言葉は話すためにある ー勉強だけではもったいない! #3
第3回 語学の学び方 ~料理店で「模擬海外旅行」~
青木隆浩(言語学者)
1.多言語を学ぶ動機
私はこれまで英語、中国語、韓国語、モンゴル語、ネパール語、イタリア語などの言語を学んできました。片言だけの言語も入れると18ほどになり、その多くは独学です。
例えばネパール語を学び始めた動機はというと、街中にネパールカレーの店が多くなり、「黙って食べるだけではもったいない、お店の人と話してみたい」と思ったからです。
ちなみに、ネパール料理店が増えた要因としては、2005年のクーデターと2008年の民主化が挙げられます。体制の急変による不安から、母国を離れる人が急増したのです。
2008年と言えばリーマンショックが起こり多くの外国人が帰国したのですが、ネパールの人だけは右肩上がりで増加しています。
このように、少し興味を持つだけで国際情勢にも目が向くようになります。
2.「話せる外国語」を増やすコツ
さて、外国語の会話力を身に着けるためには、「ネイティブと会話するとよい」と言われます。それは私も大いに賛成ですが、ただ漫然と会話するだけでは上達しません。
「こんにちは」「元気ですか」「おいしいです」といった簡単なやり取りは、何度も同じ場面で繰り返すうちに自然なスピードで言えるようになるでしょう。しかし、「語彙を増やす」「文法や文型を覚える」「場面ごとの定型句を増やす」といったことも同時に行う必要があります。
3.予習復習は大事!
例えば最初は「これをください」「お会計をお願いします」といった決まり文句を覚え、店の人と仲良くなると様々な話題を試してみます。
そこで欠かせないのが「予習」です。今日の話題を決めて、必要な語彙も事前に覚えます。さらに、毎回新しい文法を使い、今日は否定形、次は過去分詞…… のように、フレーズを作ってからお店に行くのです。
店員さんは時間があれば私のつたない会話に付き合って、文化や風習について教えてくれたり、日本で困っていることを相談してくれたりします。その際、新しい単語、最近学んだ文法や文型、実用的な表現、修正された単語や文法、あるいはうまく言えなかったことをメモして帰宅後にまとめます。学生時代の「単語集暗記(インプット)」→「小テスト(アウトプット)」→「期末試験(本番)」と同じ学習プロセスを実践するのです。
4.語学教材の選び方
言葉を学ぶには、教材選びも大切です。まず自分が「その言葉を使って何をしたいのか」を考え、必要な単語や表現が入っている教材を選びましょう。その言語の特徴や全体像をつかむため、文法のわかりやすさもポイントです。また、解説や例文を眺めると、表現できることのイメージが湧くので、何か月程度で目標レベルに到達できるかといった大まかな見通しを立てましょう。
5.外国語が話せると得なこと
1つの外国語を覚えると、それまで接点のなかったルートから情報を得ることができます。例えば調べものをする際、日本のサイトで見つからなくても中国のサイトでヒットすることなどは多々あります。また、マイナーな言語になると教材や辞書が限られる場合も多いのですが、中国や韓国の出版社で非常に充実したものが入手できたりします。もちろん意味や解説は中国語や韓国語ですが、例文が充実していれば大いに役立ちます。
6.レストランで海外旅行気分
外国人スタッフのいるレストランは、海外旅行気分を味わわせてくれる貴重な場です。その国の料理を味わいながら、外国語でのやり取りが経験でき、わからないことは日本語を交えて解説してもらうこともできます。「外国語=即留学」ではなく、まずは日本で基礎を学び、飲食店などで練習してから現地に行くと、より多くの情報を効率よく得られ、充実した海外生活が送れます。ただし、飲食店にお邪魔する場合は混んでいる時間を避け、迷惑にならないように!
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