答案講評例⑩:平成27年 特許・実用新案
平成27年の特・実の問Iの答案は、合格ラインを超えていると評価します。偏差値だと57~60はいくと予想します。
問(1)について、パリ条約優先権の趣旨はOKです。
もっとも、「出願人の負担を軽減」というキーワードが出せればなおよかったです。
問(2)について、外国語書面出願の翻訳文の提出期限については、「優先日から」という概念は使われていません。「優先権主張の基礎とした第一国出願の出願日から」と、条文の表現を用いて答えたほうが良いです。それ以外の解答はよく書けています。
問(3)はOKです。ただ、38条違反になる理由として、「乙がA2を単独で出願しているから」という指摘をしたほうがよいです。なお、問題文は、「拒絶の理由として認められるものを挙げ」なので、38条だけ答えてもOKです。
問(4)の規範部分はOKです。ただ、問題文は、「頒布された刊行物に当たるかどうか」なので、結論の表現は、「頒布された刊行物に該当する。」としたほうがよいです。
問(5)もOKです。(i)と(ii)の書き分けができています。なお、問題文は、「新規性を喪失するかどうか」なので、(i)も、オウム返しで、結論の表現は、「新規性を喪失する」としたほうがよいです。また、(ii)の第1文は、主部である「Bのロについても」と、述部である「公知行為である」とが、対応していないので、日本語としては書き直したほうが良いです。(この部分の解答表現は、公開している答案例を参考にしてください。)
全体として、パリ条約の発生要件・主張要件は、解答に相当の記載量を伴うため、解答時間や解答スペースが圧迫するかの判断をし、明示的に解答が求められていない場合は書かないという選択をすることをオススメします。
(今回のケースでは、時間・スペースも余裕があるので、加点を望んで書くのはOKです。)
平成27年の特・実の問IIの答案は、十分に合格ラインを超えていると評価します。偏差値だと64以上はいくと予想します。
問(1)について、よく書けています。なお、販売が業としての譲渡(2条3項1号)であることを、できれば指摘してください。また、「特許権の効力が及ばない」については、「特許権Pの効力が及ばない」と、事案に即して解答したほうが良いです。
問(2)について、167条の趣旨として「紛争の蒸し返し」というキーワードが出ているのはOKです。それ以外もよく書けています。
問(3)について、104条の4の趣旨・事案の判断、ともによく書けています。
平成27年の問(3)の事案の判断は、平成14年以降の本試験で一番解答しにくいと考えているのですが、その問いについても、的確に解答できており、合格予定者としての実力を感じさせます。
定性的ですが、答案を通じて、「この受験生は合格させてもよい」と、採点者に安心感を与えることが重要だと思っています。今回の答案はその安心感を与えるものでした。今回の評価を糧に、あと少しがんばってください。
追伸:解答表現の改善ポイントについて、下記のツイートをしました。
宗教法人としての法人格は有していませんが、お布施・お賽銭・玉串料・初穂料、いかなる名義や名目をもってするかを問わず、すべての浄財は24時間受け付けています(笑)