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なうローディング

前書き

 もしかしたら後に書く他の記事へ統合するかもしれません。
 この記事では長時間のスポーツを行う際に事前準備として行う各種ローディングを記しています。
 記している内容は筆者が学んだ2010年当時のものですが、最新の文書とも矛盾しないことを確認しています。

 書いておこうと思ったきっかけは、本記事を執筆している今日現在、レジェンドとまで言われる某スポーツ選手がシェフ姿で鍋を振ったり「満足度、たけぇー!!」と叫んだりするCMを流している、スポーツ選手育成ゲームに『グリコーゲンローディング』という言葉が出たためです。



ローディングとは

 ローディングとはLoad(積み込む、装填する)の名詞形です。
 スポーツ、またはスポーツ医学用語では、運動中に必要になる栄養素などを事前に体へ取り込んでおくという栄養補給法を指します。

 これは、スポーツ中に栄養等の補給が困難であることから必要とされ、人体がある程度は体内に栄養素等を保管しておける仕組みを持っていることを利用して考案されました。

ローディングの仕組み

 スポーツの最中や直前に水を飲んだり食べ物を摂ったりすると、右のわき腹がよじれるように痛んだ経験がありますでしょうか。
 ウォーミングアップが不十分で横隔膜が痙攣ないし引きつってしまい痛むケースもありますが、消化管が活動している状態で運動を始めると胆嚢近辺が収縮して痛む場合もあります。どちらにせよ消化管が動くことで体がリラックスモードに入る(副交感神経が優位になる)ことでより酷い症状が出てくるので、運動の最中ないし直前での飲食は避けたいのです。
 そこで順天堂大学の高岡郁夫氏(当時助教授)が提唱したのがウォーターローディングでした。2024年現在では水以外の運動中に消費される体内成分もローディングする手法が述べられています。
 前日やそれ以前から摂取する各成分を増やすことで、一時的に体内へ必要成分を貯蓄しておく、という方法です。特にマラソンやトライアスロンなど長距離走の選手から取り入れていき、サッカーやテニスなどの選手にも広がっていきました。
 各成分の必要量は競技によって、保存可能量は個人によって異なるので、バッチリ体を管理するスポーツ選手ならば自分の体で実験しつつベストなバランスを確かめる必要があります。

 酷暑な近年、熱中症対策として「喉が渇いていなくても水を飲んでおいてね」と呼びかけられるようになっていますが、これも水分の事前補給、すなわちウォーターローディングの1種です。


ウォーターローディング

 これからのシーズン、日本に住む一般の方にも重要な水分補給ですが、この方法を知っていると多少ですが予防効果が見込めます。

 前提として、人間の体は水分やエネルギーを消費して活動しています。これを代謝と呼び、特別に運動などしなくても起こるこれらの消費を基礎代謝と言います。
 人間の体は自身を健康に保とうとする働きがあるため、体内で過剰になった成分は代謝の一環として体外へ排出されます。寝る前に水分を摂りすぎると翌朝の排尿が多くなったり、幼い子であれば睡眠中に漏らしてしまうという現象も、この一環です。
 したがって、体内に水分を蓄えるには、体が「これは要らない水分だ!」と認識しないように上手く騙す必要があります。どうするかと言うと、本番の数日~1週間前から、少しずつ摂取する水分量を増やしていくのです。きちんと体を調整していけば、前日晩に300mLほどの水を摂取しても翌朝の排水量は普段とあまり変わらないくらいまで慣らすことができます。この時点で、通常時より+300mLの水分を体内に蓄えていることになります。

 こうして事前に水分を蓄えておく手法はスポーツの際に大いに役立ちますが、その他のシチュエーションでも我々を助けてくれます。
 まずは多くの汗をかくシチュエーション。夏の暑い日の熱中症予防や、力仕事をする際。また水分摂取の量を減らしたい、トイレの時間が限られる長時間移動もそうですし、体内の水分を消費するアルコールを多く摂取する歓送迎・忘新年会シーズンなどにも助けてくれます。

 2020年前後で美容のために水を飲みましょう、といった言説が流行しました。私には美容面は分かりませんが、体のコンディションを保ちやすくなるのは確かなので、水分摂取量を増やす生活はおススメです。


いろんなローディング

 さて水分の貯蓄がメジャーになってきてから、他の成分・栄養素についても事前補給、すなわちローディングする考え方が出てきました。

 ひとつの大きな要素はミネラル分です。
 発汗により水分とともに失われるナトリウム分およびカリウム分は、神経伝達に使用される重要なミネラルであり、流出しすぎて体内のバランスが崩れることで競技の続行が不可能となる痙攣や攣りを引き起こします。これは体内のナトリウム:カリウム比が2:1程度であるのに対し、発汗により流出するナトリウム:カリウム比がほぼ1:1であるため、大量の発汗により神経伝達に必要なナトリウム:カリウム比を保てなくなって引き起こされます。
 ナトリウム分は食塩などにより比較的手軽に補給できますが、カリウムを補給できる食べ物はナトリウムと比較すると限られます。これを踏まえて、運動中の水分補給用飲料にカリウムを入れる飲料メーカーも登場していますが、事前にカリウムを多く含む食事を摂ることが2010年頃から推奨されています。味噌、海藻、フルーツなどがカリウム補給に優秀で、豆腐とアオサの味噌汁、葉物野菜の昆布和えなど、和食+オレンジやグレープフルーツなどの果物を朝食で摂り、日中に塩タブレットなどでナトリウムを補うとバランスが取りやすいでしょう。
 また、カリウム補給の重要性を知らしめた動画として、野球選手の川崎宗則選手のインタビュー動画(当時2014年でMLBのブルージェイズに所属)が有名です。この時期から、運動前の糖分とカリウム用の補食としてバナナを推奨するトレーナーやスポーツチームが増えています。

 ローディングで注目されるもうひとつの大きな要素はエネルギー源です。カーボローディングと言われており、特に最小の糖質の名を指してグリコーゲンローディングと呼ばれるものもあります。
 エネルギーを消費する際、人は血中の有機成分から優先して消費し、それが尽きると体組織を分解して燃やし始めます。減量目的のダイエットならばこの現象を狙うのですが、アスリートにとってはせっかく鍛えて身に着けた筋肉が分解されてしまってはたまりません。特に試合間隔の狭い大会中などは成績に直結してしまいます。そこで、事前にエネルギーとなる食物を摂取しておくことで運動後の減量を抑制しよう、という考えが生まれました。
 長距離走やサッカーの現場で効果があると公開された例として、運動の30分~1時間前にバナナと米を摂取することで、それぞれの消化・吸収速度の差から筋肉の分解を防いで運動できるとされています。

 カーボローディングは、激しい運動の当日だけでなく、体づくりの面からも日常的に有用であるというのが有力な説です。個人差も大きい部分なので言い切ることはできませんが、運動前や運動中に糖分を摂取することで減量しにくくなる傾向があります。睡眠前の栄養摂取が吸収されやすい傾向があることも踏まえ、減量目的の運動の際は逆に気をつけたいところですね。


まとめ

 消費する水分や栄養素を事前かつ一時的に体へ蓄えておくことをローディングと言い、特に水分の貯蔵『ウォーターローディング』は熱中症対策など日常的にも有用です。
 暑い季節の屋外イベントを中心に、年々威力を増す令和の熱波へ対抗するためにも、就寝前の水分補給をするなど熱中症対策を施しましょう。

 この記事が少しでも読んだ方の健康に寄与できれば幸いです。

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