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自分にヨーロッパ移住は無理かもと思った話

11歳ぐらいのころ、初めてハリーポッターに出会った時の衝撃で、自分はずっと将来イギリス人と結婚してイギリスに住むんだと夢見てやまなかった。
聞く音楽や映画、本はほぼ全部欧米のだったし、大学は英文学科に入った。
ただ、イギリス人と結婚したけどイギリスには移住できなかったことだけずっと心残りだった。ワーホリもコロナでざわざわしている間に使える年齢を過ぎてしまい、今に至る。
イギリスに住めなくても、どうしてもヨーロッパに住みたくて、今回現職に転職して2年経ったのでワケーションをしながら、海外移住本当にしたいのかお試ししてみることにした(私の会社は外国籍の人が多いので、割とワケーションしやすい)。ちなみに長期の海外経験はこれまでもあまりなくて、大学時代に一か月イギリスのケンブリッジに留学しただけ。今回は長年行ってみたかったチェコに滞在することにした。ただ、長期で海外に居た時の感覚はすでに10年前のことなのでだいぶ忘れており、30代になって長期で海外に住む感覚を改めて味わったので、色々感想と思ったことを書いてみる。

インフラ

アメリカはよくわからないけど、ヨーロッパは全体的にインフラが弱め。特に水回り。水圧がめちゃ弱いので、シャワーもちょろちょろとしか出ない。建物は古いからしょっちゅう雨漏りもする。
日本みたいに水資源が豊富でもないので、水は使い放題でもないし、熱いお湯はタンクに貯めたものから出てくるので、すぐに冷たい水になってしまう…
そして極めつけは硬水なので、慣れてないとおなかを壊すし、髪はギシギシになる。頑張っても髪がサラサラにならないのはちょっと萎える。

食べ物

基本重い。まずいとは言わないけど、日本みたいな繊細な味とかないので、基本ソースも重くて、肉料理がメイン。海鮮がおいしい国や地域も限られている。いまいるチェコは内陸なので、魚といえば養殖の鯉らしいけど、日本で泳いでいる鯉を見ておいしそうだと思った試しがない。
揚げ物も多い。
ただ、肉と乳製品は日本と比べると濃厚でとても美味しい。私は両方とも食べ過ぎると胃もたれする人間なので、これらが美味しくてもそんなに嬉しくはないのは残念。
それから、日本を離れてから気が付くのが、日本人にとって、食がいかに重要かっていうこと。確か日本人が幸せだと感じる行為に関して、食事がトップ3に入っていて、欧米だと食事はトップ3なんかには入らない。正直私はストレス解消を美味しい料理を食べることで満足しているので、外食でまずい物しか食べられなくて高いような欧米に移住するのは、大分ストレスフルだなと感じた(逆に東南アジアだと外食は美味しくて安くて最高なんだろうけど)
ただ、まずいイギリス飯に慣れている私の夫も日本に数年住んでからは、食べ物がどれだけ生活を幸福にしてくれるのか身に染みている模様。

細かい生活の便利度

日本と欧米の価値観の違いで大きいのは、なぜか日本人は日々の細かい不便さを物やサービスでなんとか埋めようとすることだ。痒い所に手が届くサービスだったり物は、まずアメリカとかヨーロッパだとなくて、この不便さに慣れる必要がある。それに、日本だとダイソーでも結構良いクオリティの物がすぐに手に入るけど、イギリスでいう1ポンドショップにそんな高クオリティの何かが売っているのを見たことはない…
なんで日本人がそういった「便利さ」に異様にこだわるのか、なぜ欧米の文化だとこの不便さに慣れる必要がある(そこにビジネスの可能性はないんだろうか…)。この不便さは、正直「諦め」の境地に至る必要もあって、多少不便な生活に「人生とはこういうものである」というような価値観があるような気もする。(夫曰く、便利とか質が良いとかより、質が低いけどまあ使える程度のものの方が資本主義としては金が稼げるし、消費者もそういった質の良い便利なものにお金を払おうとも思っていない、らしい。)

楽しみがない、トイレが汚い、街にごみ、落書きが多い

さすがにロンドンやNY、パリなどの大都市にいけば話は別だけど、基本的に東京にはなんでもある。そして、東京に住む生活費などはほかの欧米に比べたら桁違いに安い(最近はさすがにインフレで高くなってるけどそれでも)。チェコは比較的物価が安いと聞いていたけど、食べ物も聞いていたほど安くないし、プラハの家賃は東京より高い。
都市を出たら、どこの国行ってもまあ不便だけど、都市でも規模によっては東京みたいに毎日イベントが開催されていて、お店も遅くまで開いていて、ありとあらゆるものに関するお店があり、そして公衆トイレが無料で安い国はいったいどこにあるというんだろうか…
プラハの公共トイレは一回20kcぐらい取られる。これはヨーロッパは大体どこもそんな感じだけど、だからなのかお金がないホームレスの人や、小銭がなかった人なのか、たまに駅や街なかが明らかにおしっこの匂いがする。
ついでに水圧弱いので、トイレが流れていないこともしばしば。。
街中はごみや落書き、ガムで汚い。日本に住んでて、まあごみで汚いところもあるにはあるけど、ここまでではなかった。
チェコは治安の良さと反比例して(?)落書きがめっちゃ多い。それこそ歴史ある大事な建築物とかにも落書きされているし、チェコ国鉄の電車のトイレの社内や、そこそこお金がありそうな住宅街の壁も落書きまみれなのには最初ものすごくびっくりした。
そういえば昔訪れたオランダのアムステルダムの街中の匂いが割とつらかった。街中に流れている川が汚いのか、街が汚いのかわからないけど、街全体が鳥の糞みたいな匂いで充満していたのに最初はめちゃくちゃびっくりした。写真のイメージと違いすぎる…

治安が悪い

日本にいると忘れがちなのがこれ。チェコは結構安全な方だけど、それでも電車や街中でホームレスの人がお金をせびってくるし、変な人もいっぱいいる。スリや置き引きに気を付けるのはもちろんだけど、犯罪に巻き込まれないように、外を歩くときは常に気を張っていないといけないのは結構つらい。つまりちょっとでも体調が悪かったら外に出られない。
夜は女性なら特に一人で出歩かないほうが良いし、夜遊びも東京の感覚では気軽に出来ない。

光熱費の高さ

ウクライナとロシアの戦争が始まってからこれはさらに悪化している。日本でも原子力発電を止めようという動きがあったけど、原子力発電というのは一回止めると再開するのは相当難しく、原子力発電から切り替えたドイツが結局ロシアからエネルギー依存していることで結構ほかの国から相当叩かれているのはよく知られている話。
日本でも寒い北海道なんかは光熱費がバカ高いというのは有名な話だけど、年がら年中寒いヨーロッパでは、光熱費が高くなりがち。

教育費

日本では保育園や幼稚園の先生の給料はめちゃくちゃ低いことで悪評だけど、それでも親の立場としてはこれらの教育費はまだ欧米と比べてかなり安い、というのはあまり知られていない。アメリカは知らないが、ヨーロッパは基本子供が中高ぐらいになるまで親が行き帰りに付き添いしないといけない(危ないから)し、イギリスの保育園は世界でトップレベルぐらいに高いらしい。日本と同じで共働きしないと家計的にやっていけない家族がほとんどなのに、誰が子供の送り迎えまでしながら働けるというのだ?ということで、少子化のスピードは実はヨーロッパの方がひどいんじゃないかと思う。(イタリアは最近出生率の低下が著しくて問題になっている)
イギリスでは昔はイギリス国民は大学が無料だった時期があるが、今はほかの国の生徒と同じレベルの学費を払わないといけないので(といいつつ、さすがにイギリス国民額、それ以外、で多分学費は違うと思うが)、大体みんな国に奨学金を借りている。自分の感覚でいえば、例えば私立でも日本なら150万/年ぐらい出せば大学に行けるが、イギリスだとオンライン大学でもこの金額余裕でかかったりする。日本も2024年から一部大学無料化が始まるらしいが、個人的にはイギリスみたくすぐ終わるんじゃないかと思っている。

それに、日本の教育は結構レベルが高い。日本の教育方針は多分平均的な生徒のレベルに合わせて作られていて、おそらくだけど欧米は低い方のレベルに合わせて作られている、と思う。もちろんその中ですごく勉強ができる人たちは、ギフテッド教育が受けられるのかもしれないが、勉強ができる人とできない人のレベルの開きが相当激しくて、イギリスだと中高でドロップアウトする人も多くて読み書きが出来ないという人も一定数いるようだ。
日本は全員が中産階級、というようなことを言われていたけど、頭のレベルも割とみんなが平均レベルで高い、ということは結構思っていることではある。
わざわざ移住した国で、日本より低いレベルの教育を子供にさせたくはない気がする…

貧富の差が激しい

日本はやっぱりまだそれなりに多くの家庭が中産階級で、そこそこ好きなことに使えるお金があると思う。中高生がiPhone持っていたり、カフェに行ったり、好きな服を買ったり。
ただ、資本主義が行き過ぎた欧米の世界だと貧富の差が激しすぎる。さっき述べた読み書きが出来ない子が結構いる、と言ったが、その日食べるものに苦しんでいるという家庭も割とある、とイギリスのニュースで読んだ。いつの時代なの?アフリカなの?と思ってしまったけど、それが現実らしいのだ…
別に自分の生活に直接的に影響はないかもしれないけど、そういった人にやさしくない国に自分は果たして住みたかったのか?

ヨーロッパという文化がそのうち消えるかも

イギリスといえばロンドン、フランスと言えばパリ、とかヨーロッパと聞いて思いつくカルチャーが、この5年ぐらいで消えつつあるというのをこちらの動画で見た。

これはシリア戦争あたりから始まった、移民の大移動によるものが大きくて、ドイツは無尽蔵に難民を受け入れることにしたことで、ほかのヨーロッパも同様に絶え間なくやってくる移民が、自国のカルチャーになじむこともなく、そこに自分たちの国のカルチャーを広げていくことで、ヨーロッパのカルチャーが消えていっているらしい。自分が住みたかったのは、綺麗な街並みに代表されるキラキラしたヨーロッパであって、いろんな人種、カルチャーが混ざり合った都市ではなかったはず…それだったら東京でよかったのでは?
実際にロンドンにイギリス人はいないといわれるほど、ロンドンは国際都市化していて、一部の地域はインドのヒンディー語で町名が書かれ、人々はヒンディー語しか話さなかったりする。一応地域的にロンドンはイングランドみたいだけど、ロンドンに移住した人やロンドンで生まれ育った人はイングランド人(English)ではなく、英国民(British)と呼んでいたりする。
数年前にモンティ・パイソンの作者で有名なジョン・クリースが、ロンドンはイングランドじゃない(ロンドンは国際都市である、みたいな)、というようなツイートをしたところ、ロンドン市長でパキスタン系イギリス人のサディク・カーン達から差別的だと批判された話があった。(ちなみにサディク・カーン氏はイスラム教徒)

この流れについて書くと終わりがないので、気になる方は↓の本を読んでみてほしい。



まとめ

色々書いたけど、やっぱり街並みは大事とはいえ、キラキラした海外生活へのあこがれだけでヨーロッパに移住するのは違うなと思った。
実をいうと、ここに書いたことは頭で分かってはいて、自分の思い描いたヨーロッパと現実のギャップについては、前々からイギリス人の夫に聞かされてはいたけど、あまり実感できてはいなかった。
そして、極めつけは20代の頃より、新しいものや体験にスリルを感じて楽しいと思うよりも、日々の生活がスムーズで何不自由ないということの方が自分にとっては大事なんじゃないかと思い始めたのが大きい。きれいな街並みも、面白い文化も最初は楽しいかもしれないけど、それに飽きたら一体何を目的にそこで生活していけばよいのか思いつかない。
自分の場合は、移住するとしたら自分と夫、両者にとってなじみのない場所に移住することになるので、勝手がわからない国に住んで一から生活基盤を築くことの大変さを想像するだけでもちょっと辛い。
ヨーロッパに移住することは小さい頃からの夢だったので、こうした理由で諦めるのはだいぶ悲しかったりもするのだが、価値観も人生経験や年代で変わっていくので仕方ないことなのかもしれない。
とりあえず、今後日本に帰ったら、なるべくヨーロッパはお金をためて旅行で行くだけにして、日本での生活を精一杯楽しむようにしたいと思っている。

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