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《大学入学共通テスト倫理》のためのトマス・アクィナス

大学入学共通テストの倫理科目のために哲学者を一人ずつ簡単にまとめています。トマス・アクィナス(1225~1274)。キーワード:「スコラ哲学」「自然の光(→理性の光)」「神の光・恩寵の光(→信仰)」「恩寵は自然を破壊せず、かえって自然を完成させる」主著『神学大全』

トマス・アクィナスはこんな人

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禿頭で肥満体の学者然とした宗教家で、学問を語らせれば神的に博識だったと言われています。この絵は17世紀初頭の画家アダム・エルスハイマーの「聖トマス・アクィナス」。

📝トマス・アクィナスと言えばスコラ哲学、「スコラ哲学」って何?

スコラ学の方法においては、まず聖書などの、著名な学者の記したテキストが題材として選ばれる。テキストを丹念に、かつ批判的に読む(略)次にテキストと関連のある文献を参照する(フリー百科事典「ウィキペディア」、スコラ学のページから引用)

スコラ哲学とは真面目でアグレッシブな(神学研究の)学問のスタイルのこと。この時期宗教は信じる以上に哲学的探求だった。ちなみに、「比較検討」をメインとしたこのスタイルの源流は、アリストテレス直系です。

📝トマスはアリストテレスの哲学に重要な修正を加えています!

トマスは、その哲学において、アリストテレスの「形相-質料」(forma-materia)と「現実態-可能態」の区別を受け入れる。(略)すべての存在者の究極の原因であり、「神」(不動の動者)は質料をもたない純粋形相でもあった。(略)しかし、トマスにとって、神は、万物の根源であるが、純粋形相ではあり得なかった。(フリー百科事典「ウィキペディア」、トマス・アクィナスのページから引用)

つまり、アリストテレスの分析を受けいれながら、同時にカソリック的人格神がいることを両立しようとしている。アリストテレスの哲学は推し進めると「汎神論(どこにでも神はいるという考え)」に行きつく。それだと神は人が向き合うものというより「自然」にとけこんでしまう。

📝ちなみにアクィナスは中世の神学を「存在論」レベルに深化させています!

Ontology is the philosophical study of the nature of being, becoming, existence, or reality, as well as the basic categories of being and their relations.(フリー百科事典「Wikipedia」、Ontologyのページから引用)

「存在論は存在とそれらの関係という基本的な区分だけでなく、存在、生成、実在、または現実の性質についての哲学研究である。」が拙訳。この文章でも少しうかがえるんですが、『存在論』は究極の「存在」というナニカがあるとみなして、そこから「存在者(実在するもの)」が現実にどう成立するかを研究するという、西洋哲学の観念性の代表みたいな哲学です。で、トマスの神学はそんな存在論の開祖と言えるレベルで問題を整除しています!

トマスの哲学をイメージ化すると「眼差しとしての光」です!

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太陽光(たいようこう、Sunlight)とは、太陽が放つ光である。日光(にっこう)とも言う。地球における生物の営みや気候などに多大な影響を与えている。人類も、太陽の恵みとも言われる日の光の恩恵を享受してきた。(フリー百科事典「ウィキペディア」、太陽光のページから引用)

地球に降り注ぐ太陽光「自然の光」が地球上の諸物を生かしめる恩寵(恵み)であるように、トマス・アクィナスは「神の眼差しとしての光」を世界を存在させる「恩寵」と捉えています。光として意識されるような強いもので、存在者を生み出し意識し続ける存在。哲学的「理性の光」の延長がたどりついた神への思考のやり方で、「恩寵は自然を破壊せず、かえって自然を完成させる」認識にたどり着きました(画像はアメリカのアンテロープ・キャニオンの写真です)!

📝トマス・アクィナスのスコラ哲学的検討はすごかった!

(『神学大全』の)第一部は119の問題が、第二部は303の問題が、第三部では90の問題が、合計512の問題が取り上げられている。(略)最後にこれらの流れを踏まえた解答が示される。解答は異論あるいは対論をそのまま採用したものではなく、全体を統合した解答になっていることが多い。(フリー百科事典「ウィキペディア」、神学大全のページから引用)

それ以前に戦わされた神学議論に対する最終解答のような勢いで叙述が作られていること、さらに、「全体を統合した解答」というアリストテレス的中庸が意識されていることがポイントです。この長さのせいか、日本語の完訳は50年の歳月がかけられています。2012年完成で、けっこう最近です。

あとは小ネタを!

スコラ学的神学者の代表的存在で、『神学大全』を著したトマス・アクィナスは、悪筆で有名。イメージは猛烈な勉強家。書く行為が思考に追いつかない感じです。

中世最高の神学者トマス・アクィナスは今でいうメカ音痴。ある日師匠が「自動機械」をトマスに見せ研究的な興味を語った。すると、師匠をものすごく尊敬していて、温厚なトマスが「悪魔的だ」と激しく拒絶した。


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