『木星のワイングラス』誕生まで。
2022/09/02-09/04 『木星のワイングラス』@シアターウィング
無事に終演致しました。
この作品は私が大学生の頃から『あの曲と私』をテーマに公演をしたい。と温めていた企画です。
『あの曲と私』は私自身にとって辛かった時、頑張らないといけなかった時、人生の分岐点などで、いつも聞いてた曲の歌詞や誕生秘話と自分のエピソードを織り交ぜて作品にするという試みでした。
私という人間はなかなか想いや愛情を言葉にしても伝わらなかったり、意味わからないと言われたり。
そんな私の通訳をしてくれるのがたくさんの『あの曲』たちでした。
思いが上手く伝わらない時、友人に、恋人に、仲間に、私の想いを歌にしてくれてる(ようだと私が感じる)アーティストさんの楽曲の歌詞を送り付けたりなどする青春が私にはありました。
誰にでも馴染みやすいエンターテインメントの性質を持った楽曲が私と誰かの心の橋渡しをしてくれていたのです。
それを今度は大好きなあの人に。と。
『あの人とあの曲。』でやったのがこの企画です。
少し話は逸れますが……
演劇は他のどの媒体より深く役にのめり込める演技媒体であり、観客にもストレートに伝わりやすい演技媒体だと私は思っています。
そして逆に1番拡散しにくい媒体でもあると思うのです。
そしてそのことはデメリットとして扱われがちですが、心と心で芸術を紡ごうという私のやりたいことを考えたらこの上ない強みだったりもします。
だからこそ演劇を通じて自分の経験が作品になるといういわゆる演じる人のための、創る人のための『オーダーメイド演劇』をやってみようとなったわけです。
お金の回り方、という側面では課題も多いテーマですけれど、芸術は見る人のためにあるべきでは無いと思ってたりもします。
(あ、エンターテインメントは見る人のためにあるべきだと思いますけど。)
この作品の稽古で観客のため、伝えるためという指示を全くしなかったわけではありませんが、それは全てあくまでも観客に伝わらなければ役者のためにもならない。だからここは伝わってくれないと困る。という意図でしかなかったりもしたわけです。
観客からの共感を得られることが役者にとってどれだけ尊いことか……。
まあ私のお客様へ向かう態度には賛否あるのは承知ですが。
制作の倉橋はお客様に結構真摯な方である反面、劇作の倉橋は中々お客様に無礼な節が多々ありますね……。
それはともかく、その『観客からの共感』のために今作ではメイン楽曲2曲とは別に幅広いアーティストから14曲のインスピレーションをお借りして彩り鮮やかに、そして幅広い足がかりを作りました。
さらに今回の執筆秘話として……最初から心に決めていたのが『全員がメインキャスト、全員に当て書きの脚本を書く。』ということでした。
だから誰の視点からでも物語を追えるように。
全員が主人公的に役を深められるように。
そして他の主人公に思いを馳せられるように。
そんなことを意識して描きました。
ストーリーテラーさんの元々のエピソードがある上でここまでフィクションを織り交ぜていいのか。という問題もありますが、
本質を力強く残したまま、よりそのエピソードを鮮明に脚本に映し出すこと、それを役者が立体化すること。
このことがストーリーテラーさんに『共感される経験』『俯瞰的視点』『新しく美しい世界』を生み出してくれると信じたから。
今回はこんな作り方をしました。
それが実際にどう作用したのか。
12日にインタビューが行われます。
そこで何が語られるのか、楽しみで仕方ありません。
心理学や対人援助学としてどうなのか?は分かりませんが、きっとこの修論は論文でありながらアーティスティックな記録になるのでしょう。
芸術の力を実感したことの無い人達に実感を持たせられる記録を残したい。
それが文体が変われど文章の人として戦い続ける私の今のモチベーションです。