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おしゃれな地域と言われる様になったところだった。 サビネコのサーバントは美人だったから、引く手あまただったが、あの虐待野郎から後は、決まったパートナーを創らなかった。

「やっぱり、東京はおかしなとこや、ロクな男がおらんけんね、おまえがいてくれたらよかよ、女同士強く生きようね」

彼女はサビネコを撫でながら言った。

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夕方、仕事を終え着替えて、出かけていく彼女。

「稼がなね」

何度も季節が流れ、そのワンルームだけが、サビネコの世界、彼女の話を聞いて、喉を鳴らして、一緒に寝る。 レースのカーテンから外の世界を垣間見るが、外へ出たいとは思わない。

女の命と重なり、自分が必要とされているのを知っていた。

自動給餌や自動給水が置かれ、トイレが3つ

時々、戻らないことがあるけれど、寂しい以外は困らず、戻れば寄り添い、撫でられ、喉を鳴らし ざらざらの舌でグルーミング。

別れは突然。

ワイルドレシピの高級餌が山の様に置かれた、美味かった。

「ごめんね、帰らんといかんのよ」

女の身体に異変、犬程じゃないけど嗅覚のあるサビネコは感づいていた。

「連れて帰りたいけど、かあちゃんが、猫、無理なんよ」

トラックが来て、彼女が詰めた段ボールを積み込む、ばいばいと手を振って、彼女はマンションの部屋を出た。 サビネコは自転車置き場の陽だまりに置き去りにされた。

秋の終わり、サビネコは独りになった。 マンションの裏側を伝い、庇を探し、餌を探すけれど、自分で狩りをしたことのないサビネコは飢えた。

寒い、寂しい、撫でてくれる手は無くなった。 鴉が上空を舞う。 どこへ行っても 居心地の良い所は大きな猫が居た、時に狸も居て、サビネコを追い払う。

寒くて ひもじい 寂しい 空を意地悪な風が渡る。 家から家、塀の中をそっとそっと歩く。

何日も食べられず、マンションとマンションの合間に有る家の外水道で水を舐めた。

「どうしたのさ?」

びくっとして背に毛を逆立てて、耳を斜めにする

「おいでよ」

手が差し伸べられた、男、眼鏡、ミニゴリラ。

「しゃあああっ」 精一杯威嚇した。

「あら、嫌かい? なら、どいてくんなぃか? 玄関入れないからさ」

男は手にしたスーパーのバッグを見せながら言った。 仕方ないので2歩前に出た。 それ以上動けない。

暫くして、足音、逃げたいけど逃げられない、玄関前で振り返ると男が手に皿を持っていた。

「今、ドッグフードしか無いんだよ、豚肉返して、冷やしてるから良ければ、喰いなよ」  腹が鳴ったけれど 一口二口喰って、逃げた。 男がドアに入り、暫くして、他の足音。

「おいで」 

女の声 サビネコは建物横の壁際で さっきの食事にありついた。 その家を辞し、翌日、マンションのごみ置き場で 大きなキジトラのメスに縄張り荒らしをとがめられた。

「おいで」 女が二人、ちゅーるを差し出しながら、一人がキジトラをけん制してくれた。

夢中でちゅーるを貪り喰う。 抱き上げられた、昨日の家の玄関に入る。

「ぱぱぁああ」

昨日、餌をくれた女が階段上に叫ぶ

「あいよ」 昨日の男が降りてきて、ウールのマフラーと箱を支度した。

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サビネコはフンゴロニャオ王国 マコ3世に戴冠した。

= 終わり =

マコ3世の噺は ミケ2世の後に また詳しく。

昨日、ミニロケットくんを見て、ついつい、棄てられた猫の気持ちが描きたくて。

どんなに寒くて 寂しくて 寒いか、 どんなに過酷な環境下なのか

僕が良く父親に すっぱだかで 外へ投げられたので そのまんま家出して死にかけた事もありました。

原因は少年ジャンプを読んでいたこと(笑) 当家で漫画は禁書でした(笑)

人間でも辛くて このまま死のうと思うのに、もっと小さい猫はどんな気持ちかしら。

ひとつでも、そんな苦しい命が減りますように。

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