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レムデシビルが欧州でも《有望な治療薬》認定 しかし現場は慎重

EUの政策執行機関である欧州委員会は、レムデシビルについて、最初の対コロナ治療薬としての予備承認を発表した。

レムデシビルそのものは、エボラ出血熱向け治療薬として開発されたものであったが、欧州委員会としては承認を出していなかった。

欧州医薬品庁(EMA)は、

かなり早い段階でレムデシビルの可能性について言及していたが、ここへ来て更に積極的な立場を採ることを、EUの政策として明言した、と見ていいだろう。

これにより、通常なら2ヶ月かかる承認プロセスが短縮され、加盟各国の医療現場にいち早く供給可能となる体制作りが急がれることになる。

ただし認可そのものはあくまでも年内、とされ、それまでに安全性の確認作業、つまり、投与による治療的メリットと副作用というデメリットを比較検討し、メリットの優位性が立証される必要がある。

レムデシビルは抗ウイルス剤であるので、予防的に用いることは出来ず、対症治療薬である。SARS、MERS、エボラへの治療薬として既に治験が行われたという。
例えばアメリカでは、COVID19重症患者1063人につき、被投与患者はそうでない患者に比べて4〜5日早く退院が可能となり、プラセボ投与患者よりも31%早く治癒した、という報告がある。
比較的軽症な罹患者についてのデータはまだない。

ベルギー国内でも、重症患者への投与は既に実績がある。
が、製造者からの納品数についても、既にかなり制限がかけられているとも言う。

コルトレイク(Kortrijk)のフルーニンゲ(Groeninge)総合病院の医師、ストッフェル・ラモーテ(Stoffel Lamote)氏は、

ベルギー国内でレムデシビルにより治癒したケースは1件のみ。なのでこれだけで「有望な治療薬」とするのは少々急ぎ過ぎだ。正直なところ、レムでシビルが我々の望む《奇跡の薬》ではないだろう、という印象の方が強い。

と、フランダース国営放送VRTのインタビューに答えている。

上記のアメリカ事例1063件についての論文は、既に5月27日の時点で日本語YouTubeできっちりと解説されていた。すごい!

今回の欧州委員会の方針表明についても、判断根拠となった研究は↑で解説されているのと同じ論文であるから、

今回の報道、つまり欧州委員会が当該薬品を急ぎ予備承認することになった、ということの背景にあるのは、

製造元のGilead Sciences社が、製品をほぼ残らずアメリカのみに納品することが明らかになったため、

治療薬として有効なら、アメリカ一国で独占というのは倫理的にどうよ?という政治的倫理的プレッシャーを掛けないとだよねこれは、

…という政治判断が働いたと見るべきだろう。

日本では、レムデシビル自前開発出来てたんだろうか?ギリアドから売ってもらえる組に、入る根回しは出来てるんだろうか?

ベルギーでは6月17日の時点で、「リューマチ治療薬デキサメタゾンがコロナにも有効かも?!」というので浮足立ったという前例もあり、

何で浮足立つかというと、ベルギー国内にはワクチン大手GSKや、

以前も書いたヤンセン・ファーマ

などが拠点を構えているため、その業績やら株価やらがGDPに、たぶん直結するからなのかなと思ったりもする。

治療薬と予防薬の開発せめぎ合い。そっちの現場は、世界各国でどんな状況なんだろうかな。


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