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メディアでの暴露は「私人逮捕」と同じ!?

最近、芸人やスポーツ選手、さらにはミュージシャン等から過去に受けた性被害を週刊誌やSNS等で暴露する事案が世間を騒がせている。仔細に全部読んでいるわけではないが、多くのケースでは警察に正式に被害届を出すのではなく、既存のメディアや個人のSNSなどを通じて、事象だけを世の中に一方的に発信し、その罪と処罰については直接的には問うてはいないようだ。

もし正式に罪を償わせたいのであれば、一般的には「被害届提出⇒受理⇒捜査⇒逮捕⇒裁判⇒刑確定⇒受刑⇒社会的制裁完了」というのが法治国家における犯罪に対処する手順であろう。

しかし、現在行われているメディアへの暴露を通じたやり方は、これらの手順を全部スッ飛ばして、世の中に発信された瞬間に相手を社会的に抹殺することができる。法的な手続きを一切介することなく、捜査権も裁判権いらない。普通の一般人が、誰でも、いつでも(何年経っても)、特定の個人を瞬時に社会的に葬ることが出来てしまう。事象の内容の真偽が結果的にどうであれ、一度ついた印象を全て払拭することはできず、仮に全くの嘘であったとしても、完全に元の状態に戻ることは難しいだろう。逆に真実であっても、メディアへの暴露だけでは法的には裁けない。

これはある意味、「私人逮捕」と似ているのではないか?本来は逮捕権のない民間人が、緊急事態時には、「捜査⇒逮捕状請求⇒裁判所による許可⇒逮捕」という通常の手続きを経ずに犯罪者を逮捕できる、という特例で、こちらも最近YouTube上を騒がしているようだ。これと同様に、一般市民が皆、誰でも、突然、強権を発動できるのがメディアへの暴露だ。
 
コンプラの「ゴールポスト」はどんどん近づいてくる!?
 
少し前に放送された「不適切にもほどがある」が色々と議論を呼んだが、ここでも描かれているように、時代と社会の変化で10年、20年前には普通に許容されていたことが現在ではダメになる。セクハラ、パワハラ、マタハラ、カスハラ、etc、etc・・・。コンプライアンスの解釈は、「ゴールポストが動く」(左右にぶれる)というより、どんどん「近づいてくる」(厳しくなる)一方なので、今現在は許容されていることでも10年後、20年後には糾弾の対象となっているかもしれない。暴露の対象となる人物も、今はまだ芸能人関係が中心だが、いずれは一般人にも広がっていくかもしれない。

今でも既に、アナウンサーなどは一会社員であっても半分芸能人扱いで当然のように対象となっている。大企業の社長なども不祥事を起こせば対象になっているケースもある。これがどんどん拡がっていって、社長から役員、役員から部長、部長から課長・・・となると、我々一介のサラリーマンもそのうち対象になるかもしれない。

「ご近所の○○社の△△部長が10年前にこんなことしてました!」とSNS等に投稿するだけで、世間の風評リスクを怖れ、事なかれ主義の会社は真偽に関係なく解雇したりして、その人の人生をぶっ潰すことができる。そんな社会がそう遠くない未来に来てしまうかも?・・・

私人逮捕の場合は、逮捕時に被疑者に負傷を負わせたり、誤認逮捕であった場合は、逮捕した側に対する罰則もあるようだ。いずれ一般市民どうしで暴露しあうような殺伐とした世の中になるのであれば、同様に、暴露した側に対する規制等も必要になるのかもしれない。

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