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300円のアイス、1000円の握手券付きCD

この記事は、2021年02月04日(木)にアメブロに投稿した記事を転載したものです

僕が小学生だった頃、世間一般的には「不景気」と呼ばれる時代だった。

いわゆるバブル崩壊後の不況で「失われた20年」なんて呼ばれる頃の割と初期のころ。
僕の家は祖父と父が大工をしていて、個人事業主みたいな感じで大きい会社から仕事を貰って生活していた。

もちろんバブル崩壊後の不景気は僕の家にも訪れていて、正直なところ景気のいい話をしたことは子供のころには無かった気がする。

つまり、物心ついた時から、自分の家はそこまで裕福ではないという認識を持っていた。

生活が困窮するというほどではないけれども、固定給ではないから仕事が無いとお金は入ってこない。だからサラリーマンの家庭には無い金銭感覚がはびこっていたのかもしれない。

だからなのか、気づけば僕は子供のころから貧乏性になっていたように思う。


その小学生だった頃、近所に移動販売車のアイスクリーム屋が時々来ていた。
もちろんそれはコンビニで売っているような安い金額のアイスではなく、すごくおいしいというわけではなかったし、当然人件費やら車の燃料費やらもかかるので、それなりのお値段はした。
まあ、言っても300円かそこらだったと思うけども。

僕はそのアイス屋さんでアイスを買ってもらう時、いつも罪悪感と申し訳なさを感じていた。

うちにはそんなにお金があるわけじゃないのに、こんなコンビニでも買えるようなアイスをわざわざ高いお金を払ってまで買う必要があるのだろうか。
コンビニだったら、こんなアイスが3つぐらい買えるんじゃないか。
僕が我慢すれば、親はこんなのにお金を払わなくて済む。

そうすれば別の所にお金を使える。学校で使う僕のシャープペンやノートが買える。
そっちのほうが効果的だ。
貧乏性、とさっきは言ったけれど、物として残るというか、実用性を重視していたのかなとも思う。

だからなのか、今もさほど食に関して無頓着で、そこまで金を出して良いものを食べようと思うことが人より多くない。


そんなことを重ねながら、小学生だった頃の僕の、親と同じような年齢になってきた。
結婚はしていない。世間からしてみれば独身貴族という部類に入るのだろうか。

今、自分だけで生きる分にはお金にさほど困らなくなった。
30代にしてようやく正社員として雇用され、曲がりなりにも社会人というやつになった。


僕は20代後半で、アイドルという趣味に没頭するようになった。
それまでもそれなりに彼女を作ったりしてはいたけれども、アイドルにハマって以来彼女はできたことがない。

まあその辺りは過去の恋愛で色々あったという理由もあるのだけれど、そこは割愛する。

アイドルにハマるというのは、要するに1000円で買ったCDに握手券がついてきて好きなアイドルと10秒喋れるとか、地下アイドルであれば1000円で2ショットチェキを撮って1分間喋れるとかいう、そういう類のことを楽しむやつだ。

もちろんライブも楽しいけど、そういった接触があるかないかでバンドとかのライブ通いとは一線を画すと思う。


1000円でCDは残る。

1000円でチェキは残る。

ただ、それを形に残るものかと言われると疑問がある。
それは、アイドルとの思い出を作るために財布から出したお金だからだ。
(チェキは割と思い出の品だけど、メインかと言われるとそうではないだろう)

CDをどれだけ買ったかよく覚えていないし、チェキも結構チェキ帳に綺麗に保管してある。
総額にしてみると、それなりの金額になるのだろう。
もちろん、カウントなどしたことがない。

ただ、結果的にそれらの物を買ったという認識は、持っていない。
言ってしまえば、形の無い「思い出」を金を出して買ったのだろう。


小学校の頃に300円のアイスをケチってた僕が、形の無いものに対して比べ物にならないくらいの額を投じている。
これは矛盾なのだろうか。成長なのだろうか。それとも変化なのだろうか。


僕が金を使うということに対して思っているのは、
「その投資に見合うだけの見返りを自分が見つけられるかどうか」
という、ある意味普遍的なことなのかもしれない。

僕は今でも、アイスに対して300円を払う価値があると思うことは少ない。ただ、ハーゲンダッツはおいしいし金銭を投じる価値があるとは思う。

アイドルに対して1000円を払って短い時間話すということについて、僕は金銭を投じる価値があると思っている。

それは巡り巡ってアイドルへ幾ばくかのバックもあるだろうし、僕は自身の「思い出作り」に対しても投じているのだろうと思う。

それは過去、10代の頃があまり楽しくなかった反動なのかもしれない。
アイドルにハマってアイドルと話して、ライブに通ううちにオタク友達ができて、色々な思い出ができた。

そんな20代後半~30代前半というのは、人生で一番楽しい時間だったと言える自信がある。
そして今でもその頃に知り合ったオタクと酒を酌み交わしたり出かけたりしている。それも財産だと思う。

「実際、人生を豊かにするのは趣味だ」

最近見たアニメの登場人物がそう言っていた。その通りだと思う。
もちろんアイスを食べて人生を豊かにする人もいるだろう。
それはそれでいいんだ。


おそらく、小学生の頃の僕は「金銭を投じること」そのものを嫌悪するきらいがあったと思う。
しかし今の僕は、そうは思わない。お金は出したいところに出すべきなのだ。
そして、そのお金はまた巡る。巡り巡って僕の所へ戻ってくる。

「金は天下の回りもの」、使わなければ意味がない。
だからこそ、どこに使うのかが問題だし、それは個人によって異なる。


節約そのものを目的にしてしまう人生は、きっと面白くない。
何かを削ったら、別の何かに投資する。それこそが人生を楽しむのに必要なのだと思う。

こんなことを書いてると、家庭を持って日々の暮らしに奮闘している皆さんに少し申し訳ない気もするけどね。
そんな生き方もありってことで。

「Sayaca」はDIYです

まあ実際、今アイドルを追いかけてて額面的に一番投資している先はJR東海とJR西日本なんですけどね!
EX予約優勝!

(了)


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