取り組みを行なってきました。
全国に講演に行けない昨今、オンラインを活用してなにかできないか考え、今回は当事者研究を柱に一つのシリーズとしたウェブセミナーを企画しました。
このシリーズではゲストも交えながら、浦河で当事者研究始まった歴史や、当事者研究の15の理念、当事者研究にまつわる様々な事柄をテーマとして取り扱い、当事者研究を各々がどのように活用しているのか分かち合いながら深めていきたいと思っています。

今回は第2弾として札幌学院大学臨床心理学科教授である村澤和多里氏を迎えて対談を行います。村澤氏は心理学と社会学とエコロジーの結び目で、エコロジカルな心理療法について研究をされています。また、当事者研究を「憑きもの祓い」という側面から考察もされています。
当事者研究に興味のある方、これから研究活動をしてみようと思っている方など、みなさんぜひご参加ください!

日時:2021年2月23日(火・祝)10:00~12:30
参加費:2000円
会場:オンライン開催(ZOOM)
(参加申し込み後、開催直前にZoomウェビナーのURLをご案内します)
定員:80名(先着順)

ゲスト:村澤和多里氏(札幌学院大学臨床心理学科教授)
コーディネーター:向谷地生良氏、べてるのメンバー

○ 村澤和多里氏プロフィール

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札幌学院大学臨床心理学科教授
臨床心理士、公認心理師、博士(教育学)
精神科勤務を経て、ひきこもりの若者支援、児童養護施設での臨床にも携わってきた。
著書:『中井久夫との対話』(共著)、『ポストモラトリアム時代の若者たち』(共著)など。

〈プログラム〉※時間は目安です
10:00 オープニング
10:05 講話 村澤和多里氏
10:50 対談 村澤和多里氏、向谷地生良氏、べてるメンバー
12:00 質疑応答
12:30 クロージング

<参加方法>
・本イベントはzoomウェビナーを用いて配信します。
・パソコン・スマートフォンなどの端末、インターネット環境が必要となります。
・ご登録いただいたメールアドレス宛にzoomウェビナーのURLをご連絡いたします。
・お客様の環境等が原因で発生した視聴トラブルにつきましては、当方での対応はできませんので、予めご了承ください。

<ご参加に際して>
・記録のため、主催者の方で開催中のイベントを録画させていただきます。
・参加者による録画・録音はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。
・第三者への参加URLの共有・提供は決して行わないようお願いします。
・当日は無観客開催のため浦河の会場・施設へ来訪はご遠慮ください。
・複数名でご参加される方は人数分のお申し込みをお願い申し上げます。

○詳細・お申し込みはこちら(Peatix)
申込締切:2021年2月21日(日)17:00まで

【お問い合わせ】 社会福祉法人 浦河べてるの家 東・樋口 TEL:0146-22-5612 E-mail:urakawa.bethel@gmail.com

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続「技法以前」183 向谷地生良

「死者と生者の境目」

10年近く前になりますが、名古屋で映画『カンタ!ティモール』(監督:広田奈津子)の上映会と監督をした広田さんの講演を聴いたことがあります。日本にいると東ティモールというオーストラリアの北に位置する小さな島国で起きた惨劇を忘れがちになりますが、この映画は、べてるとのつながりにとっての忘れられない作品の一つです。

この映画は、広田さん達が東ティモールを訪れた時に名もないひとりの青年が口ずさむ歌がこころに残り、その青年と出会うために再び島へ戻る、というプロローグではじまります。東ティモールは、日本で言えば岩手県ほどの面積のところにおよそ100万人が暮らす小さな島ですが、この100年を振り返っても、国民は、他国の支配と侵略、そして殺戮という想像を絶する過酷な歴史に翻弄されてきました。

「ねぇ仲間たち。ねぇ大人たち。僕らのあやまちを、大地は知っているよ」

そんな語りからはじまる歌は、インドネシアによる圧政のもとで、軍事統制下にひっそりと歌われた歌だそうです。

私が映画を観て深い感銘を受けたのが、そのような深い悲しみの日々を生き抜いた人々の底抜けの明るさと、亡くなった先祖たちが、今も青い海やマンゴーの林の豊かな自然の中に精霊となって共に暮らししていると語るその言葉です。3人に1人が命を落とすという戦争の記憶の中で、踊り、笑い、歌い継がれてきた歌は、こう言うのです。

「悲しい。いつまでも悲しみは消えない。でもそれは怒りじゃない。怒りじゃないんだ。」

「人は空の星々と同じ 消えては空を巡り また必 君に会える」

東ティモールの人たちにとって、生きることと死ぬことの間には境目がなく、いつも共に生きているのです。

今月の23日(土)、べてるの家と当事者研究を生み出し育んできた理念を考えるリモートセミナーを新潟の清水義晴さん(えにしや代表)をお招きして開催しました。清水義晴さんは、まさしく北海道日高の片田舎で、「社会復帰から社会進出へ」「過疎も捨てたもんじゃない」などと突拍子もないキャッチフレーズを並べて、起業を目指していた地域の評判最悪の素人集団であったべてるを“発掘”した人として知られています。べてるに一度も足を運んだことのない清水さんが、今から30年前に「浦河は将来、精神医療のメッカになると思います」と語ったことは伝説になっています。

その清水さんとのセッションには、べてるから早坂潔さん(べてるの家代表)と佐々木実さん(社会福祉法人浦河べてるの家理事長)も参加しました。そのやり取りの中で、語られたのが「べてるの家は、今生きている人たちと亡くなった仲間との境目がない」という話でした。この40年の間、実に多くの仲間たちとの地上での別れを経験してきました。特にアルコール依存症に苦しむ仲間たちと立ち上げたベてるは、酒によって心身を蝕まれた多くの仲間たちを看取る経験を私たちに強いたのです。今では信じられませんが、昔は、一年に10人の仲間を天に見送ったこともあります。

潔さんの部屋には、服部洋子さん、石井健さんの遺影が飾られています。ともにべてるの住居で若い時代を過ごした仲間です。潔さんは、そんな仲間のことを「死んでない」と言います。ですから、お葬式では、べてるの仲間の死を悲しまないのです。情けない思い出話に相槌を打ち、みんなで笑いながら見送るのです。そんな時、東ティモールの人々の歩んだ歴史と、精霊の風景が私には重なって聞こえました。


清水義晴さんのプロフィール

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えにし屋代表(新潟市)
昭和24年新潟市生れ。早稲田大学法学部卒業後、実家の印刷会社である(株)博進堂に入社。その後、父親(社長)の突然の死により、 (株)博進堂の経営を若干26歳で引き継ぎ、教育・デザイン・美術・出版と、次々に新事業に取り組み、総合文化事業を作り出してきた。その後、弟に経営を譲り、 現在、えにし屋主宰として、町づくりのプロデュ-サーやワークショップの開発、ファシリテーターの養成など、人や自然を活かす事業を展開している。 北海道の浦河にある「べてるの家」との出会いの中から、映画「ベリー・オーディナリ-・ピープル~とても普通の人々~」を制作した。 著書に「ワークショップは宝の山」(PS文庫)「変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから」(太郎次郎社)など。

向谷地生良(むかいやち・いくよし)
1978年から北海道・浦河でソーシャルワーカーとして活動。1984年に佐々木実さんや早坂潔さん等と共にべてるの家の設立に関わった。浦河赤十字病院勤務を経て、現在は北海道医療大学で教鞭もとっている。著書に『技法以前』(医学書院)、ほか多数。新刊『べてるの家から吹く風 増補改訂版』(いのちのことば社)、『増補版 安心して絶望できる人生』(一麦社)が発売中。

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