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「ホップステップだうん!」 Vol.189

今号の内容
・巻頭写真 「内村さん」 江連麻紀
・続「技法以前」162 向谷地生良「出会いの創造(仲間づくり)と共有」
・ 伊藤知之の「50代も全力疾走」 第2回「カナダの社会活動家 セリーヌ・シーアさん べてる来訪」
・のりの気まぐれ通信 No.2 バラバラかもしれない  笹渕乃梨
・福祉職のための<経営学> 051 向谷地宣明 「不可予言性(unpredictability)」
・ぱぴぷぺぽ通信(すずきゆうこ)「さあ、おどるよ♪」


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内村さん

日赤病院から精神科病棟がなくなる時、日赤病院のソーシャルワーカーと作業療法士の方たちが協力をして外泊の練習をして退院に至った内村さん。

いざ退院してみると、抜群の安定感とユーモアセンスで、その場を癒やしの場にしてくれてます。

今では支援の必要な方の帰る用意からお見送りまでしてスタッフのサポートをしてくれます。

そのお見送りの姿がまたチャーミングで微笑ましいです。

(写真/江連麻紀 協力/史緒)

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続「技法以前」162 向谷地生良

「花巻の原則-その6「出会いの創造(仲間づくり)と共有」

「研究をつうじて出会いが生まれて成果が共有され、地域のネットワークとつながることを意図する」

最後の原則が、つながりを創る、特に地域のネットワークにつながることを意識した展開を進めるということです。

「問い」を起点として、さまざまな検討を経て、一定の結果、成果を見極めてそれを互いに公開、共有することが基本的な研究のプロセスであり、スタイルだと思っています。しかし、プロの研究と最も違うのは、一般的な研究者が大切にする普遍的な原理や誰もが共有できる一般化された理論の構築を目指さないという事です。徹底して「当事者」としての自分の関心事や自分の経験と言うパーソナルな経験から問いを発信し、そこに内在化された意味を解き明かしていくプロセスを重んじていることです。

そのような「主観」を束ねることによって、立ち上がる共同化された主観が指し示す暮らし方、生き方のアイデアが、これからとても重要になってくると思います。そして、「出会いの創造(仲間づくり)と共有でもっとも大切なのは、「研究発表」の場を設けていることです。

広辞苑によると、研究の定義は「よく調べ考えて真理をきわめること」と説明されていますが、結果は公開することによって、更に練られていきます。結果として、当事者研究は、仲間づくりにつながり、生活の行き詰まりを「病気つながり」で、解消をすることを余儀なくされてきた人たちが、「研究つながり」へとシフトすることが可能になります。

メンタルヘルスの領域では、治療やケア、相談援助の視点が、伝統的な「問題志向」に代わって「希望志向」へとシフトしつつあります。その点から言うと、当事者研究は、「苦労」に焦点を当てるという事では、問題志向にくくられることもありますが、私は基本的に「研究志向」であり、「対話」に焦点が集まっているように、これがこれからのトレンドになっていくような気がします。

向谷地生良(むかいやち・いくよし)
1978年から北海道・浦河でソーシャルワーカーとして活動。1984年に佐々木実さんや早坂潔さん等と共にべてるの家の設立に関わった。浦河赤十字病院勤務を経て、現在は北海道医療大学で教鞭もとっている。著書に『技法以前』(医学書院)、ほか多数。新刊『べてるの家から吹く風 増補改訂版』(いのちのことば社)、『増補版 安心して絶望できる人生』(一麦社)が発売中。

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