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18:00
鈴木議員さしまわしのハイヤーがマンションのエントランスに着いた
自宅へ出向いた冴子先生と健吾先生、鈴木議員と第二秘書を相手に和やかに会談が進み 銀座で食事でもしながらアヤと婚約者の僕に謝罪をしたいと
纏めてきたから乗ることにした

やれやれ、地下鉄なら30分以内だが、この時間6キロ足らずの道のり、車だと1時間

東京在住の議員が知らぬわけでもあるまいし 指定の時間は19:00だから問題は無いだろうけれど

国会議員なんて幕藩体制に似てる、地元が有るものの大抵が東京に家を持ち暮らしているんだ

第一秘書と言いながら新幹線でお上りさんする結城君は主戦秘書じゃ無く二軍て事だ、第二秘書のほうが曲者らしい

アヤと僕はそれなりにドレスアップしていた、フレンチのドレスコードのある店だ 僕は過去に一度だけ行ったことが有る

手に持っていたコートを預け、案内されてウェイティングバーへ、議員と第二秘書が居た、議員はスターウォーズの長老みたいな顔をしていた、 帰りてぇヨーダ

加賀百万石の江戸屋敷だったところにある大学を出たのが御自慢らしい、僕らの大学を聞いて
「良い大学だねぇ、しっかり勉強しているかい?」
なんて年長者ぶってるけど、見下しているのが解る

食前酒はシェリーにした
おっさんはさかんにアヤに話しかけてる、会話スキルは高いみたいだ
ただ、言葉の端々が下品

また、ウェイターが来て席へ移動する 鈴木議員とアヤが向かい合う、僕と第二秘書、彼も赤門大学らしい、江戸時代なら昌平黌? 本田健一と言う第二秘書は、上手に話を誘導していく

ソムリエが来て、恭しくエチケットを見せびらかす、赤ワインが抜栓されてデキャンティング、アイスバスケットが2つ シャンパンが出て乾杯、フォアグラとキャビアがオードブル

「本当に綺麗で可愛いお嬢さんだね もてるでしょう」
鈴木議員はシャンパンでテンションが上がって来た 本田秘書が上手に牽制している

僕はシャンパンを楽しむ、高級店はシャンパンの保存から出し方まで理にかなってるから、同じものでも美味い マネできるかしら

アヤは会話をそつなくこなしている、何気に引き出しが多いし、相手の発言を傾聴からの展開が上手い、テーブルマナーもしっかりしてる、銀座の一流クラブに勉めてもトップ張れるんじゃね? 僕は惚れ直した

スープはコンソメ、美味い ヒラメのムニエル、お替りしたい、オマールのクレープ包み、そしてシャトーブリアン 議員に赤ワインが注がれテスティング いや抜栓した時点でOKでしょ、 儀式ですか かっこつけですか? 赤ワインと牛肉も美味い 出来ればロースを喰いたかった。

ウェイター・ソムリエが忙しい、鈴木議員はボルドーをかぽかぽ空ける、なんかワインが可愛そうになって来た

「良いねえ、鈍通インターンの頃の写真を拝見して綺麗なお嬢さんだと思ったが、こうしてドレスアップされると、また100倍は美しい」
おっさんおっさん、いやらしいぃいって雰囲気が出てる、銀座じゃなくて、どっかの場末の眞露や鏡月の出る飲み屋に居るみたいだぞ

「鈍通と、ここまで揉めたんだから、いっそ就職先を変えないか?」
「どこへですか?」

「将来政治家を目指して、末は初の女性総理なんてどうだい?」
「大きな夢ですねえ 面白そう」

「面白いだろう、私の秘書にならないか? そうしたら、いずれアヤちゃんの地元から出馬したらよい、増税メガネも支持率がた落ちの所へ、アヤちゃんみたいな美人が参議院からでも出たら、盛り上がるよ 年齢になったら衆院に乗り換えてアレを蹴落とせば良い」
「先生、御酒が過ぎます」
本田秘書が牽制

「政治は面白いよ、人様に尽くして好かれるのが第一、気は心の世界だからね、それで日本を動かし、世界を動かす」
「世界を、大きな仕事ですね」

「そうだよ、アヤちゃんも私と気を合わせよう、いろいろ教えてあげるよ」
いやいや、内心身体を合わせようって思ってるのみえみえ
「教えて下さる、面白そう」
アヤは慣れたもんでスラーっと流す 本田秘書はあちゃーって顔をしている

「彼氏さんは大人しい人みたいだから、待ってて頂いて、私と一緒に世界を目指そう 衆院から出て議事進行係、ぎちょーをやって欲しいな 美人だし花が有るから人気が出るゾ」
「興味深いお誘いありがとうございます」

「本田に連絡をとってちょうだい、悪いようにはしないから」
「そうですね、これからは本田秘書さんと連絡する様に冴子先生に伝えます」

「あの先生も美人だねえ、うちに欲しい」
アナが有ったら入りたいの口かい、しかも美人好みなのはそこそこ金が有るからでしょうw
「如月弁護士も仕事以外で先生とコンタクトしないと思いますよ」
アヤの反撃開始

「ほぉ、なんで」
「うちの亭主が黙っているのを大人しいだなんて、虎視眈々と言う言葉をご存じない? 獲物を狙う狩りの虎の静かさを どんなぼんくらですか」

僕は口角が上がった、アヤが僕を亭主だって、嬉しい。 議員は僕を見てぎくりとした、あら票を取るだけあって、雰囲気には敏感なのね

「虎でも獅子でも良いけど、あぁ阿玖吾くん、君も秘書にならないか?」
「いやですよ、取り繕うのに雇ってやるって? 先生の所へ入ったら秘所を弄られそうで」

「そんな事は無いな」
「バイでは無いと 人の女房に目の前でこなをかけるけど」

「私は公明正大に若い人に力を貸し日本の躍進に尽力しているんだ 君たちにチャンスをあげようと」
「あら、大きく出ましたねぇ、でも威張っていられるのも今の内ですよ」

「学生風情が何を」
「その学生風情にビビってるのが、おまぃさまじゃないのかぇ?」
にやにやしちゃう

「きさま」
「同期の桜じゃないんだから、ここは銀座の真ん中ドレスコードのある店ですから、お静かに」

「許さん」
「うん、僕も、次の選挙が終わったら鈴木議員じゃなくて 元議員の鈴木さんにしてあげます、あと1年3ヶ月だっけ?次の参院選」

「私に喧嘩を売るのか」
「売ったのはそちら僕は買っただけ、買った以上儲けさせていただきます」

アヤを促して立ち上がった、デザートのクレープシュゼット喰いたかったけど、また後日喰いにこよう。

「阿玖吾さん」
クロークでアヤにコートを着せかけていたら本田秘書が追って来た

「大変申し訳ありませんでした」
「こうなる事は解っていたんでしょ?」
本田秘書がほんの一瞬笑った

「どうせ次は落ちるんだろうし、別の派閥から出るなら応援します」
切れ者秘書なら、次の選挙に自分が出馬する準備はしているだろう、今回のスキャンダルは議員を蹴落とそうとしている秘書にとって大きなプラスだ。

「スイーツだけ、どっかで食おうよ」
アヤが頷いた、僕はタクシーを停めた


   



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