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33 重いものを担う

高松に住む友人が石の民俗資料館に連れて行ってくれました。この地で産出される庵治石という美しい石が最高の品質であることは知っていました。石の中でもお墓の石は勤務先が販売していて、担当する仲間たちはお寺や霊園の環境、石の種類、デザイン設計などの知識を持ち、ご提案から工程管理をお客様ごとに行う中身の濃い仕事をしていました。この日はさらに上流の作業の山から石を切り出す大変さがわかり、お寺や霊園において長い日数をかけてお墓が仕上がっていくことと合わせると、お客様の手に届くためにかけられる工程の重さを感じ取りました。寿命が尽きた時に納まる場所としてのお墓。ただモノではないといことを確認できました。

枚方墓じまい

わたしはというと間接的な部門が長くお墓の実務は未経験です。というよりお葬式と仏事供養のお客様相談担当は経験したものの、お葬式施行の直接的な実務さえもしていないのです。お墓の石が超絶に重いものを担当する大変さがあるとすれば、お葬式施行の直接的な実務は、ご遺体というとてつもなく大切なものを担当する大変さがあります。もちろん医療機関では患者様の体に大切に接して病気から体を守られますが、お亡くなりになったあとの体は別の意味で尊いものです。重量も決して軽くはありません。お葬儀社の方のお仕事をずーっと傍から見ていた時、まさに尊敬の念を抱きました。寿命が尽きた時に労わっていただくお葬式。ただモノではないといことを確認できました。

枕飾り

お墓のお仕事もお葬式のお仕事も、それに従事する方の大変さは格別のものです。そしてお仏壇について触れさせていただきます。

大きなお仏壇だとふたりで持っても相当の力が必要ですし、細かい細工や金箔を傷つけないように扱う大変さは素人には難しいと思います。でも重さだけでいうと軽量の場合のほうが主流になっているし、細工も細かくなくて金箔が貼ってないほうが主流ですので平均すると物理的にはお墓やお葬式に比べると軽作業なのかもしれません。

ならばということでお仏壇のお仕事を軽く考えてしまうと、それは間違いだと思います。なぜならお仏壇は「いのちの意味」という量れない重さを持つものだからです。ご家庭にお仏壇をお届けしお仏具のお飾りをして、一連の説明をするととお客様がなんとも言えない安心したような表情に変わられることがほとんどなのです。違和感や反感を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、もし実際にご経験いただくとわたしの伝えたいことがお分かりいただけると思います。

準備 (17)

仏壇屋は商人ですので届いあたのはモノに過ぎないかもしれません。先に述べたように、そこにお坊さんが一度お座りになってお経をあげられることで「課せられた場所」の意味合いが加わるという考えもあるかもしれません。しかし仏壇屋という商人自身が「いのちの意味」をしっかり把握していると、お届けしお仏具のお飾りをして行う一連の説明が「課せられた場所」としての準備が整ったことをお客様に予感させることができるのです。

お墓もお葬式もお仏壇に対するひとびとの価値観が変わったということに疑うスキは感じません。しかしそれが流れだからそれに任せて、商人も沿っていけばいいんだという傾向があるとすれば、もったいない、味気ない、寂しいなとわたしは思っています。釈迦という凄い方が世の中のことわりをあきらかにされ、中国を経て海を渡って日本に届き、各宗派の開祖となられる方が聖人とよばれいままで途絶えず続いてきたことを守ろうと、職場のトップは「商人道」と呼んでおられました。

重いものを担うという覚悟が凄かったわけです。そんなただモノではないトップの居られたのが、偶然とはいえ最後の職場だったことが、ほかに替え難いわたしのよろこびです。