自信の無い私がミステリを書き続ける理由
こんにちは。伯林(ベルリン)です。
八十八歳、静岡県浜松市の元高校教諭。まだまだ元気じゃわいということでDミスへ――というのは真っ赤な嘘であり、私のプロフィールは全くもって秘密ということでご容赦願いたいと思います。
私はよくミステリ小説を書いているのですが、はっきり申し上げて、頭が悪いです。
物を知らないし一般常識もなく、学生時代の不学を恥じる日々。
ちいちゃな脳みそでキコキコ考えたロジックやトリックを書いてみても、大抵はゴミを生成してしまいます。
そんな私がなぜミステリを書き続けているのか――それは、ミステリ以外では最後まで読んでもらう自信が無いからです。
本を結末まで読んでもらうというのは、大変なことです。
皆忙しいし、スマホで手軽に娯楽が享受できる世の中ですから、お金も消費カロリーも高い読書は、「最後まで読んでもらう」ということのハードルが高いです。
最後まで読んでもらうには、読者様に「最初の方のあれなんなんだろ」「こんなことになっちゃって、この後どうなるんだろう」という気持ちになっていただかないといけません。
……という観点で申し上げますと、ミステリというジャンルは、序盤に魅力的な謎を設定できれば、「最初のあれなんだったんだろ」を持ち続けてもらいやすいのではないかと思います。
よって、筆力オンリーで勝負するのに自信が無い私にとっては、明確な「謎」があり、その真相は必ず終盤に来るというミステリの構造が、とても魅力的に感じます。
また、ミステリには「不正解」があるのもいいですね。
どんな小説でも、ただひとつの正解というものはありません。
ただ、ミステリの場合、明らかに「不正解」というものはあります。
謎の筋が通っていない、トリックに欠陥がある、読者に提示していない情報で解決する……等々。
不正解があるということは、裏を返せば、不正解を踏まなければとりあえず小説のていを成してくれる。
平凡な男女のささやかな恋愛小説や、芸術性を求められる純文学などではそうもいきませんから、自信が無い者に優しいジャンルだと感じます。
ルールに則って書けば、最後まで読んでもらえる確率が少し高い、ミステリ小説。
無い知恵を絞って、きょうもあしたも、キコキコと書き続けるのでしょう。
イラスト/ノーコピーライトガール
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