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琴線日記#002 内面を抉り出す踊り

現代舞踊の選抜新人舞踊公演を観に行った。昨年も呼んでもらって見たのだけれど、今年はなんと最前列。こんなにも、演者の表情や息遣いが伺える席で見られるのは、またとない機会。瞬きする間ももったいないくらい震える演技が圧巻だった。

モダンバレエは、厳密な定義付けが難しい。私が5歳の時、最初に倣い始めたのもモダンバレエだったが、童謡のアレンジを用いた体操に近かったように思う。私は「クラシックバレエの基礎を薄く敷いた上に自由創作演技が成立したもの」として解釈している。

平成20年に保健体育の学習指導要領が改定され、「ダンス」が必修化されて早10年。文化祭のステージや新歓イベントで必ず行われる「ダンス」。アイドル戦国時代と言われる昨今だが、今回のモダンバレエはそのようなダンスではなく、内面を抉り出す踊りだった。

彼女は150cmに満たない身長で、160cmを優に超える人たちよりもダイナミックでしなやかな演技を魅せる。どのダンサーも見ごたえのある作品だったけれど、彼女の作品が一番鋭くとがっていてスピードもあって鋭利な印象。いつかタカラジェンヌの友人が「ネイルをすると爪の先まで意識が向くの」と言っていたけれど、彼女はネイルなどしていなくても爪の先まで神経が張り巡らされているような尖った演技を見せる。足の付け根から、肩甲骨からそれぞれのパーツが動かされていて、こんなに自由自在に身体が動かせる人を見たことがない。そして、空気を動かすのがとても上手い。彼女が息を吸って止めるタイミングで、こちらも息をのむ。一番好きなシーンは、終盤。『孤独の穴』を体現するように、自分で穴を掘り、そこに吸い込まれていく演出で終わるところが良かった。

彼女の色は黒だ。いつも黒い洋服をまるで戦闘服のように纏って、小柄な体躯で戦っている印象を受ける。自分自身とも、周囲とも戦っているのだと思う。けれども今回の衣装は純白。儚げな中にも、明確な意志を感じた。

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