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【初心者向け】労働法のわかりやすい本(『ゼロから学ぶ労働法』)

労働法について学びたい初心者にお勧めの本をご紹介します。


概要

原昌登 著『ゼロから学ぶ労働法』(経営書院、2022年)は、成蹊大学法学部の教授である原先生が書かれた本で、労働法について丁寧かつわかりやすく解説しています。他にも労働法の入門書はありますが、ろくに法律を学んだことのない私にとってはそれすら難しいと感じていました。この本は、そんな人でも読み進めることができ、入門書までの橋渡しをしてくれます。一から学ぶことも難しい人でも読めるという点で「ゼロから学ぶ」というタイトルがまさに当てはまっています。

どんな人におすすめ?

・労働法を学ぼうとしている、学びはじめたばかりの学生
・人事労務に携わる会社員
・ビジネス実務法務検定などの資格試験の受験者
・なんとなく法律や労働法に関心がある人

注目ポイント

話し言葉で読みやすい

この本は「です・ます」調、話し言葉で書かれています。
たとえば、労働契約は次のように説明します。

使用者は、別に「偉いから労働者に仕事を命令できる」わけではない、ということです。労働者が労働することを、使用者がその代わりに給料を支払うことを、お互いに約束しているからこそ、使用者は労働者を働かせることができるのです。このような約束のことを、法律の世界では「労働契約」と呼びます

『ゼロから学ぶ労働法』p.3

法律は言葉が難しいというイメージがありましたが、この本では上記のように表現が工夫されており理解しやすかったです。一方で、「使用者」や「労働者」という法律で使われる言葉がそのまま使われており、正確性にも配慮されているように思われます。使用者と労働者の定義については、後のページで説明されているので、法律用語が出てくるからといって難しいということもありません。

法律独特の言い回しも、「労働者の自由を過度に侵害する(要は行きすぎ)か否かで判断される」(同書、p27)のように、「要は○○」と書いているので、ざっくりと理解することができます。

法律の考え方がわかる

法律の条文を説明するだけではなく、その背景にある考え方についても説明されています。解雇予告手当を支払うことで解雇予告期間を短縮できるという労働基準法については、以下のように説明します。

労基法が、解雇時には賃金30日分ぐらいのお金が(転職その他の費用として)必要だと考えているからです。予告があれば、労働者側が節約するなどして解雇に備えることができます。予告しないのであれば、その分をお金で渡しなさいということです。

『ゼロから学ぶ労働法』p.137

この本では、それぞれの項目について重要な判例も紹介されているので、条文を眺めているだけではわからない解釈や実際の運用についても知ることができます。

幅広い範囲をカバー

本書では、労働者・使用者の定義、賃金といった基本的な事項から、副業・兼業といったトピックまで幅広い範囲をカバーしています。最初はこの本で概要を理解し、その後、興味のある分野や仕事で関わりのある領域を別の入門書や専門書で深堀していくことも可能だと思います。巻末には索引も付いているので、気になるキーワードを調べて、該当する箇所を読むといった使い方もできます。

気になった方は読んでみてはいかがでしょうか?


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