見出し画像

情報戦の二次試験

試験当日だった。目覚めは悪くない。
だって受験者のうち女性の比率はどうなのか考えていたら、すぐに寝てしまったんだもの。
先進的だろうから女性も多いだろか。それとも保守的なのか。

ホテルの朝食は併設のロイヤルホストだ。

食欲普通。

すぐ食べ終わり
丁寧に歯を磨き(一年前から歯列矯正をしている)
シャワーを済ませた。

レモンの香りのする
ヘアバームで癖毛のウェーブを出す。

それが終わると
もうやることがない。

スーツを着る。ブルー系。
白いシャツにネクタイも同系色。身体にフィットする。

胸を張って大胸筋を撫でてみた。

20年前の受験と違うのは
腰痛があるとこ。
ハゲっぽくみえるところをカムフラージュするとこ。

おっさんやなぁ。
あー、やだやだ。

革靴を履く。
迷ったけどストレートチップではなくプレーンにした。

スーツに合わせて
靴は茶色。

なかなかカッコいいと我ながら思うけれど
この靴が数時間後に問題を起こすことになった。

試験会場まで
電車で向かう。

車内は空いていた。

休日の早朝に
場違いに思えるスーツをきた中年男性が
いた。

たぶん向こうもそう考えているはず。
あちらはエリートの香りがする。

まあいいや。

改札を出るとその男性が前を歩いていた。立ち止まり地図を確認している。
私は彼を追い越して進む。

以前過去問閲覧で訪れたので検討がついたのだ。


エレベーターで4階へ。
エレベーターを降りるとエレベーターホールにスタッフが待っていてくれた。

左に曲がり進む。トイレがあったので先に済ませる。

再び会場へ。

すでにほとんどの受験生が着席していた。
教室の前に張り出されたB4で受験番号と座席を確認した。
入り口に近い列で
私の後ろの席は女性だ。

指を使って人数を確認してみる。

7列かける10行くらい。ざっと70人。

ここからどのくらい合格するのだろう。
そういうの調べてこなかった。
全体としては
海外の大学院よりは難しいとはいえないと踏んでいて
それはまず間違いないだろう。

日常業務をこなすエネルギーを
情報戦に回す気持ちにはなれなかった。

が、
もう少しインフォメーションウォー、データインテリジェンスに時間を割いても良かったと思った。

足が痛え。

隣の列の男性が
国語辞典を持っている。

首を鳴らすふりをして後ろを振り向いたら
その女性も辞書を持ち込んでいた。

鼻をほじるフリをして前の男性の肩越しに
国語辞典が見えた。

ついでにみんな計算器ももっている。

まさかiPhoneの辞書や計算器を使って良いわけがないわな。
泣きながら鞄にしまう。

情報戦に敗れたわ。完全にやられたわ。

もう、無です。スーン。

どうにもならない。

問題用紙と解答用紙が配られていく。

この状況をどう捉える。
どう考えて立て直し
メンタルを崩さずに挑んでいくのか。

諦めずに
前向きに。

試験管の説明はあまり聞かない。
人生で何度か聞いてきた内容だった。
ね、おじさんて扱い辛いね。


『この時計で行います。
あと1分です。』

裏返した問題用紙から透けた文章を
解読する1分間の
なんと長いことか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?