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語学書の著者のコラム

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ベレ出版語学書の著者による、本を書くこと以外のお仕事の話、教えること、ことばにまつわること、言語について。
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2021年2月の記事一覧

わが辞書人生 [第4回]

大井光隆(元英語辞書編集者) 「学習辞典」の誕生これまでの回で書いてきましたように、辞書の制作は時間とお金のかかる「大事業」です。 投資したお金を回収するには、当然のことですが、売るしかありません。 しかし、ろくに宣伝もしないで書店に並べておくだけでは辞書は売れるはずがありません。 何しろ競合辞典も多く、売れない辞書は早々に書店の店頭から姿を消す運命です。そのうちに、ある英語の先生が英語教育の専門誌に、「アンカーは今までにない優れた辞書である」という趣旨の記事を書いてくだ

わが辞書人生 [第3回]

大井光隆(元英語辞書編集者) 辞書の書き手に「辞書作りの本当の功労者は辞書編集者である。この人々は知見と経験、情熱と責任感の塊である」とまで言わせる辞書編集者。その辞書編集一筋40年余りの‘職人’が語る、連載の第3回です。 監修者について今回は辞書の「監修者」のことを書いてみましょう。 編集部のチェックを経た「ゲラ」を総合的に見直し、書き加えたり、削除したりする作業を「監修」といい、それをするのが「監修者」です。 「アンカー英和辞典」の場合は、次の3人の監修者がいました。

わが辞書人生 [第2回]

大井光隆(元英語辞書編集者) 辞書の書き手に「辞書作りの本当の功労者は辞書編集者である。この人々は知見と経験、情熱と責任感の塊である」とまで言わせる辞書編集者。その辞書編集一筋40年余りの‘職人’が語る、連載の第2回です。 辞書の原稿について辞書の原稿はどのようにして集めるのか? これはまさに大仕事です。膨大な量ですから、力と経験のある先生方に分担で執筆を依頼するわけですが、これがまた大変です。出来のいい原稿はなかなか簡単には集まりません。原稿が届いたら、まず編集部でチェ

わが辞書人生 [第1回]

大井光隆(元英語辞書編集者) 辞書の書き手に「辞書作りの本当の功労者は辞書編集者である。この人々は知見と経験、情熱と責任感の塊である」とまで言わせる辞書編集者。その辞書編集一筋40年余りの‘職人’が語る、連載の第1回です。 辞書編集者という仕事「辞書編集者」ということばを聞いて、どんなイメージを持たれますか? 「辞書」というものをご存じない方はいないと思います。国語辞典、古語辞典、英和辞典、和英辞典など、いろいろありますね。新学期に、先生から買うように言われて持っている方