50代のこしかけ ‐ 第1話

【第1話】50代でダントツの恐怖


50代で、恐怖に感じることはなんだろうか?

いろいろあるのは間違いない。別に50代でなくても恐怖に感じることはたくさんあって、20代で恐怖に感じることが、50代だと恐怖ではないこともある。

例えば、LINEの既読スルーとか、LINEしたのに何日も返信がないとか。学生時代だとこれが恐怖と感じるのかもしれない。少なくとも事件ニュースなどを見ていると、既読スルーとかグループLINEとかでのあれこれが、事件の始まりだったりすることもある。
これは50代になると、どうでもいいことになったりする、たぶん大半の50代にとっては。友達から返信が何日も来なくても、別にそれで嫌われたかと思うこともないし、あったとしてもその度合いが低かったりする。

私が50代になって一番恐怖に感じていることは、「老い」である。
日々、鏡を見るたび、怖い。だから鏡はなるべく見ないことにしている(笑)
現実逃避である。
何事も目をそらしてはいけない!とよく言うし、もっともだと思うが、こと自分の老いに関しては、目を背けないでいることができない。

この老いに対する恐怖は、40代のときに感じた「ああ、私も年とったな。ここでしっかりお手入れしてリカバリー頑張らなきゃ。少しでも若く見られるために」という、まだまだポジティブフィーリングが残る恐怖ではない。
まったく別次元の恐怖である。

50代になると、どんなにお手入れをしていても、肌がぶよぶよになってくる。「ハリがなくなる」と言われる現象である。これがもう何をしてもどうにもならない、下っていくだけのノーリターン現象に、なすすべがない。

髪の毛だけでなく眉毛にまで白髪が出てくるし、歯も変色を始める。爪も黄ばんできて常にネイルしていないと最低限度の「きれいさ」を保てなくなってくる。

そう、努力をしても、それが40代と同じレベルで報われないのが50代で、「これが老いというものか」と怖くなってくるのである。

これが60代、70代になれば、この恐怖が薄れるのかもしれない、と私は考えている。なぜならば、ある程度は「諦めがつくのではないか」と思うからだ。まだ60代になったことがないのでこれは想像でしかないし、60代以降のみなさま全員が、私の勝手な想像と同じではない。70代でも80代でも恋愛を謳歌して、ダンディーだったりフェロモンが溢れ続けている方も多くいらっしゃる。

しかし、今の現実から将来の自分を想像するに、60代になると恋愛とか性欲とかが、「自分の世界にはもうないもの」にクラスチェンジしていく確率がかなり高い。この事実が恐怖なのである。

そう、気持ちが年齢の進む速度についていかないのだ。

ついこの前まで彼氏だとか、セックスだとか、結婚だとか、いろいろな恋愛にまつわる出来事が自分を取り巻いていたはずなのに、それがいつの間にか自分の生活から消えている上に、じゃあそれを「自分で探しに行こう!」と前向きに歩き出すには自分が納得できる「昔と同じきれいさ」がない。

でも、こんなこと、誰にも相談できない。恥ずかしい。だから「私はもう恋愛とかはいいかな……」なんて気取ってみる。
なのに、心の中は恐怖でいっぱい。「このままオンナとしては終わってしまうのか」と。
「老い」はやっぱり、怖い。怖すぎる。

第2話につづく……


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