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#19. 知財部が求める人材とは〜新卒で知財部を目指す方に〜

 最近、今年の採用活動に携わる機会がありました。私は人事の人間でもなく、人事権もないですが、何となく企業の知財部が求める人物像が見えてきました。本日は、その内容をまとめ、企業知財部への就職活動の役に立てれば!と思いポストしたいと思います。もしかしたら特許事務所→企業への転職を考えている人にも参考になるかもしれません。

0.知財部の仕事は企業によってさまざま

 まず、就職活動を始めて業界研究をした人ならご存じだと思いますが、企業の知財部とっても仕事は様々です。以前、↓のような記事も書きましたので、参考にしてください。

 大人数いて業務が細分化された組織もあれば、スタートアップのような会社では"ぼっち知財"という名で、企画が本業で知財もかじるという人まで様々です。大人数の知財部でもそのやり方は業界によってさまざまで、数多く特許出願してクロスライセンスを積極的に行う企業や、数を厳選して特許出願して守りの体制を築く企業や、特許だけでなく意匠や商標も合わせて商品の価値を守る企業など様々です。だから入社した企業によって、経験する業務内容は大きく異なります。これを理解したうえで、以下の項目を読んでいただければ幸いです。

1.泥臭い仕事ができるタイプか?

 知財部の規模・仕事の内容は企業によって様々ではありますが、どの内容にも共通することは表舞台で華やかに行われる仕事ではない、ということです。多分、就職活動中の皆様が想像するよりも何倍も地味な職種だと思います。

 一件一件の発明の発掘、出願、権利化をすること、他社の特許を読んで自社実施技術と比較すること、他社に対し自社に少しでも有利な契約をすること、などなど1つ1つの積み重ねが会社の大きな利益に繋がることはありますが、1つの仕事でいきなり大きな利益になることは少ないです(医薬はあるかも)。また、発掘、出願、権利化というフローは、出願から審査請求の流れを考えても3年経たないと結果が分からない、というように1つの仕事の結果が出るまでの時間が長いです。

 だからこそ、ある程度会社に定着してコツコツと泥臭く仕事ができそうな人間が好まれます。この辺りは人事や知財部に長く所属する管理職は結構見抜けていて、離職せずに定着出来そうな人間を選ぶ傾向にあると思います。

2.技術に興味があるか?

 知財部は知的財産権の中でも特許に関わることが多いと思います。特許で保護される発明は『技術的思想の創作のうち高度なもの』ですから、技術に興味があることが大事です。

 発明を理解するために開発に多くの質問をできる人が求められますが、技術に関心がないと質問も出てこないものです。日頃の生活の中やニュースを見て、ちょっとしたことでも疑問に思って、自ら調べ物をするタイプの人は向いてると思います。自分が大学で専攻してる技術のみならず、浅くても良いので幅広い技術に触れる意欲がある方が良いですね。子供のおもちゃの原理を調べることに興味がある、なんて人も向いていると思います。

3.これしかできない人間ではないこと

 メーカーだと各企業とも以前より採用数を絞っていることもあり、大学で学んでいる専門を見て、その専門に合う学生のみを開発として採用する企業も多いです。とはいえ、学生時代から知財の勉強をしている人はいないと思いますし、知財部の採用で学生時代の専門性を重視しているところはほとんどないと思います。

 研究でしっかりとした成果を出して知財部を希望するのはOKです(当たり前っちゃ当り前です)が、その研究成果を活かして、その分野に携わることだけをやりたい、という人は大人数の企業の知財部には向かないと思います。何かの技術分野に特化していることは武器になりますが、それしかできない人間は嫌がられる傾向にあります。それ以外にも興味を持てる人が求められます。企業が同じ技術をずーっと継続するとは限らないからです。

 上述した「その研究成果を活かして、その分野に携わることだけをやりたいという人」が知財関係の職種を目指すなら、特許事務所で働く弁理士がお勧めです。私が知っている弁理士でも博士号を持っている人は結構います。特に材料、バイオ、ソフトといったこれからの最も世の中に必要とされるテクノロジーの最先端を究めた人たちは、弁理士でなくてもコンサル的なものでも重宝されることは間違いありません。こういう人達は何をやろうとしても引くて数多だと思います。

4.ネガティブ情報も

 せっかくなので、いいところだけじゃなく、ネガティブなことも知っておいてほしいです。

 例えば、企業によっては知財部に新人を採用しないところもあります。知財部=技術者が巡り巡って辿り着くところ、という企業もあります。この手の企業は管理職も当然、開発から流れてきた人になり、社内における知財部のプレゼンスも低い企業になります。企業の中でプレゼンスが低いところにいることは精神的によくありませんし、社内の無駄な組織間争いに巻き込まれると嫌な目にあいますし、社内の出世競争で不利になるケースもあります。

 また、私がよく知る大人数の知財の企業では、全社的な数字に比べて、知財部の離職率が高い傾向にあります。離職する理由としては「大人数知財の仕事に合わなかった人」がほとんどです。同じ仕事を長年続けることに苦痛を覚えた、文章力・ロジカルシンキングが身につかないというネガティブな理由もありますが、商品企画の近くで働きたいいうポジティブな理由もあります。

 企画に近いところで働きたいと思うなら少人数知財の企業に行くべきだし、何年も同じ仕事をしたくないと感じたら社内異動や転職を考えるべきです。あと、私のように開発から知財部に異動するというキャリアパスもあります。ただし、この場合は社内の出世競争で大きな遅れを取るというリスクもあります。。

 また、新卒で大人数知財企業に入って、ぼっち知財までは行かなくとも少人数知財企業に転職するというキャリアパスはよいキャリアパスだと個人的には思っています。が、そんなことを就職活動から見据えることはさすがに難しいですよね。私もアラフォーだからこんなことを言えますが。ただ、終身雇用が当然じゃなくなっていく今後を生き抜く世代の人達は、常にいろんな情報を仕入れていた方がいいと思います。


 とりあえず初稿としては本日リリースしますが、また何か思いついたらリライトして内容を充実させていきたいと思います。本日はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました。

記事を読んでいただきありがとうございました。 支援をいただければ、また新しい記事を書くモチベーションに繋がります。よろしくお願いします。