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「お嬢様 投資をはじめる!」書評

1 はじめに

 この週末、珍しく都心に出かけたのですが、「お嬢様 投資をはじめる!」渡波郁著 を見つけたので、つい買ってしまいました。12月15日に初版が発行されたばかりの本です。

2  この本の概要

 この本は、2012年度から最近まで「サクラ姫ネリマ証券」という名前で刊行されていたマンガ同人誌であり、投資をネタとして解説しているマンガということで大変に珍しいジャンルです。投資の解説として、かなり詳細なところまで踏み込んでいますし、マンガとしてもかなり面白い出来になっています。

 同人誌「サクラ姫ネリマ証券」は、1巻に2話ずつ入って入っているところが、商業誌「お嬢様 投資をはじめる!」では、1巻あたり8話も入っていて金額的には少しお得になっています。また、商業誌として書籍化されたことで、amazon ほかで簡単に手に入るようになりました。

 このたび自分は、なぜ第2巻から買ったかと言うと、第1巻相当の部分はだいたい同人誌として持っていたからです。いま確認すると、Episode.7と8の部分は持っていないので、やはり第1巻も買おうかなと考え中です。⇒注文しました。

他の方の書評です。アキバblogより、同人誌「サクラ姫ネリマ証券」の記事。

ブログ「頭の上にミカンをのせる」より、書籍化熱烈希望とのこと、叶って良かったです。

togetterまとめ、投資クラスタのガチ勢も、「サクラ姫ネリマ証券」は絶賛とのこと。

Noteからは、あさひっちさんの以下の記事。

水瀬ケンイチさんの投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」の記事。水瀬ケンイチさんは、「お金は寝かせて増やしなさい」などの著作で有名な投資家です。

株探の市場ニュース記事に、作者のスダさんがインタビュー記事を寄稿されています。

3 登場人物

 登場人物は、大金持ちの主人公の「元生徒会長」こと高園寺椿と、主人公の高校時代の同級生で、ネリマ証券の営業の毛呂山さくらことケロ山です。毛呂山さくらは、証券会社の営業ながらも何だか憎めないキャラクターで、やたらと主人公のところに来てさまざまな金融商品を薦め、ケーキを喰いたがります。証券会社の営業かつ高校時代の同級生という絶妙な関係性が、いわゆる「ぶっちゃけ」感を出せる秘訣なのでしょう。
 他に、主人公と高校時代の同級生で元生徒会役員の民木桃が、第5話から登場します。

4 各巻の章立てと内容

第1巻の収録話は以下となります。同人誌「サクラ姫ネリマ証券」のVOLUME1から4までのエピソードに相当します。同人誌の頃のマニアックな各話タイトルと比べて、かなり説明的なタイトルに変っています)

1話 しくみがわからない儲け話に乗ってはいけない(旧題:来襲!ネリマ証券)
2話 証券会社だからってタダでは働いてくれない(旧題:それでもケロ山はケーキを食べる)
3話 ゼロ金利の日本円より高金利なドル預金のほうが儲かるというわけではない(旧題:来襲?銀行員と高金利外貨預金)
4話 プロに運用を頼めば簡単に儲かるというわけではない(旧題:これがプロの実力というものだよ)
5話 株は基本的に「儲かる投資」だが、誰もが必ず儲かるわけではない(旧題:株主ファイト レディ・ゴー!)
6話 企業の業績が上向いても株価が上がるとは限らない(旧題:消えたお宝銘柄)
7話 ド素人が株に手を出したらボロ負け必死と思いきや、実はそうでもない(旧題:ゲームの特性・前編 プロなら勝てるのか?)
8話 プロでも市場で勝つのは簡単ではない(旧題:ゲームの特性・後編 プロなら勝てるのか?)

第2巻の収録話は以下となります。同人誌「サクラ姫ネリマ証券」のVOLUME5から8までのエピソードに相当します。

9話 成績優秀なファンドを買ったほうが儲かるというわけではない(旧題:ケロ山、妹になる)
10話 プロでも暴落は避けて通れない(旧題:ファンドの限界)
11話 成長企業に投資しても儲かるわけではない(旧題:成長企業株はお得ですか)
12話 リスクを避けていたらリターンを手にすることは絶対にできない(旧題:心の平穏とハイリターン)
13話 株の銘柄選びが下手でも成績はさほど悪くならない
14話 投資家の仕事とは「リスクに振り回されて酷い目に遭う事」にほかならない(旧題:「運用」の運の字は運次第の運)
15話 ファンドに期待できるのは「防御」であって「儲け」ではない
16話 投資における「リスク」とは「危険性」という意味ではない(旧題:「リスク」との戦い方)

第3巻の収録話は以下となります。同人誌「サクラ姫ネリマ証券」のVOLUME9から12までのエピソードに相当します。なお、第3巻は来年1月22日が発売日となります。

17話 株価の「勢い」にだまされてはいけない
18話 暴落時こそ買いのチャンスだとは限らない
19話 資産運用を金融機関に相談してはいけない
20話 インデックスファンドは入門者に適してはいるが、しかし決して甘くはない
21話 株価下落がバーゲンセールだとは限らない
22話 いくら「過去の席席が良い投資法」でも信用してはならない
23話 老後資金の不足分は株式投資でカバーしようなどと安易に考えてはいけない
24話 確実にお金を増やすことだけが投資ではない

※ 22話のタイトルは いくら「過去の成績がよい投資法」でも信用してはならない の誤記でしょうか?

5  投資とは他者との戦いである

 このマンガでは、投資とは他者との戦いであり、お互いに相手のものに価値を見出しているときに取引か成立することを述べています。そして、相手よりも読みが浅ければ、自分が損をする可能性があることを述べています。

 第3話 来襲?銀行員と高金利外貨預金にて、外貨預金の受け入れ先を「ホワイト会長」としてキャラクター化して、外貨預金をしようとする主人公「ブラック会長」の行動と併せて、相手の思惑を説明しています。

Episode 3 : 来襲?銀行員と高金利外貨預金
Episode 3 : 来襲?銀行員と高金利外貨預金

 ここではオーストラリア・ドルの外貨預金で年利3%のときの取り引きについて説明しています。そして、主人公のブラック会長はこう考えます。ゼロ金利の日本円を、年利3%のオーストラリアドルと引き換えるとは、外貨預金先は何を考えているのだろうかと。
 そしてケロ山は言います。「こいつは「預金」なんて名乗っているけど、そんななまやさしいものじゃない。シロウトは外貨預金なんか止めておけ」と。

 自分は為替レート、手数料など様々な要因から外貨預金は手を出したことはありません。このホワイト会長の「本当、あなたはラッキーだわ」のセリフと、ほくそえんだ笑顔が、外貨預金の怖さの象徴していると思いました。

 他には、第16話の「投資における「リスク」とは「危険性」という意味ではない」にて、台風の予報円を使ってリスクを説明するなど、マンガとしても投資の説明としても判りやすい説明としています。この16話は、投資家必見の内容です。

6 著者の他の著作

渡波郁様は、他にも「CPUの創りかた」という著名な本を執筆されています。まさか、「サクラ姫ネリマ証券」と同じ作者とは気づいていませんでした。


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