答案講評例⑬:平成28年 特許・実用新案

 平成28年の特・実の問Iの答案は、偏差値で56前後はあるかと考えます。

 問(1)について、パリ条約からはじめているのはOKです。PCTについても、PCT11条のような代表的な条文を挙げるとなお良いです。そのほか、キーワードを出していて好印象です。

 問(2)について、「乙は出願を行っていないため、乙の当該特許を受ける権利は無効と解される」というのが法律的に正しくないように思えます(「承継が無効」ということであれば、まだよいかもしれません)。
 また、Aが特許出願とみなされることについて「184条の3第1項」を示したほうが良いです。33条1項、34条1項が説明できている点はOKです。

 問(3)はOKです。優先権の効果⇒特許要件の判断基準時⇒結論、という解答の順番もgoodです

 問(4)について、乙はロを「営業秘密とし」て実施しているから、公知引例にならないと考えるのが自然です。この点は積極ミスと評価されるおそれがあります。
 本問では、丁のロに係るB2が公開されているため、通常出願だと拒絶(29条1項3号、49条2号)という点を解答したいです。

 問(5)について、移転請求はよく書けています。一方、補償金請求については、戊が「業として」(65条1項前段)の「生産・譲渡」(2条3項1項)であるB2のイに係るαの製造・販売をしている、ことを指摘できるとなおよいです。
 また、警告は不要ですが、戊の悪意の立証が必要であることに触れられると尚よいです。

 平成28年の特・実の問IIの答案は、偏差値でいうと53・54前後だと考えます。

 問(1)について、PbyPクレームの理解・解答はOKです。

 問(2)について、文言侵害⇒均等論の流れはOKです。細かい点で、A3の製造・販売が業としての生産・譲渡であることを冒頭か結論で示せるとなおよいです。

 問(3)について、特段の事情の有無で場合分けするのではなく、問題文に「意識的に除外」と書いてあるので、
「意識的に除外⇒特段の事情あり⇒差止できない ∵禁反言の法理」
断定できます。

 問(4)について、国内優先権の効果が得られないのは、基礎出願Xの当初明細書等(41条1項柱書)に記載されていないcを「新たな技術的事項」としてYの際に「追加」したからです。この事実の適示してはじめて、本事案についての優先権の効果に関する正しい理解を伝えることができます。

 イの進歩性欠如は、周知技術cと公用引例A2との「寄せ集め」であることを示せるとよいです。

 問(5)について、訂正の再抗弁は丁寧に書けています。なお、ナンバリングした解答事項を引用したい場合は、*を使うのではなく、「上記1(2)」・「上記1(3)」のように書いたほうが安全です(特定答案回避の観点)。

 問(3)で一般的記載になっており、問(4)で人口乳首事件の理解が示せていないため、点が伸びませんでした。

 問I・IIを通じて、大量の解答が求められるため、受験生全体として解答レベルはそう高くないと想像します。それゆえ、均等論の理由付けや、問II・問(4)の侵害の定義を削って、オーバーした1分を捻出してください。

 なお、優先権は令和元年の出題予想テーマの1つであり、人工乳首事件は受験生の理解が今一つであることから再度出題の可能性もゼロではないと見ています。問(4)は優先的に復習することをオススメします。

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