月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「未来からの贈り物」試し読み
「未来からの贈り物」試し読み(抜粋)
和也の母親の見舞いに病院を訪れてから一ヵ月が過ぎたころだった。彼から、珍しくホテルのレストランのディナーに誘われた。普段は、肩の凝らない居酒屋に行くことを好む和也が、改まった口調で言ったので、不思議に思った。ふたりでホテルのレストランで食事をするのは、初めてのことだった。
当日の夜、私たちは港の夜風に当たりながらぶらぶら歩き、ひとときの夜景を楽しんだ。そしてホテルに向かった。
ウェイターに導かれながらレストランの奥に進んでゆくに従い、優雅な雰囲気に飲まれ、足がふらつきそうになるほどの緊張を覚えた私は、和也の腕に手を絡めるようにして体を寄せた。
港の夜景が一望できるように、壁一面が窓ガラスになっている。その近くのテーブルに案内されて席に着いた。
窓ガラスに映る夜の闇に、海と建物のイルミネーションの景色がまばゆいほどに見えて、ロマンチックな彩りを演出しているように思えた。中でも、さまざまな色に変化する観覧車の電飾の輝きは、優美な色彩を放ちながら際立っている。夢見るような心持ちになった私は、ひととき、夜景に目を奪われてしまった。つづく……。
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