手続き論をする上で必要なこと

 手続き論をする場合、こういう時にはこうすべきというルールとその根拠がまず語られないといけないんだと思うんですよ。そこのところを吹っ飛ばして、「この時こうしなかったのは手続き上のミスだ」とする批判をそのまま受け取る人が弁護士にすら散見されるところが笑えますね。
 美術祭等に関して助成金の申請をするにあたって、混乱を生じさせるような反対活動をする人たちの反対に合う危険がある作品を展示する場合には申請書に記載するというルールや、申請後そのような作品を展示することに決まった時は助成金の申請先に報告するというルールがそもそも申請時にあったのか、あったとすればその根拠はなんなのかということがまず問われないといけないはずなんですよ。
 ついで、そのようなルールが形式的に存在していた場合に、実際にそれがどのように運用されているのか、助成金申請者は従前それを守ってきたのか、守らなかった場合にペナルティを課せられてきたのかを問うべきなんだと思うんですよ。自分たちの美術祭で展示しようという作品の中に特定の思想集団を刺激しそうなものが含まれているということがわかった場合に、普通の関係者なら、混乱を生じさせない、早めに鎮圧できるように事前に警察等に相談しようとは考えますが、混乱を防いだりすることになんの役にも立たない助成金の支給主体に通知しようとは普通考えないでしょうから。

 文化庁が今回の不交付決定を維持した場合、今後、国からの助成金を申請しようとする自治体は、その助成金を用いて支援しようというイベントについて、極右やフェミニストたちなど過激な反対運動を起こす傾向がある勢力を刺激しかねないものがあるかどうかをチェックして、あればその旨を申請書に記載することになるんだろうと思います。というか、そういうものがあると「継続性に疑義がある」として助成金が下りなくなる可能性があるので、そういったものはやらせないという方向に動くのだろうなあと思います。

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