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2022.08.05 at Zepp Haneda / くるり ワンマンライブツアー2022

初めに言ってしまう。

僕たちには、くるりがいるから大丈夫なのだ。

くるりワンマンライブツアー2022、その最終地Zepp Haneda2daysの2日目。ツアーファイナルである。

先週札幌で見たばかりだが、運良く関東に来るタイミングとこの公演日が重なったわけで、見れたということである。

前回札幌で見たときに書いたレポはこの下に貼っておきます。


先週ペニーレーンで見た時は、足元がマス目で区切られてて、各々がその中で見るスタイルであった。今日は、1階スタンディングはマス目の仕切りも無ければ、足跡マークもない。各々がソーシャルディスタンスを保ち、好きな場所で見るという、コロナ禍以前のあのスタイルに近いスタイルである。まだ、世間は落ち着いても何もいないが、このライブハウスの空間が少しずつ以前の日常を取り戻してきているところに、少し感慨深いものを感じる。しかし、コロナ禍のあの完全に仕切られたスペースだったり、座席指定で見る良さも十分感じているところはあるので、それはそれで複雑でもある。まあそれはそれ、これはこれである。

流石に、ペニーレーンからZepp Hanedaとなると規模の大きさに追いつくのに時間がかかる。
ペニーレーンとZepp Hanedaでは、通常時のキャパシティでも5倍くらいは異なるので、同じツアーでも全く規模の異なるライブを見れると思うと胸が次第に高まっていく。

前置きが長くなってしまった。
これに関しては、今後徐々に改善することとする。

会場に足を踏み入れると、ステージのバックには銀色に輝く幕が全面にかかっている。どこか煌びやかだが、そこに薄暗い紫に近い青い照明が当てられていて、どこか深妙な感じもする。
ちなみにペニーレーンの時は終始バックは黒幕だったので、恐らくZeppの会場の時はそうなのであろう。

定刻になり、開場中のBGMが流れるままメンバーがステージに現れる。さすがZepp Haneda、全員が定位置についてもステージに余裕がある。また、バックの銀幕がそれをより一層感じさせるものにしている。「こんばんは、くるりです。」岸田が挨拶をし、一曲目『Bus To Finsbury』でライブはスタートする。

曲の最後、
「I wanna be your rock steady」
と歌っているが、もうくるりは、自分のrock steadyそのものである。また、音源よりもややBPMを抑えたような気がするが、それがより一層心地良く聞こえた。続く『目玉のおやじ』はこんなにもロックなナンバーだったのかと改めて驚かされる。間奏の音の高揚感、石若駿のドラムがそれをより一層助長させているように感じる。勝手だが、石若のドラミングはくるりの音楽と非常にマッチしているように思う。このツアーでそれをより一層感じた。

『コンバット・ダンス』、『ブレーメン』とライブは続く。『ブレーメン』の最後の音が鳴った瞬間、バックの銀幕が照明によって、金幕として、ステージを照らし出した瞬間、4曲目にして、既にこの日の1度目のハイライトを迎えた、そんな気がした。

『忘れないように』はもっとライブでやってもいいのではないか、と思えるほど会場の一体感を感じる。この曲のPVはレコーディング風景で成っているわけだが、総じて言えるのは、眼鏡をかけてもかけてなくても岸田はイケメンだった。

最初のMCが入る。「全国を行脚して参りまして、今日が無事千秋楽でございます。」このコロナが第7波に入り、感染者が増えている中、ツアーを完遂することは容易ではない。どこか岸田、佐藤の顔には安堵の表情を感じる。「今回のツアーでは、グラミー賞をとったり、レコード大賞をとったり、そのような大ヒット曲しかやりません。」札幌でも似たようなことを言っていたが、勿論、別の意味で観客の期待はあがる一方である。

「では、2025年あたりに、グラミー賞をとるであろう曲を演ります。」岸田がそう言って鳴らされた『bumblebee』。音のキメと照明が相まって非常に痺れさせてくる。
岸田がギターをハウらせ、弾き始めたのは『Morning Paper』のイントロだ。この曲の持つスケールの大きさには、いつ聴いても圧倒されてしまう。間奏の佐藤のベースソロはもはや秀逸を通り越し、変態的である。ベースソロの時、幾つもの橙色の照明が佐藤をフューチャーするかのように照らし、その中で弾いているその様は、まさにロックスターそのものである。

勢いを止めず、『しゃぼんがぼんぼん』に雪崩れ込む。この曲は終始石若のドラムプレイに見入ってしまう。特に最後の手数が増えるところのドラミング圧巻である。まだまだ止まらない。岸田のテレキャスから『青い空』のイントロが鳴る。イントロの初めのストロボライトが、これから始まる曲の格好良さをより際立たせていく。前回、札幌のレポを書いた時に、もう聴けないんじゃないかと思った、と記した。この日もイントロが鳴った瞬間、何人か歓声をあげていた。こういう「気持ちを抑えられない衝動的な歓声」には、「生」を感じるし、それを受けて自分の中でも興奮していくのがわかる。
MC中の野次だったり、掛け声だったりには、未だ否定的な気持ちが先行しているのだが、こういった衝動的なものは徐々に緩和され許されていってほしい、そう思った瞬間でもあった。
話が逸れてしまったが、『青い空』からの『風は野を越え』は、音源で聴くよりも、壮大なロック・バラードに聴こえた。ちなみに『青い空』が終わると同時に左右から黒幕がカーテンが閉まるように現れ、バックの色が変わる。

2回目のMC。物販の紹介が始まる。さすがは関西人、テンポが良く、全く飽きさせない(商いだけに…)。部分的に割愛するが、佐藤はとにかく今治タオルは汗がしっかり吸えて長く使えることをやたら勧めてくるし、その横で岸田は確信的に物販の今治タオルで額を拭いているし、松本大樹(Gt)は、汗をかいてるかわからないが、タオルで顔を拭いているのがどこか可愛らしい。
「イヤモニをつけていると、耳の中もちょっと濡れてきたりするんやけど、耳の穴の中にもいれれて拭けるので今治ドリルにもなる。」にはやや失笑に近いものがあったが、個人的にはけっこうツボだった。

更には、最近Tシャツをタックインするのが、流行ってる流行ってない、と言う話になり、佐藤が、「こないだ一緒に音楽やってる学生の男の子がこのツアーTをタックインして着ててめちゃくちゃカッコ良かった。けど、自分はウエスト的にもできない。」と言って、手に持っていた紹介用のTシャツをステージ床に投げやりにポンと投げるというしっかりオチまでつけて紹介する話の上手さはさすがだなと思ってしまった。その後に野崎が「この歳の男どもには厳しい」とマジレスしていたのもまた面白かったし、メンバー間の関係性の良さを垣間見た気がする。

「ここまでは、500万枚、グラミー賞を売り上げた曲ばかり演ってまいりましたが、ここからは少し落として、300万枚くらい売り上げたヒット曲を演っていきます。」岸田が続ける。「次の曲はすごい良い曲なんだけど、圧倒的に知名度が無い。なので、皆さんで広めていってください。」そう言って『Time』が始まる。これは「Remember me」のカップリングであるが、くるりのシングルのカップリングには名曲が多い。去年のツアーのアンコールで演奏されていた「pray」も次に演奏された『さよならリグレット』のカップリングであった。

くるりは2010年に「僕の住んでいた街」という、シングルのカップリングをコンパイルしたアルバムをリリースしている。皮肉にも、当時オリコン史上最低売上枚数で週間ランキングで1位を取ったことを岸田が言っていたのを覚えている。

『ばらの花』はいつ聴いても心を落ち着かせてくれる。この曲、来年度の高等学校の音楽Ⅱの教科書に掲載されるのが決まっている。世代を超えるとはこういうことなのだろうか。
是非とも横には一緒に「How To Go」も載せておいてほしいものである。これは俺なりの皮肉。
札幌では、このあと、『white out(heavy metal)』から『Giant Fish』へと続いたのだが、この日は『white out(heavy metal)』の後に鳴らされたのはなんと『マーチ』。メジャー2ndアルバム「図鑑」の2曲目である。また誰が予想したであろう選曲である。個人的には大歓喜だった。『マーチ』は、最初開放的な始まり方をするのだが、曲がすすむにつれてダークな展開になっていく。どこか『bumblebee』と対になるような展開の印象があるが、ようはどちらも良いのである。『マーチ』からの『Giant Fish』は制作時期が近いからであろうか、自然的な繋がりをどこか感じた。この2曲を次に聴ける日は来るのだろうか。切に思う。ちなみにこの『Giant Fish』から、またバックが黒幕から銀幕に戻るのである。

前回記していなかったが、今回のツアーでは、岸田によるモーター音の紹介と実践MCがあるのだが、3回目のMCは終始この話で、岸田の表情は活き活きしていたように思う。

続く『かごの中のジョニー』の後半では、このモーター音を岸田が曲中に絶妙に挟めてくる。
そして、至高の流れでくるり随一のプログレナンバー『Tokyo OP』に流れ行く。ここで歓声があがるのもなんともくるりのライブである。

雰囲気は一変し、ここで新曲が演奏される。おそらく来週配信されるであろう「宝探し」なのかな?とは思うが、真相は定かではない。どこか、のどかな夏の風景の時間の経過を感じる一曲で、アウトロは岸田の穏やかなギターソロがより一層、雰囲気を際立たせていたように感じる。岸田がアコギに持ち替える。始まったのは『ハイウェイ』。

「僕には旅に出る理由は
だいたい百個くらいあって」

こんなことを言うもんだから、大学時代、一人旅に出る前に割と本気で旅に出る理由を百個考えようとしたことなんてどうでもいい話である。この曲が存在する、それだけでいいのだ。

『loveless』では、照明の色が重なり、どこか京都KBSホールのあの巨大なステンドグラスを思い出させる色合いだった。くるりは、紛れもなく京都のバンドであり、いつか京都でくるりを見たい、そんなことを思いながらこの曲を聴いていた。
ちなみにこの曲のアウトロのファンファンのトランペットのパートは、松本によってギターでプレイされていたのだが、それがまた曲の雰囲気を崩すわけでもなく、ただただ良かった。

『everybody feels the same』は言わずもがな、祝福に満ち溢れているような会場の一体感がたまらない。個人的に、今回のツアーを通してこの曲の良さを改めて感じることができたことが、とにかく嬉しい。
ちなみに最近知ったのだが、曲の最後に出てくる都市の名前は、世界で人口密度が高い順にカウントダウンされる形で選ばれているらしい。

石若のカウントから最後の『ロックンロール』が演奏される。なんだこの空間は。この日、今、この空間にいれることの喜びをこの曲は体現してくれる。

「さよならまた明日言わなきゃいけないな
言わなきゃいけないな」

終わりが近づくのがどこか寂しい。しかし、軽快なエイトビートと、一度耳にしたら離れないあのギターリフ。これこそロックンロールである。サビが終わり、岸田と松本が交互にギターソロを弾いていく。松本が弾き倒している横で、岸田も眼鏡が外れるのではないか、というくらいに腕を振り回し、ギターをプレイしている。そのあと、密接とはいかないが、近寄ってプレイする姿、そしてそれを定位置で見守るかのように自分のプレイを続ける佐藤の姿も最高である。
『ロックンロール』で大団円を迎え、本編は終わる。

稀に、本編が素晴らしくて、もうアンコールいらないのでは、と思ってしまうライブがある。
この日のくるりはまさにそう思わせてしまうライブであった。
しかし、そこは人間、貪欲である。
もっと欲しい。人間は我が儘なのだなあ。

程なくして、メンバーがステージに戻ってきてくれ、アンコールが始まる。
ここでも岸田は、このご時世の中、ツアーを回れたことへの感謝を伝える。感謝を伝えるのはこちらの方である。
「ツアー最終日でもうぐわぁーとなっておりますが、残り汁を全て出し切って帰りたいと思います。」そう言って演奏されたのは、『琥珀色の街、上海蟹の朝』。もうすぐライブが終わってしまう。そんな気持ちの中、次に鳴らされたのは『飴色の部屋』。この流れでのこの選曲にはやや意外性も感じたが、このツアーの選曲の意外性を考えると、特段不思議ではない。 

「今日は本当にありがとうございました。色々な人が来てくれていると思います。我々にとっては、この音楽を鳴らすのは日常ですが、皆さんにとっても早くそうなることを願っております。」「今年は25周年ということで、大きいライブだったり演らせていただいたんですが、その時に周年ライブなのに、何故この曲が無いんだ、とあらゆる方面から言われてしまいまして、今日は最後に東京の方々の前で『東京』という曲をやって終わります。」

弦2本しか抑えてないのに、こんなにも素晴らしいリフがあるだろうか。くるりにはそういう名曲が多い。また、原曲よりもキーが下がった『東京』はどこかより哀愁漂わせてくるようだ。
そして何より、松本大樹のスライドバーを用いたギターソロが本当に本当に本当に感動ものだった。上から目線で言いたくはないが、松本のくるりでのギタープレイは、どこか原曲へのリスペクトを感じる。
このスライドバーのギターソロも原曲にはないが、曲の世界観を壊すことなく、ましてや、更に世界観を強くさせてくれる、そんなプレイだった。
最後にこんなにも素晴らしいものを見せてくれるのか。やはり、『東京』は名曲中の名曲である。
この曲がデビュー曲なのだから、くるりはやはり怪物だ。

曲が終わり、全員が前に並び一礼する。
その後、岸田は一人ひとりとグータッチを交わし、ステージを後にした。

終演のアナウンスが響き、2時間40分の熱演が終わる。こんな平日があっていいのだろうか。

最初にも言ったが、最後にまた言ってしまう。

僕たちには、くるりがいるから大丈夫なのだ。


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くるり
ワンマンライブツアー2022
2022.08.05 Zepp Haneda

1 Bus To Finsbury
2 目玉のおやじ
3 コンバット・ダンス
4 ブレーメン
5 忘れないように
6 bumblebee
7 Morning Paper
8 しゃぼんがぼんぼん
9 青い空
10 風は野を越え
11 Time
12 さよならリグレット
13 ばらの花
14 white out(heavy metal)
15 マーチ
16 Giant Fish
17 かごの中のジョニー
18 Tokyo OP
19 (新曲)
20 ハイウェイ
21 loveless
22 everybody feels the same
23 ロックンロール
Encore
24 琥珀色の街、上海蟹の朝
25 飴色の部屋
26 東京

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