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#31. 知財業界での大ピンチ:企業内弁理士

 久しぶりのポストになります。本日はドクガク先生にお誘いいただき、弁理士の日記念ブログ2022企画に参加するための記事となります。企画の詳細はこちらをご参照ください。

 さて、いざピンチの場面を思い出そうとしてもパッと浮かばないというのが事実です。企業知財となり6年目となりますが、訴訟とは遠い技術を担当しているので、大きな事件もありません。ただ冷静に考えると、今の立場そのものがピンチなのかもしれないと思えてきましたので、その内容を書いていきたいと思います。

1.企業内弁理士はピンチ?

 私は企業知財となってから弁理士の試験に合格しましたが、しばらく未登録でした。最近になり、面接審査を一定件数行うことを条件に登録料を払ってもらえるようになり、登録したという経緯があります。

 弊社だけではないですが、弁理士試験合格者全員に対し会社が登録料の負担をしてくれている会社は非常に少ないのではないでしょうか?4月末のデータで弁理士11,634人中、主たる事務所を会社としているのは24.4%の2,833人。一体どれだけの人が会社に費用負担してもらっているのでしょうか?また、一体どれだけの人が会社に費用負担してもらえないから登録をしていないのでしょうか?そもそも企業内で弁理士として登録されている人は、何をしているのでしょうか?

 他の企業内弁理士さんと会うと、私は必ず「弁理士として何をしてますか?」と尋ねます。その回答は、弁理士であることを活かした実務をしてないという方がほとんどです。代理人(包括委任状)として面接審査をしている人も少ないです。弁理士として受けた研修の内容を会社(開発向け、知財内)に共有している方も少ないです。確かにそんな状態であれば、会社としても登録料を負担する価値もないのかなぁと思います。逆にそれでも登録料を払ってくれている会社は余裕があるなぁ、とか、その人は大事にされているなぁ、とか思います。

 弁理士を10人以上抱えるような大規模知財では、企業内弁理士達が自発的に、①最新の法改正の情報を知財内や開発に向けて教育したり、②自社出願のクレームや明細書を評価して担当者にフィードバックしたり、③社内の組織横断知財活動を主導したり、ということをやっているという話はよく聞きます。これはこれで意味があることだと思いますが、いずれもやろうと思えば資格がなくてもできる仕事なのかなぁと。結局のところ、弁理士だからできる仕事というのは代理人業務くらいしかなく、それだけなら何十人も登録する理由はないと思っています。(企業知財に異動してから割とすぐに気付きましたけどね笑)

 そもそも自分が弁理士の資格を取った理由だって、企業をクビになった時に飯を食えるようになりたい、というのが最も大きな理由でした(本当に飯が食えるのは、資格の有無じゃなく、明細書が書けるというスキルの方が大事ですけど)。その後、発明者時代に面接審査を経験して弁理士ってかっこいいな!と思ったことはありましたが、その弁理士さんがかっこいいと思っただけで、別に企業内とか関係ないですし、企業内弁理士として、どう活躍したいというビジョンも明確でないというのが正直ベースな現状です。

2.ピンチをチャンスに変えるには

 と、こんなチラシの裏に書いておけばいい内容で、このnoteを終わらせるわけにもいかないので、セシタマン(今、使うべきワードなのかは知らん)のようにピンチをチャンスに変えていこうという内容で締めたいと思います。

 1.法改正に敏感であれ

 まず知財とはいえ、法制度に興味がない人は一定数います。拒絶理由の条文だけ知っておけばいいという人がそれなりにいます。そんな人達よりは、法律の問題点、趣旨などには興味があるわけですから、法改正には敏感であるべきです。実務で特許しか扱わなくても、意匠や商標、著作権にもアンテナを張っておく。日本だけでなく外国の事情にも敏感になっておく。こういうことが大事かと思います。知財協とかに参加すると、JPOだけでなくIP5から法改正に向けた意見を求められたり、産構審の最新情報を入手できたりします。自社に閉じこもっていないで、社外に積極的に情報を取りに行くような人材になっていければいいなと思っています。IP5のホームページを定期的に見てパブコメ募集を探したり、外部委員にならなくてもデスクでできることもあると思います。

 2.社内で一番詳しい人間になれ

 次に、私のように社内に弁理士さんがたくさんいる企業の場合は、なんでもいいから自分が一番詳しい分野を作り、人に頼られる存在になることを目指すべきことが大事だと思います。例えば、インドの特許制度なら自分が社内で一番詳しい、とか、PCT施行規則なら自分が社内で一番詳しい、とか、プロダクトバイプロセスクレームなら自分が社内で一番詳しい、とかなんでもいいと思います。○○ののことならアイツに聞いておけ!と思われるようになると、社内でのプレゼンスも高くなるのではないでしょうか?これも関心と興味さえあれば、業務時間外の努力で何とかできることだと思います。

 3.一人で飯が食えるようになれ

 最後は、やはり会社に必要とされなくなった、会社を辞めたくなった時の準備をしていこうという内容です。①技術屋さんの話を聞いて発明のポイントを掴む能力、②そのポイントから先行技術を調査する能力、③その先行技術との差異が最小限のクレームを作る能力、④そのクレームから明細書を書く能力、の4つは企業内知財で出願権利化業務に携わっているなら確実にスキルを上げておきたいところです。一人で飯を食うためには、これに営業能力や他のスキルも必要になってきますが、①~④が一人で回せるのであれば、必ずどこかで仕事がもらえる人間になれると思っています。私は②が弱いので、そこを何とかしたいなぁと思っているのが現状です。

 ということで、本日はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました。先日の知財実務オンラインでYuroocleのまるリーダーが「発信をしつづけることが大事」とおっしゃっていました。この数か月発信を続けることをさぼっていたので、Yuroocleをクビになるんじゃないか?というところも私なりにピンチと感じていました。。気づいたら、あのサイトから名前が消えていた、なんてことがないように。今後も何かしら発信していきたいと思います。ではでは。

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