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ウルトラマラソンとの出会いが、運動音痴だった私の人生を変えたストーリー13:レース一日目

5カ月前から本番に近いリュックを背負ったトレーニングを重ね、本番での荷物の軽量化や暑さ対策など工夫してきたものの、なにしろ日中は50℃を越えることもある灼熱地獄のなかを、果たして1週間も走り切れるのか?

スタート前はそんな不安でいっぱいでした。

まる一日、砂漠の中での荷物検査、健康診断で過ごした前日。なかでも結構ショックだったのが、シューズの選択。

事前の大会本部からの情報では、砂地の砂漠では、そこにギザギザが多いトレランシューズ、登山靴などはやくにたたない。砂地の表面をなぞるように進むため、普通のランニングシューズが適する。ただし、細かな砂がシューズの網目から入るので、砂の進入を防ぐカバーが必須。

これはサハラマラソンのウエブサイトから通販で購入でき、私が購入したのは言うまでもありません。しかしこれは購入したらすぐシューズに装着できるものでなく、シューズとカバーをつなぐ面ファスナー(バリバリはがせるやつ)をシューズとカバーに自分で接着剤で止めて使用するもの。

これを大きめの-大きめを選んだのは、砂漠でのレース中に足がむくんできてシューズが入らなくなるので、通常より1.5-2センチ大きめのサイズを選ぶようにとの注意から-に張り付け、レースに臨んだのでした。

えっと、今回はレース1日目のレポートでしたね。前日の話はこれくらいにして、レース体験をいよいよ書きたいと思います。

午前9時(たぶん)800人近いランナーが砂漠に向けて一斉にスタート。上空はヘリコプターが飛び交い、カメラの放列に囲まれながらのにぎやかなスタート。

コースは毎年変更されますが、この年は、初日からいきなり20キロちかい大きな砂丘を越えるルート。とにかくつぶれずにゴールを目指す。まずはこの大砂丘を越えること。それだけを目標に不安にかられながらスタートを切りました。

前方を行く長蛇のランナーの列につらなり、ひたすら前に向け歩を進めます。ペースは時々走り、時々あるく、そんな感じ。そのような歩みを続けること3時間くらいでしょうか?思ったほど苦も無く、CP1に到着。

ゲートで待ち受けていたスタッフ(たぶんフランス人医師)が私の目を見るなり、「おまえ、何飲んどんねん?」(フランス語です)

私はすかさず1週間分の飲料を作るだけ用意してきたポカリスエットの粉末を見せます。「ほら、これは脱水を防ぐベストな飲料やで!」

医師曰く「バカ垂れ!」「今すぐこれを6錠飲め!」と渡されたのが塩タブレット。塩といっても、実際にはNaだけでなく、Ka、Ca、Mgなどが適度に含まれた汗で失われるミネラルを補給するためのカプセルです。

すなおに医師にいわれるまま塩タブを飲み、またレース前に教わった通り、30分毎に300-500mlの水分を摂り続けることで、脱水に陥ることなく、30キロさきのその日のゴールにたどり着きました。

まだ日本で経口補水液などがない時代。スポーツ飲料といえばポカリスエット、アミノバリューがある程度。塩分、ミネラル補給の重要性があまり知られていなかった時代でした。

ともあれ、私はその時の医師の指示に従い、2日目以降も定期的に塩タブを取り、結果として、色々トラブルもあったものの、一度も脱水症状に陥ることなく、最高気温40度を超える灼熱の砂漠を1週間走り続けることが出来たのです。

つづく


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