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イ 一枚のPOP

先月ひと月で50本アップして頭の整理が終わったので、あとは気ままに気楽に、オムニバス風にときどきアップしたいと思います。

4、5年前です。東北のお寺を地元の仲間と回っていたことがありました。タバコが切れたのでコンビニに立ち寄り、うちの近くでは見たことが無かったスマートなマールボロに目が留まったのでおもわず買い求めました。

その時、若い頃の懐かしいことを思い出しました。初就職で引っ越した地方都市でマイルドセブンの限定販売が始まった時のことです。後にベストセラーになったことが証明するように軽くて旨い味付けで「これからはもうマイルドセブンとハマった」のですが出身地の大阪ではまだセブンスターしかなかったため1カートン買って帰省し、自慢しながら同窓生たちに配りました。「地方に赴任したのもまんざらでもないで」みたいな、ささやかな優越感を持った思い出です。

つまり、東北で全国に先駆けてテスト販売したスマートなマールボロを知って、ふたたびちっぽけな優越感が起こっておもわず買い求めたというわけです。でも、あの頃のマイルドセブンのような新鮮な旨さを感じたわけではないので2泊3日の東北巡回でひと箱吸い終わり土産も買わず、帰宅してからいつものメビウス(旧マイルドセブン)に戻ってそのマールボロのことは忘れてしまっていました。

さてひと月ほどたってからです。帰宅途中いつも通る地下街のルートから、数メートル外れたところにある古いタバコの専門店で一枚のPOPを見つけました。その時撮影したのが、今日の見出し写真です。

後ろから頭を叩かれた思いをしました。その時に始めてアイコスという存在を知ったのです。そのスマートなマールボロは、なんと!アダプターを付けて吸う電子タバコだったのです。

そうなんです。東北のコンビニで買い求めたあの短いスティックを、このわたしは20本すべてそのままライターで火を付けて吸ったのです。3日間行動を共にした仲間はタバコを吸わない人でしたから一人で喫煙所やホテルで吸っていて、間違いを教えてくれる人に出会ってないわけです。

タバコ屋の1枚のPOPが、俺を笑っている・・・。

この話を職場の仲間に言うと「うそだ!」「20本も吸って気が付かないはずがない!」「どうせネタでしょ!」と帰ってきたのですが、ほんとうなんです。若い頃のマイルドセブンのテスト販売の思い出に引きずられ優越感さえ感じ『短いスティックを吸うのは若者のお洒落なトレンドなんだ』と爺さんは思い込んだのです。

アーリーアダプターと自負していたのに、アダプターにアダプトできず恥をかいた高齢者の悲哀に、お慈悲の💛をいただきたいと思います。

なお先日来 note に綴るこのような話は、お仏壇屋の3ヶ月に一度の朝礼当番で、お経のあとに披露していました。あんたたちそう言うけど「人間は自分はこうだと思い込んでしまったら見えなくなるんだよ、あんたもわからないよ」とうそぶきながらも、納得より嘲笑を誘ったその朝の当番でした。この悲しい話は、自分が選ぶベストスリーに入ると思います。