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HALATION歌詞制作秘話②

2024年1月4日 虹、そしてハレーション

前日の夜に、お風呂で「桟橋」と言うキーワードをつかんだ。
だが、「桟橋」以上の言葉がなかなかつかまらない。
この時点で、
「前回は1日で書けてしまったが、今回は3日欲しい」
と言うつもりだった。

朝、作業開始したが、前回ほど思うようには進まなかった。

この物語の主人公は何を目的とするのだ。
第一、桟橋から飛び出して、どこ行くのだ。
そもそも、その桟橋までどうやって行くのだ。
魔法使いの少女? 
いやいやいやだあやめてやめて、安易すぎて怖い!

軽いパニック状態に陥りそうになり、私は立ち上がった。
奥の手を出すしかない。
私にとっての奥の手。
それは宮沢賢治である。

私は、困った時は宮沢賢治を手に取る。
普段は使っていない脳だか魂だか、
とにかく、創作に必要などこかが刺激されるのだ。
以前はいつも手の届くところに宮沢賢治の文庫本を置いていたものだ。
私のオリジナル曲「RIVER」も、賢治を読んでいてひらめいた。
何の作品を読んでいたかは忘れてしまったが。

何しろ書かなくなって久しい。
どこかにあるはずだが、本を探す時間が惜しくて、
今回は、動画投稿サイトに公開されている朗読家の音声を聞くことにした。

いくつかの物語の中で、私は「めくらぶどうと虹」に反応した。
この物語はずっと昔から知っているのだが、涙が溢れてきた。

めくらぶどうが虹に捧げる、かなしくはげしい敬いの思い。
虹が語る、儚さと永遠。

短い物語に凝縮された、圧倒的に尊い世界観と精神性。
その前に私はひれ伏し、しばし涙を流し、動画をストップ。
ため息をつきながら、

はー、これで書けるわあー。

と、まあまあ大きな声で独り言を言ったのを覚えている。
この涙は良い涙だ。
心のつまらないゴミを洗い流してくれる。

そうだ、虹がいい。
虹に導いてもらおう。
この曲の主人公は、他の人が見ればただの虹の中に、魔法の予感を確実にキャッチしたのだ。
私も、この物語をずっと前から知っているのに、初めて泣いた。
それは、何かの準備が整った合図なのかもしれない。

私は音楽に言葉を入れるための具体的な作業にとりかかった。

曲を聴きながら、音の上がり下がりと合うイントネーションの言葉を、適当にはめていく。
後で入れ替えていくので、この時点では文章としてはデタラメでいい。

しかし、このデタラメの中にヒントがあった。
適当に当てはめた
「世界のあちらとこちらで」
というフレーズである。

あちらとこちら。
「あなた」と「私」。
一瞬で邂逅してスパークするようなイメージが生まれた。
「世界」を「宇宙」に変えてみた。

そして鍵となるのは、サビのラストの部分だ。
決め台詞的なワードをとメロディーが要求してくる。
スパークではだめだ。
音数が合わない。
いや合わなくはないが絶対に違う。
何かほかに、光を放つような言葉がないだろうか。

そこでついに、あのワードに行き着く。

歌ってみた。 

ハレーショーーーーーン!!

これだ!!

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難産のような安産のような。

一番が書き上がったのは、午前11時過ぎだった。

Yonnyは、
「ファンタジー系のワールドセンス抜群だね!このまま続けて」
ほっとする間もなく、最終的な録音に関する指示とコーラスの内容指定がなされた。
私は平静を装ったが、歌詞のことで頭がいっぱいで、「ちょ、マテヨ」と内心思った。

2番は、一度イメージしたものを丸ごとボツにして再考したりして、やや苦労した。
だが、考え直して良かった。2番の歌詞はとても気に入っている。

結果的に歌詞完成は15時ぐらい。
Melodie of Shadowsよりは時間がかかった。

とはいえ、出産に例えるなら、
ひとりめの子は、大変だったけど、すぐ生まれちゃった。
ふたりめの子は、前より陣痛が長かった。
しかし人々には「長くないよ、短い方だよ」と言われる時間数だった。
という感じだろうか。 
結果的には、1日でできたのだから。

無事生まれてほっとする間もなく、
「今日中にメインボーカルが欲しい」
すぐ仮歌制作に着手するつもりらしい。

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ハレーションはマイナスのワード?

タイトルは結果的に「HALATION」になったが、実は最初、
「超新星ハレーション」
にしていた。
これもなかなかアニメっぽいのではないかと思うのだが、
Yonnyに判断をまかせた。

ハレーションという言葉はマイナスのイメージで使われることが多い。
人間関係において「ハレーションを起こす」という表現をすることもあるが、これは明らかにマイナスのイメージだ。
元々は映像や写真の分野で使われる用語で、明るい領域と暗い領域の境界部分で光が広がる現象を表す。
これが、失敗となることもあれば、光の拡散による演出になることもある。

今回は、意図的に光の演出として使用した。
ということをタイトルで表そうとした。
が、そんなの書かなくてもわかるという話。

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裏テーマ

表向きはファンタジーだが、
これは空想上のキャラクターの話でありながら、私たちの話でもある。

普段の生活をしていては絶対に会えない人たちと、
発達した通信技術を使って出会い、交流し、
人生のパートナーを見つける人もいれば、
コラボレーションをして素晴らしい作品を生み出す人々もいる。

出会いは偶然かもしれない。
しかし、出会ってしまえば一瞬で、昨日までの自分と大きく変わることもある。

次回、HALATION完結編

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