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17 船のタンクの中の油や水

これも、へえーと思った船に関するお話です。公園の手漕ぎボートにはあてはまらず、海に浮かんでいる船舶のお話です。

海岸から眺めるとたくさん船が航行しています。タンカーは海面ぎりぎりまで沈んで航行し、自動車を輸出するための運搬船は海の上にビルが建っているようなかたちで航行しているのがわかります。

⑨自動車運搬船_写真

その背の高い船について、書きます。その船は重心が高く不安定に見えますが、横に傾くことがあっても転覆することはありません。そのわけは、傾いた際に船の重心と水面下形状の中心(浮心と呼ぶ)が鉛直線上にずれることで、傾いた方向と逆方向の浮力によって傾きを戻すのです。例えば右側に傾けば、右側の水面下の容量が左側より大きくなって右側を上に押し戻すわけです。

ところが以下の問題があります。

タンカーの場合は荷物としての油ですが、自動車運搬船にも自分が走るための燃料油や、乗組員が使う水などが積んであって、それらは船底に設けてあるタンクに入っています。それらの液体は船が傾けば傾いたほうに偏りますので、大きく偏ると今書いた押し戻す力を上回ってしまって転覆することになります。

そうならないためにどうしているかといえば、液体のタンクは船の前後方向に区切られた壁で左右に仕切られているのです。もっとも船体の強度を保つ役割もあるのですが、今回の着眼点は転覆の防止に関わることです。

ということで、このお話はよくお目にかかる次のような現象と似ていると思います。

世界中に感染症が拡がって防止策として、手洗い・うがい・マスクの着用で自衛をする。すると、薬局に消毒液・うがい薬・マスクを求める人が押し寄せます。それがメディアで報じられると雪だるま式に、必要な範囲を超えて買いだめをする風潮になります。そんな時に、お客様一人当たりの購入量を制限してバランスの崩壊を防ぎます。

ほかの例として、何やら批判的な議論が沸き起こった時、同調しないと収まらない風潮が蔓延し必要以上に全体がどちらかに傾いていく場合もあります。そんな時に、コミュニケーションのサイズを小さくして冷静に意見交換していくというのも、解決策の一つではないでしょうか。

船舶の転覆防止としての液体タンクの壁のことを、思い出すのも悪くないと気付くのです。