見出し画像

王国に対する反骨心。 2022.09.10 清水エスパルスvs湘南ベルマーレ マッチプレビュー

■メンバー情報

予想スタメンと立ち位置
各ポジションの噛み合わせ。
清水はSB、湘南は中盤に浮く選手が出る。

・湘南
新加入のミケル・アグはチーム合流がまだのため、出場なしの見込み。
・清水
鈴木唯、山原が復帰の模様。先週の広島戦で途中出場を果たしている。

 湘南は3連戦の3試合目。先日の横浜F・マリノス戦から中二日のゲームとなる。清水は先週末から一週間空いての試合。
 お互いに出場停止の選手はなし。清水は広島戦と同じメンバー、湘南は前の試合で出場時間の短かった選手を中心に入れ替え。前線で唯一マリノス戦をフル出場している瀬川を外し、大橋を入れた。

■非保持の狙い

幅と斜めを使った攻撃
 清水の保持は基本的に幅を使う。ビルドアップでは2ボランチの白崎がSBの位置に降りて、原を押し上げてピカチュウを高い位置に置く。ピカチュウはスピードをいかしてDFラインを押し下げる役割を担い、逆サイドのSBとSHは幅を確保する。逆サイドのSBが内側に入らないのは川崎、マリノスと異なる点だ。2試合前の京都戦ではあまり見られず、続く広島戦で見せた組み立ての形であったため、ハイプレス対策として新たに取り組み始めたパターンかもしれない。ちなみに京都戦では立田が根性のドリブルで何度も右サイドまでボールを運んでいた。

右サイドのビルドアップ

 自陣ビルドアップの段階では外側を通って前進。ミドルサードまで持ち運べたら、サンタナに斜めのボールを当てて攻撃のスイッチを入れる。カルリーニョスはそのボールに連動してサンタナにパスコースを作り、サンタナは身体の強さと足元の上手さでチームを押し上げる時間を確保する。ここから先は主に2パターンで、「素早く右サイドで攻め切る」か「時間をかけて人を集めて左サイドで仕留める」のどちらかになる。前者は広島戦で塩谷の退場、後者は京都戦の決勝ゴールに繋がっている。湘南としてとくに警戒すべきは前者の方で、浅いラインの裏をスピードが優れたアタッカーに突かれて失点、あるいはDOGSOで退場は絶対に避けなければならない。後者のような展開に持ち込めれば、人が余る5バックの利点とスライドの速さで守り切る確率を上げられる。
 左サイドは早い段階で乾にボールを預け、足元の技術で局面を打開する。サンタナを経由する点は右サイドと同じものの、乾の技術と片山のランニング、松岡のサポートで即興的に崩すパターンが多く見られる。左サイドはボールの逃がしどころやフィニッシュを担当する役割のため、組み立てに関しては多くを求められていないのかもしれない。

片山のアタッカー化

 というのも、押し込んだ局面でSBの片山が前線まで上がってアタッカー化する場面が見られ非常に面白い。右サイドでの作りに行き詰まった場合、CBまで戻して角度のついたボールを前線に送り、走り込んだ片山が競る。こぼれ球がFWに渡れば決定機、フィフティで落ちてもDFラインを強制的に押し下げられるため二次攻撃を展開可能。跳ね返された場合は一気にピンチに陥るものの、対面のSB、WBよりもフィジカルに優れる片山を当てるのはリスクに見合ったリターンが得られるだろう。

湘南にとって嫌な形
 ここまでビルドアップから攻撃の展開を見てきたが、清水は繋がずともロングボールで前進可能であるし、どちらかというと湘南にとってはこちらの方が嫌な戦い方である。サンタナの強さ、乾の上手さとキャラクターの異なる選手が収めることができ、ラフなボールでもピカチュウのスピードでDFラインを下げさせられる。

ロングボールで狙う位置

 カギを握るのはいつも通りプレッシングだ。マリノス戦では相手の巧みな立ち位置に混乱させられ、プレスがうまくはまらなかった。この試合では相手の幅に惑わされず、プレス要員が良い関係性を保ったまま中央を封鎖して相手を困らせたい。前節は塩谷の退場後、中央を固めた広島の守備ブロックの外を回す時間が多かった清水。ボールを握って相手の守備を動かす点は成長途中と思われる。日程面によるコンディションの差も含めて極力トランジションの場面を減らしたい湘南としては、5-3-2の利点をいかし中央へのコースを限定して外へ誘導。サンタナ目掛けて斜めに入ってくるボールを狙い撃ち、デュエルに勝利してボールを奪いたい。

湘南のプレッシング
ピッチ中央での戦い

しかしそのルートは清水の狙いのひとつでもある。サンタナにしっかりと収まれば、カルリーニョスのサポートとピカチュウのランニングで一気に攻撃がスピードアップ。湘南のDFラインを背走させながらゴールに襲い掛かるはずだ。すなわちピッチ中央のデュエル、ボールがサンタナに収まる状況がどれだけ生まれるかどうかがこの試合の勝敗を分けるだろう。

■保持の狙い

浮いたWBを使ってSB裏を狙う

サイドの攻略、その後のクオリティ
 清水のプレッシングはさほど積極的ではない。2トップはどちらかのサイドとボランチへのパスコースを限定するにとどまる。3-4-2-1でWBがいる広島に対し、ボールサイドのSHが1列上がって3バックへのプレスに参加したが、同サイドのWBが空いてしまい簡単に前進を許してしまっていた。この辺り、とくにサイドのスライドに関しては修正してくると思われるが、SBが中野まで出てくるのであればマリノス戦と同じ盤面。この試合では勇気を持って前にボールを付けてほしい。反対にSBが後ろで構えて中野が空くならば前進は容易。SB裏のスペースはCBではなくボランチがカバーしているようなので、サイドの攻略はさほど難しくないように思う。
 一方で中央は強固だ。SBのカバーに出ない分CBは中央に構えており、単純なクロスは簡単に跳ね返される上、GKには日本代表が構える。サイドを突破するならば完全に崩し切り、ゴールエリア横のポケットからマイナスに折り返すような形(アウェイ京都戦のゴールのような)を作らないとゴールを割るのは難しい。
 非保持の項でも触れたがコンディション面では中二日の湘南の方が不利であり、短時間に何度もスプリントを繰り返すようなトランジションの局面を少なくしたい。そのための中央封鎖とデュエルなのだが、保持の局面でも同様。よっぽど決定機でなければ、奪ってすぐ攻め急ぐのは自殺行為に近い。最後尾ではある程度時間がもらえる見込みがあるので、WBを高い位置に置きながら相手を押し込み、サイドの奥深いところを取ることを狙いたい。

■ベンチワーク

 予想スタメンでは茨田をアンカーに置いたが、米本を起用してサンタナをCBと挟み込む形も考えられる。その場合はバランサーとして茨田を右IHに置きたくなるものの、中盤の底を任せる控え選手がいなくなってしまう。90分を見据えた戦いを考慮すると、この試合で二人が同時にピッチに立つのは時間限定になりそうだ。(舘をアンカーとカウントすれば、あるいは…)
 トランジションを抑えた試合展開に持ち込みたいのは、前線のスペシャルである阿部とウェリントンをいかしたいのもある。現在の彼らは相手DFを引き連れながら30mスプリントした後に正確なキックをできる選手ではない。その高いクオリティを出すため、ペナルティエリア内に良い状態で入ってもらうには相手陣内に押し込む場面を多く作りたい。
 清水のベンチには鈴木唯人、北川航也と実力あるアタッカー、精度の高いキックを持つ山原が控える。怪我明けなどの理由でコンディション面でまだまだのところがあるのかもしれないが、途中出場で流れを変えられると厄介だ。

■湘南のキープレイヤー

大野和成
サンタナとマッチアップする可能性が最も高い選手。
彼が勝てれば試合にも勝てる。


いただいたサポートは現地観戦のために使わせていただきます!