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第1回 手段を目的に変える 英語多読多聴の鉄板素材

こいけかずとし(フィロソフィア英語教室代表)

はじめまして。こいけかずとしです。
普段は英語教室で小学生~大学受験生および社会人を対象に英語を教えています。

この連載では英語学習と心理学を組み合わせて何かおもしろいことをお伝えできれば良いなと考えています。

第1回のテーマは「手段を目的に変える」。

簡単に言えば「学習手段そのものを楽しもう」ということです。
具体例がないとわかりづらいですね。

ひとつの例は多読多聴です。
多読多聴とは文字通りたくさん読んでたくさん聴くこと。
素材選びの自由度が高いので初めての方は何をどう使えば良いか検討がつかないと思います。
今回は私が英語教室で社会人の学習者によくおすすめする多読多聴の鉄板素材を紹介します。

Oxford Bookworms Library Stage 2 シェイクスピア演劇

まず基礎は一通りできている(英検2級程度)けれど多読は初めて、という方にはこちら。

Oxford Bookworms Library Stage 2 (Playscripts)
Romeo and Juliet / Much Ado About Nothing / Hamlet

シェイクスピア演劇の簡約版です。
全編脚本仕立てになっていてドラマ仕立ての音声を利用可能です。
会話を通して物語が進むので英会話の練習にも良いです。

Romeo and Julietより抜粋

レベル2は中学終了レベルの英語なので英検2級程度の知識があれば語彙や文法には困りません。

とはいえ登場人物が多く、多読に慣れていない場合にはけっこう大変です。
音声がよくできていてラジオドラマのように楽しめるので、ぜひ音声を聞きながら読んで頂きたいです。

Pearson English Readers Level 3 & 4 シェイクスピア演劇

前述のレベル2がクリアできたらこちら。

Pearson English Readers Level 3 & Level 4
A Midsummer Night’s Dream / Othello / Hamlet / King Lear / Macbeth / The Merchant of Venice (写真は旧版)

こちらもシェイクスピア演劇の簡約版で、レベル設定が違います。
Level 3は高校基礎、Level 4は高校発展ほどのレベル設定です。
こちらも全編脚本仕立てになっていてドラマ仕立ての音声を利用可能です。

A Midsummer Night’s Dreamより抜粋

英検2級程度の知識があれば語彙や文法にはあまり困らないと思います。
しかしレベルが上がるにつれて表現が複雑になるため、知識があればスラスラ読めるというわけではありません。
長い説明は省きますが「知っている」と「使える」は別物なのですね。

Roald Dahlの児童書

Graded Readers(段階別読本)で多読多聴のコツをつかんできたら児童書に挑戦です。
教室では「チャーリーとチョコレート工場」などRoald Dahlの児童書をおすすめすることが多いです。

Roald Dahlの児童書(朗読CDは別売で購入可能)

薄い本から始めると挫折しづらいです。
The Magic Fingerは朗読音声が22分ほどなので最初のペーパーバックにおすすめ。
風刺がきいていて大人が読んでも楽しめます。

The Magic Finger と朗読CD(別売)

Winnie-the-Pooh

「くまのプーさん」の原書もおすすめです。

Winnie-the-Pooh / The House at Pooh Corner

プーさんは各巻とも10編の短編で構成されています。
写真右上と右下のドラマCDがとても良くできているので、聞きながら読むとよりいっそう楽しめます。
ドラマCDは各巻とも120分ほどで、ひとつのチャプターは10~15分ほどです。
※注意点:1巻のChapter 1がやや難しいため、Chapter 2から読み始めるとスムーズに読み進められます。

Harry Potter

本を読むことに慣れてきたらいよいよハリポタに挑戦です。
もともと挿絵はないのですが今では挿絵つきのものも刊行されています。

Harry Potter 1巻 (左:挿絵なし/右:挿絵つき)
挿絵なしバージョン
挿絵ありバージョン
Harry Potterの音声CDは7巻合わせて103枚
(貸出中のため写真では欠落あり)

自己目的的活動

ここまでいかがでしたでしょうか。

多読多聴は英語学習のための手段として行う面もあります。
しかし本を楽しめるとやがて本を読むこと自体が目的になっていきます。

このように「行うこと自体を報酬だと感じる活動」を心理学では「自己目的的活動」と呼びます。

英語学習をただ手段として淡々とこなしても悪いことはありません。
しかし学習自体を楽しめるならそのほうが良いですよね。
それが学習を長く続けるコツでもあります。

おまけ(初級者用の素材)

今回は「基礎ができていて多読多聴は初めて」の学習者向けの素材を紹介しました。
もっとやさしい素材から始めたい場合は絵本もおすすめです。

The Giving Tree

有名な絵本はYouTubeで読み聞かせ動画を視聴できる場合が多いです。
無料だし5分ほどで終わるものもあります。
まずはそこから始めてみてはいかがでしょうか。

こいけかずとし
東京大学仏文科卒。
フィロソフィア英語教室代表。
『マンガ こんなに効く!英語多読多聴マニュアル』(ベレ出版)
『英文が読めるようになる マンガ英文法教室』(ベレ出版)



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