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第2回 外向・内向と英語学習

こいけかずとし(フィロソフィア英語教室代表)

第1回で紹介した多読多聴は応用の幅が広く、とても良い学習方法です。
しかし私の経験上、多読多聴がすべての人に向いているとは言えません。

性格と好みが人それぞれ異なるように、向いている英語学習の方法も人それぞれ異なります。
そこで第2回のテーマは「外向・内向と英語学習」です。

ユングの性格タイプ論

外向・内向とは心理学の三大巨頭の一人、ユング(1875-1961)の性格タイプ論における心的態度の分類です。
ユングはスイスの精神科医・心理学者で、深層心理について研究し、後世に大きな影響を残しました。


外向と内向

ユングは人間を外向型と内向型の2つのタイプに分けます。

簡単に言えば外との関わりを重視するのが外向型内面の充足を重視するのが内向型です。
一般には外向型は広く人付き合いを好み内向型は一人での活動や親しい環境を好む傾向があります。
だれでも外向と内向の両方の性質を持っていて、割合に応じて外向型か内向型に分かれます。
だから完全な外向型、完全な内向型というのは存在しません。

さらにユングは外向と内向の間には補償的な関係があることを指摘します。つまり意識の態度が外向的な場合、無意識は内向的になります。
逆もまた然りです。
極端な場合はそれが病的な形で現れます。
外向型の場合はヒステリー、内向型の場合は精神衰弱症がよくみられます。

例えば外向が強くなると意識は他人の注意を自分にひきつけ、他人に強い印象を与えようとします。
その反作用として無意識では空想活動が盛んになったり、全く他人を考慮しない自己中心的な態度をとったりします。

または内向が極めて強くなり、意識の中では名声や地位を無視してそれらと無関係にいられると確信したとしましょう。
ところが無意識の中では無視したはずの名声や地位を求め、内部の戦いで精神をすり減らしてしまいます。

外向・内向と英語学習

ここまで外向と内向について基本的な部分を説明してきました。

学習面で言えば、外向型の人は人との出会いからより多くのことを学べると感じる傾向にあり、実際に多くを学びます。
一方で内向型の人は書物を通じてのほうがより深く学べると感じ、実際に深いものを感じ取ります。

したがって外向型の場合は授業や英会話など人とのコミュニケーションを通して英語を学ぶほうが得意です。
内向型の場合は語学書や多読多聴など本や音声素材を通して学ぶほうが得意です。

私の経験で言えば、外向的な生徒の場合、授業でわからないことがあればすぐ質問して来ます
質問された場合、本人が疑問に思っているのとは別のところに知るべき内容があることも多いです。
質問する相手が適切ならば自分では到達するのが大変な部分について教えてもらえるので効率的です。

内向的な生徒の場合、わからないところがあるとまず辞書などを用いて自分で調べようとします
答えに到達するためには詳しい人から話を聞くより遠回りかもしれません。それでも自分で調べる経験は自分で考える力を伸ばしてくれます。

どちらの方法も本質的には学びであり、それぞれ長所と短所があります。
今は情報があふれていて、英語学習をどのように進めれば良いか調べれば調べるほど混乱しがちです。

そこで自分の性格タイプを考えることは非常に重要です。
学習方法について調べる人は多いのですが自分の性格について調べる人はあまり多くありません。
自分のことをよくわかっていない、というのはよくあることなのですけどね。

学習効果が高くても、合わないものは長続きしません。
学習効果はもちろん、自分の性格や好みも考慮に入れて学習方法を選択すると英語学習はよりいっそう楽しいものになります。

次回はユング性格タイプ論のもうひとつの要素、心の4機能について紹介する予定です。

おまけ

ユングの性格タイプ論についてもっと詳しく知りたい方は次の入門書がおすすめです。
まずは手軽なマンガ版から試してみてはいかがでしょうか。

『マンガ ユング「心の深層」の構造』
さかもと未明(講談社)
第八章 ユングの性格論講座
(読みやすさ★★★/深さ★☆☆)
『ユング心理学入門』
河合隼雄(岩波現代文庫)
第一章 タイプ
(読みやすさ★★☆/深さ★★☆)


こいけかずとし
東京大学仏文科卒。
フィロソフィア英語教室代表。
『マンガ こんなに効く!英語多読多聴マニュアル』(ベレ出版)
『英文が読めるようになる マンガ英文法教室』(ベレ出版)



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