B&Wの800Dシリーズ

B&Wの先代のフラッグシップスピーカーである800D3も、現在の801D4も周波数帯域は13Hz~35kHz、能率が90dBで、インピーダンスは公称8Ωで、最低が3Ωのスピーカーである。低域の広がりが凄まじいスペックである。能率とインピーダンスは2005年の800Dシリーズの初代、2010年のD2、2015年のD3、そして現在のD4に至るまであまり変わっていないようだ。

800D3に関してはオーディオマニアの宅でじっくり聴かせてもらったことがあるが、どっしりと揺らがない優れたスピーカーだと思う。ただセパレーションを確保する3つのユニットの発する音を空中で1つの音にフュージョンさせるのは非常に難しいのだろうなと当時、思った。パワーアンプが難しいのじゃないかと。

下の図はstereophile.comにある、初代800シリーズ、要するに800D1の特性である。

B&W 800 Diamond, electrical impedance (solid) and phase (dashed). (2 ohms/vertical div.)

https://www.stereophile.com/content/bampw-800-diamond-loudspeaker-measurements

図の下方の横軸は周波数5から50KHzまで、縦軸の左側はインピーダンスで0から20Ωまで、縦軸右側は位相角で-90°から90°まで。実線は縦左側のインピーダンスが下の周波数に応じてどう変化するかを見る。破線は周波数に応じてどういう角度になっているかを見る、ということらしい。

40Hzから50Hzに至る部分の実線は6Ωだが、位相角は-67.5に達さんとする値であるので、パワーアンプにかかる負荷は、実験室での6Ωの静的負荷よりも厳しくなる。とはいえだ、当てずっぽうであるが、位相角が急峻とはいえ4Ω以下とはならないのではないか。90Hzに向かってインピーダンスはさらに下降して最低の3Ωに近付いているが、位相角は-22.5に回復しているように見える。多くのパワーアンプにとって3Ωというのは厳しいであろうが、そこは位相角の入りでうまく帳尻を合わせているということかもしれない。

下の図は、同じくstereophile.comから、801D4の特性である。

Bowers & Wilkins 801 D4 Signature, electrical impedance (solid) and phase (dashed) (2 ohms/vertical div.).

https://www.stereophile.com/content/bowers-wilkins-801-d4-signature-loudspeaker-measurements

さらにパワーアンプに過度の負荷をかけないように設定されているように見える。800シリーズというのは、ハイエンドのスピーカーのなかで比較すると、意外とパワーアンプに優しい親切設計のスピーカーなのかもしれない。もっと厳しい特性表になるのかと思っていた。

こうしたことは比較対象しだいなのは当然である。例えば、公称6Ωで能率94dBのJBL「4367」スタジオモニターと比べるとB&Wは厳しいと言えるであろう。「4367」はかなり急峻な位相角の連発であるが、6Ωを少し下回る程度の負荷のようである。

Fig.1 JBL 4367 Studio Monitor, electrical impedance (solid) and phase (dashed) (2 ohms/vertical div.).

https://www.stereophile.com/content/jbl-4367-studio-monitor-loudspeaker-measurements

このJBLと比べたら、B&Wは厳しい。しかし、次はMAGICOのA5という500万円くらいするスピーカーである。

Fig.1 Magico A5, electrical impedance (solid) and phase (dashed) (2 ohms/vertical div.).

https://www.stereophile.com/content/magico-a5-loudspeaker-measurements

このMAGICOは公称4Ωで、能率は88dB、密閉式で、おまけに、シングルワイヤリング仕様である!100Hz以下って鳴るの?っていう感じでしょう。これと比べたら、能率も高くて、バスレフ式で、バイワイヤリングのB&Wは穏やかだよね。念のため付け加えておくと、バイワイヤリングはバイアンプにしないとパワーアンプには優しくならないですからね。バイワイヤリングやブリッジはアンプが音を上げる(give up)のを早めてしまうでしょうね。パワーアンプはブリッジにするとローインピーダンスでの出力がでなくなる。アキュフェーズのアンプで言うと、2Ωまでが4Ωまでに上げ底になる。また、バイワイヤリングは蛇口2つで給水していたのを蛇口を4つに変えたら、水を供給する側のパワーアンプの苦労は増す、でしょう?

なんだかB&Wをよいしょする憶測記事みたいになったが、私のスピーカーはFOCALである。シングルワイヤリングで、インピーダンスのカーブは800Dよりもタフな可能性が高いと思う。

もうちょっと明るくすることができる部屋にすれば良かったかなと今さら思ったりもするマイルーム。ライトって共鳴してノイズを出すパーツがたくさんある。防音室を作ったのにわざわざ穴あけてノイズ源を増やすライトなんて付けたけくないなと〜って尖ったことを思ったのでした

付き合いだして6年くらいなのだが、何度もお別れしたいと思った。(^^) その度に、「スピーカーを取っ替えひっかえしていては碌な音は出せない」と自分に言い聞かせて思い直してきたのだった。本当はとっても良い音なんです。まだまだ伸びしろを予感させる、素晴らしいじゃじゃ馬ちゃん。内部のナットが緩んでいるからなのかウーファーの挙動がおかしい、整備してもらわないといかん。


ところで話は変わるが、下の図は801D4の設置のイメージ図。この種のお洒落なイメージを間に受けないほうがいい。

B&Wのホームページから

大部屋の奥にスピーカーを置いて、反対側にリスポジを置く、ラグジュアリーorゴージャスorスタイリッシュである。まあ、見た目はいいが、L/Rのスピーカー間の距離を考えると、その中点からリスポジまでの距離も5mか、それ以上離れていたりするのだろう。スピーカーに固有のL/Rの距離でステレオイメージの豊かさって全く変わるけど、そこんとこ分かってないよね。また、これだけリスポジから離れると、相当な大音量にしないと3つずつのユニットが生み出す音の焦点に身体ごと入りこんで、全身が包まれるような音楽体験にはならないように思うが。遠くで綺麗な調べが、、、みたいな空想しかできないでしょうな。

それ以上にだ、スピーカー間の中点⇄リスポジと、その中点⇄背後壁の距離比が明らかにめちゃくちゃだが、それでZ軸方向に関して正しいステレオイメージを形成できるのかね。こういうお洒落イメージは広告に過ぎない空想上の悦びであるが、オーディオは聴感の悦びであって欲しいよね。上の写真だと音は遠くて、反射音で濁りまくりで、定位もへったくれもなさそうだから、空想で音楽を楽しむんだろうな。広告だからね。私のオーディオルームに801D4を置いて広告にならないのは自覚しています。(^^)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?