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 塀の外に騎馬が300整列している。 黒の甲冑に踊る紅いイノシシ
旗手の旗もその紋章だ。
 その横に銀の胴をつけたグレートデーン人の傭兵部隊1000
北の海の民であるグレートデーンは背が2m近い巨人揃い勇敢な歩兵だ。
カヌートと言う隊長が率いている。

 それを挟むように青の兵装 テンプル騎士団ラテン部隊300
その横にゲルマニア部隊300ヘロダイ提督率いる銀のゲルマニア鉄十字騎士団300
 ヘロダイは金銀錦の兵装にでっぷりと太った身体をはめ込んでいる、馬は普通のものでは潰れてしまうので、重さが1tを超える荷駄用の特別のものだ。
 顔が大きくなりすぎて冑に入らないから脱いでいて3重の顎が鎧の首にだらりと乗っている。
 やたらにピカピカ、キラキラした金色のブタだ。 ゲルマニア鉄十字の金色の鷲の紋章を掲げる旗手を従えクロイツェラーの師団長を任じている。

その次が荷駄隊、荷駄の後ろにグレーに塗られた馬車、これに巫女が乗っている。

 しんがりは、クロノス公爵家の騎馬300、真っ赤な軍装で棍棒を持った巨人が紋章だ。

「ロッソ、貴方が総大将だったんじゃなくて?」
 甲冑を被ったくぐもった声で女武者イシュタルが言う。 シヴァ家の2列目ロッソの右側だ。
「金ブタが大将をやりたいって言うから譲ってやりました」
「指揮系統は大丈夫なの?」
「兵があいつの言うことを聞くと思いますか?」
「ありえないわね」
「率いてきた鉄十字だって危ないもんだ、あそこの隊長連中とは、俺のほうが懇意です、ほとんどが都の道場で一緒に剣を学んだ仲ですよ。 みんなこっちに着任してから神皇区を抜け出して、うちの城でドンちゃん騒ぎ」
「あら、楽しそうね、どうして呼んでくださらないの?」
「グンターとハーゲンには声をかけましたよ」
「いじけ男ふたりは行かなかったのね」
「占いをしていたらしい」
「占いね・・・床上手なんでしょうね、ところで、神皇区にオネエチャンを沢山送り込んだでしょう」
「先帝のときまで、参勤交代があったから」
「隔年で滞在よね、都で随分遊んだのでしょう」
「あはは、て言うか、都生まれなのです俺、エデンのバサラ町の元締めとは懇意にしていたので、主に北のオネエチャンを・・・」
「街の治安のため?」
「盗みや喧嘩はピノのテンプルがやってくれるけど、男は抜いてやらないと・・・鉄十次にグレートデーン、荒くれ男が何千か居たらレイプも起きますからね」
「それで、神皇教会のそばに突貫工事で館を作って、娼婦を300人も送り込んで?」
「戦が終わったら、色を塗りなおして教会の寮ですって、寄付してやろうかと」
「あはは、傑作、でも金ブタは女を抱けるの?」
「5段の肉の下から棘みたいにちっちゃいのが、にゅうって出るそうですよ
身体が重くて自分で支えられないから座位専門だとか・・・
お口の上手な、お姐さんをあてがっておきました」
「だから、満ち足りた顔をしているのね」
「舐めると甘いそうで、そういう病らしい。嫌な仕事だからって、姐さんたちに割り増し取られました、早いから楽だって言いながら、高いんだもん」
「でも、嫌なのね、わかるわぁ」
 イシュタルが愉快そうに笑う。

 シヴァの街の市民が城壁の上で見送る中、ロッソの軍を先頭にクロイツェラー軍は発進した。
 街道をまっすぐ、ヒースでは広がって、やがてGeld山を右に見て
砦から挨拶の狼煙を見ながら進んでいく

 丸一日かけてスロンの入り口から少しのウィステリアという湿地の多い地で野営。

 木を切り出して逆茂木を立てて野営地を囲い歩哨を立てる。 それぞれの隊がテントを張り固まっている。
 荒くればかりの町がいきなり荒野に出来たようなものだ、ロッソのテントにはロッソとイシュタルだけ

 ロッソの兵は口が堅いからイシュタルは軍装だが普通に寛いでいる。

 兵と同じ食事を取り終わって明日の段取りを相談していると
見張りがやって来た。

「ロッソ、巫女のところの下僕が」
 テントの外に出るとアキュラが居た。
「こんばんは、どうした?」
「おまえ、ロッソなんとかしろよ」
「揉め事が起きたから、俺になんとかしろと言っているのだな」
「当たり前だろう、カノンが可哀想じゃないか」
「おまえ、脳内で物語り創って遊んでないよな、主語述語はちゃんとしよう」
「ふざけんな、おまえと違うぞ」
「揉め事は何処で起きてるんだ?」
「カノンの馬車だよ、決まってるじゃないか」
「その言い方だと、揉め事の原因はカノンのように聞こえるよ、彼女を庇うつもりかもしれないが少し考えて物を言わないと、かえって迷惑が掛かるけど」
 
 おまえ、うちらの殿様になんて口を利くんだ。ロッソの兵がむっとしてアキュラに詰め寄ろうとした。

「良いよ、ちょっと行ってくるな」
 ロッソは兵を制しアキュラを促して、テント村を歩き出した。丸腰なのに、アキュラが気づく。
「おまえ、また何かあったら、俺の身体を棍棒代わりに使おうと思っているだろう」
「あれ?わかっちゃった」
 ロッソが朗らかに笑う。
「ふざけんなよ、人を馬鹿にして」
「わかった、棍棒にしない」
「本当だな」
「約束する」
「ミサイルにもするなよ」
「おまえ、人の気持ちが読めるのか?」
「あたりまえだ、お前みたいな莫迦とは違うんだ」
「すごいな、ミサイルもしないと約束しよう」
「よし、赦してやる」
「ありがとう」
 
 カノンの馬車の前に来た、ワインの大樽のようなヘロダイの体躯ととりまきが3人。グンターとハーゲンがそれに立ちふさがり、その後ろにカノンが居る。

「占いを所望されているだけじゃ、都のヘロディース家、ご当主であるぞ
謹んでお受けせよと申しておる」
 ヘロダイの取り巻きが怒鳴っている
「ですから、儀式の巫女合唱隊も連れてきておりません、六茫星のしたくも出来ませんので」
「ならば、何故、グンター殿やハーゲン殿は占えるのだ」
「正式な手続きを踏んでイニシエーションした後、地と空に繋がれば気が通り、あとはずっと簡易に占いが出来るのです」

 ロッソがぱんぱんと手を叩いた、一同の注目を引き寄せる。
「皆様、如何なさいました?」
「ロッソ殿、占いを所望したのだが」
 ヘロダイが身体と反比例する高い声で、ぜいぜい言いながら答えた
脂肪が気管を圧迫するのか普通にしゃべるのも苦痛らしい。

「揉めるから、来るなって言ったのに、なんで指揮官の言うことが聞けないのかしらん」
 ロッソが独り言
「ロッソ殿、師団長はヘロダイ提督さまですぞ」
 取り巻きが威を借りて言う。
「あぁ、許可を出したのは、提督でしたか」
 言ってから横を向いて
「賂で目こぼししている本当は異端の巫女に占いねぇ、神皇庁に言いつけてやろう」
 ぼそっと言う。 ヘロダイの顔色が変わった。
「シュメールのイナンナの神殿巫女も同じ占いをしますが、好かない男は占わないそうですよ」
 向き直って紅い豚が金ブタを見る。
「提督閣下を好かないと申すか」
 カノンはぶんぶんと首を振る
「好かないとか言うと意地悪されるもんな」
「ロッソ殿失礼であろう、提督閣下がもてないなどと」
「あら、言っちゃった」
 ロッソがひとさし指を指す、取り巻きがヘロダイに殴り倒され、膝をついた。
「ヘロダイさま、やめましょうよ、都に居るときは同じ道場に名を連ねた仲じゃないですか、スロンを平定したら、また、シヴァの神皇区でお姐さん奢りますから」
「では、戻ったら、ルナ殿はじめ、マリア、ヒルダと申す侍女殿たちと一献よろしいかな、ロッソ殿ご自慢の風呂にも入れていただきたいし、今はカノン殿に口で占っていただいて」
 象のトランペットみたいな声で言う表情が凄く下卑ている。
「要は、帰ったら俺の女房といっぱつやらせろと、今夜はカノンのフェラチオで我慢すると、そういうことですね」
 ロッソはにこにこと言う、グンターとハーゲンがまずいという顔をした。
ヘロダイも、ぎくりと気取った。

「いや、そうはいっておらんが」
 額に汗をかき焦った顔がまた下品だ、夜目にも顔が赤くなっている
躾のされていない悪がきのエゴがそのままアドヴァルーンのように膨れた醜さ。

「アキュラ、怒れ、カノンを口だけの道具って言われたぞ」
 ロッソはすばやくアキュラの後ろに回りこんだアキュラの手を後ろから持つ。
「うっわーん、ぼっ僕のカノンになんて事を言うんだぁあああ」
アキュラにアテレコして身体を持って、振り回す二人羽織、脚が取り巻きに当たる。
 ヴぁきッ!! どかっ!!と音がする。3人の取り巻きは伸びてしまった。
「やめろよブタ」
 アキュラが首だけ曲げてロッソを見て怒鳴る
「あっ、ヘロダイさまをブタだって」
「おまえだって紅いブタだろ」
「うちのはイノシシだ、ボタン鍋は松坂牛と同じくらい高級なんだぞ、それは良いから、グー握る」
 アキュラが思わず言われたとおりグーを握ると手首をつかんで、ヘロダイに襲い掛かる。
 アキュラは人間マペットだ。アキュラの腕でストレートを出すとヘロダイがブロックした、重心が変わったところでロッソの足がヘロダイの足を払った。
 一瞬肥満の足が空に浮かび、地響きをたてて仰向けに落ちる、ずずぅんと音がした、1Gの地球重力が良い仕事をした。
「馬鹿にしやがって、こんにゃろ、こんにゃろ」
 アキュラを持ち上げて、ヘロダイの顔に足裏をスタンプさせる
「ロッソの足が顔ふんでるぞ」
 グンターが心配そうに声を掛ける。
「あらま」
 アキュラをぽいっと投げるとロッソはヘロダイの顔の上で飛び上がって自分の踵でスタンプする、連続3発。

 ヘロダイが白目を剥いた。
「ネエチャンの白目は色っぽいけどピザは不気味だなぁ、うちの風呂に入るって?豚骨スープを取る鍋じゃねぇやぃ」
 鼻血が噴出し、口も歯が折れて真っ赤な洞窟のようだ。
「う“~~」
 ヘロダイが身動きをする、ロッソがこめかみを蹴り動きを止めた。
「戦死させちゃうか、この4人」
「ロッソの物言いは、バサラ町の不良のようだな」
 グンターが怖そうに言う。
「よく遊びに行ったよ、兄上は怖がって来なかったじゃない」
「私はお前たちのように度胸がないから」
「そりゃ、良いんだけどね」
「ロッソ殿、これはまずいぞ、曲がりなりにも総大将だ」
 ハーゲンまで心配している。
「そうだよ、だめじゃん、アキュラ」
 アキュラは放り投げられて腰をさすていたが急にふられて呆気にとられる。
「ずるい、ジークフリート、アキュラを操人形にして貴方が」
 カノンが声をあげた。
「そうだっけ?金ブタもアキュラにやられたって言うと思うな、そのほうが、もめないもん」
「そんな・・・」
 カノンが不安そうにロッソを見つめる。
「護衛をつけるから、スロンのカウクーへお帰りな、ここから北へ10km,貴女の実家でしょう」
「調べたの?」
「別に貴女のことを調べたわけじゃありませんって、遠征先のことは詳細に知らないと対策が立たないので・・・実家に戻って家族と一緒にどこかに隠れて遠征軍が引くまで待てばよろしかろう、ジュ―ダもカウクーから去る」
「ジューダの率いるスファラディが?」
「今は何も言えない、見ていてください、さぁお支度を、イノシシ武者を6人遣しますので、すぐにご出立ください」
「ありがとう」
カノンは暫く考えてから、そう言った。

 ロッソは荷車を持ってくるとヘロダイを乗せ、その上に3人の取り巻きを荷物のようにロープで括りつけテントの布をかける、そのままいずこへか運び去った。

「あっはははは、あははは」
 話を聞いてイシュタルが笑い転げる、ロッソのテントだ
「そんなに可笑しい?」
「なんで、そういう展開になっちゃうの?私が片付けようかと企んだのに」
「成り行きだよね」
「ルナちゃんの名前だされて切れた?」
「そうでしょうね」
「で、戦死したの?その4人」
「いや、うちの衛生兵が6人がかりで診察中ですよ、なんかあったら口を縫い合わせる手術することになっています、そのあとにカウクー沼で、ブラックバスやウナギが食べるそうです」
「しっかりびびらせた?」
「戦死なさるんですか?ってお伺いを立てましたよ」
「あははは、兵にはなんて?」
「ヘロダイが転んであとの3人が巻き添え食ったって」
「納得したの?」
「うすうす感づきながらも納得している」
「戦争って怖いわ♪」
 イシュタルがまた、笑い転げた。

 


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