答案講評例⑤:平成25年 意匠
平成25年の意匠の答案については、偏差値で49~52レベルの答案であると考えます。
問1の趣旨はOKです。ただ、問題文は「概要について~説明せよ。」ですから、少なくとも定義は書いたほうがよいです。趣旨だけを厚く書くのは題意から外れます。なお、趣旨を問われた時の解答は、従来・しかし・そこでパターンのほかに、1文でまとめるパターンも用意しておいたほうがよいです。
類否判断については、「需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて」(24条2項)に言及したいです。その他はOKです。
問2(1)は、3条について、形状類似する場合=3条1項3号と解答されていますが、少なくとも物品が同一であることには言及したほうがいいです。さらにいうと、形状が類似しても、形態が非類似、ということもあり得ますから(模様や色彩が著しく異なる場合)、全体として非類似の場合もありえます。となると、3条2項にも言及する必要が出てきます。なお、9条については、用途・機能が非類似⇒適用なし、と簡潔に済ませるのが、解答スペースの観点から上策です。
問2(2)については、3条・3条の2・9条適用なし⇒登録、とするよりも、⇒他の要件(3条1項柱書、7条)満たせば登録、としたほうが正確です。
問2(3)について、原則⇒例外の流れはOKです。ただ、26条2項に基づいて制限されるのは「業として」の実施に限られます。解答では「業として」が抜けています。対応策については、理由付けを1ずつ書いても、対応策を下記のように羅列しても、さほど点数は変わりません。
3. 乙の実施権原について
(1). イに係る意匠権の譲渡・放棄(準特98条1項1号)、
(2). 実施権(27条、28条)の設定・許諾、
(3). 協議(33条1項)不調・不能の場合、裁定請求(33条3項)、
によって、乙は、ロの実施権原を得られることに留意すべきである。
なお、「権原」には「正当」という意味を含んでいますので、「正当な権原」ではなく、単に「権原」だけでOKです。
裁定請求の効果に言及するのであれば、「通常実施権を設定すべき旨の裁定謄本送達により」が正しい表現です。請求を認めない旨の裁定がなされることもあるからです。
問3(1)について、パリ条約優先権の効果が、「丁のニについての日前の出願の扱いとなる」では不正確です。「基礎出願A時に出願したものとして判断される。」ことを示しましょう。
結論部分で、「不適法なら適法に登録をうけうる」とありますが、言葉足らずの印象です。本、問では場合分けをするよりも、「要件を満たすことにより、3条の2が適用」と、条件をつけて決め打ちをしたほうが得策です。
なお、「パリ条約優先権が有効」・「パリ条約優先権は適法」とするよりも、「パリ条約優先権の主張が有効」・「パリ条約優先権の主張は適法」としたほうがよいです。
問3(2)について、ここでも「業として」が抜けています。なお、本問もパリ条約優先権の主張はは適法である場合のみの解答でも題意には沿います。
全体として、問1・問2(2)・(3)・問3(1)で小規模な失点、問2(1)・問3(1)で中程度の失点をしたことが得点に響くだろうと予想します。意匠・商標は答案の完成度で勝負が決まりますから、指摘した事項は修正することをオススメします。
解答スペースを確保したい場合は、問3(1)4のなお書のような、関連事項の記載を削ることができます。
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