答案講評例⑦:平成26年 特許・実用新案

平成26年の特・実の問Iについては、偏差値でいうと52~54のレベルになるだろうと考えています。

 問(1)について、「優先日である平成23年12月8日から」を書くなら、「優先日(PCT2条(ix)(c))であるXの出願日から」と書いたほうがよいです。法律答案は法律の内容を適示しながら論を進める必要があります。「翻訳文提出特例期間」のような例外は、根拠条文なく触れる程度であれば、なくても大丈夫です。
また、出願審査の請求については、「Xから3年以内に」ではなく、「Xの出願日から3年以内に」と書いたほうが丁寧です。

 問(2)について、29条1項1号⇒2号の説明が、やや流れが悪い印象です。説明の順番は、公開している答案例を参考にしてください。また各論ですが、29条1項1号の説明で、「Yの出願の日後」とありますが、新規性の判断は時分まで問うのですから、「Yの出願の後」と書くほうが正確です。
 
 問(3)について、新喪例に係る書類提出日については、

「国内処理基準時である平成25年9月2日から30日以内(184条の14、施規36条の6の3)に」

ではなく、

「Yの国内処理基準時であるYの出願審査の請求の時(184条の4第4項かっこ書)の属する日から30日以内に(施規36条の6の3)」

のように、日付を書き写すことよりも、「国際処理基準時=Yの出願審査の請求の時」(184条の4第4項かっこ書)という、根拠条文を伴ったあてはめをしてほしいです。

また、新喪例の効果に関する記載が薄いです。「適用を受ける⇒29条1項2号に該当されなかったもとのみなされる(30条2項) ∴ 拒絶理由(29条1項2号、49条2号)を回避し、Yによりイを権利化」
のように、効果も書いてください。
 なお、新喪例が出題されたら、「このまま出願しても拒絶⇒新喪例適用⇒拒絶回避し、特許(登録)」の流れで書くと、採点者は読みやすく、〇がつけやすいです。

 問(4)については、出願分割をなぜするのか、理由付けor結論があったほうがよいです。すなわち、(Y時にしたものとみなされるから)「Xの国際公開によるロの刊行物公知(29条1項3号)に基づいて、出願が拒絶(49条2号)されない」ことに言及をしてほしいです。

 問(5)はOKです。なお、条文の言葉である(通常実施権の)「発生後」(99条)や、法律用語である「転得者」丁という表現を用いると、さらに分かりやすい解答ができます。
 全体を通じて、問題文の事実に用いられている表現を、法律の要件・効果にあてはめていない箇所が散見されました。日付については、問題文で明文の支持がない限り具体的な日付を書く必要はなく、それよりも上記で指摘したようなあてはめを書いたほうが得点に結びつきます。

 平成26年の特・実の問IIの答案は、偏差値としては50レベルだと考えます。

 問1(1)については、否認できない⇒抗弁、の順で解答できているのは好印象です。しかし、甲が差止めようとしているのは乙の「製造」であり、「販売」を差し止めようとしていないので、「販売」についてのみ言及するのは”積極ミス”です。

 また、新規性違反について指摘するなら、「秘密保持義務を有さない販売業者」と断定するのではなく、「秘密保持義務を有さないのであれば」と、条件つきで解答したほうがよいです。

 なお、題意把握について、問(1)でaについて、問(2)でbについて問うており、それ以外の設問表現が共通することから、先使用権の適否の違いが問われていると考え、先使用権のみに絞って厚く論証してもよいです。

 aに係る先使用権については、要件をすべて検討しようとしている点は好印象です。また、実施の準備について、最高裁判決をベースに規範を正確に定立している点はよいです。あてはめについては、「販売者への説明」=「意図」・「Mを発注」=「客観的に認識される態様、程度において表明
のように、問題文の事実と規範とを一対一対応させるように解答できれば、さらに得点が見込めます。「Mの3機増設」を拾って結論を出している点は加点です。

 問1(2)については、bがイに係る技術的範囲に属するかの理由付けについて、「靴紐の穴の構造」がイの技術的特徴であり、その特徴は変更されていないことに言及したいです。この点について、解答では問題文を書き写した直後に結論が出ており、解釈(あてはめ)が入っていないです。また、規範については、「出願時の実施形式に限定されない」という判例のキーワードも出せるとさらによかったです。
 
 問(2)は、答案構成に難ありです。すなわち、設問が「考えられる主張を挙げた上で、その主張が認められるか否か、述べよ。」ですから、解答の順番は、「1. 侵害成否⇒2. 丙の主張⇒3. 認められるか」で書いていったほうが読みやすいです。この点について、今回の解答は、丙がどのような主張をすることが考えられるかが明瞭ではないです。消尽について論述するなら、設問表現をオウム返しして、「丙は、Pの消尽を主張すると考えられる」とでも、ハッキリ書きましょう。

 各論について、本問でも「靴紐の穴の構造」がイの技術的特徴という問題文から明らかな事実を示しつつ、dの属否について結論を出したほうがよいです。
 また、丙のdの製造が「業として」(68条)の「生産」(2条3項1号)である、という認定は、端折らないほうがよいです。
 加えて、インクタンク事件の規範は示せてはいますが、あてはめが不十分です。ここでも、「「摩耗している」cの靴底を貼り替えることは、cの消耗部分の交換」・「業者が靴底を貼り替えてリサイクル品を販売することは「 広く行われている」という取引の実情」・「貼り替えによってイの技術的特徴である「靴紐の穴の構造」は変えられていない。」と、問題文の事実と規範とを一対一対応させるように解答したいです。

追伸:「あてはめ」について


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