バックでいれて
書道家の米早食です…
私は運転が下手ですので車を駐車場に入れるときは正面から入れてしまいます…
妻が同乗していると「ああ…バックでいれてください…」といつもため息をつくのです…
何故そんなにバックにこだわるのか…妻の言い分はバックで入れたほうが安全であるというのです…
では運転をかわってくれというと「妻が運転するなど格好がつきません…あなたのためを思って言っているのです…」と言われてしまいました…
悔しくなった私は稲妻のような切り返しで車幅も完璧なバック駐車を妻に見せつけてやろうとペーパードライバー講習を受けることにしました。
自動車学校に通うのは億劫だなと思っていたらペーパードライバーの出張講習というものがあると知り教官も指名できるとのこと…
私はどうせなら美人な教官に教えていただきたいとホームページを見て大きなタレ目の狸顔でむっちりとした肉付きとたわわな胸に優しい色気が薫る吉岡指導員を指名しました…
私は吉岡指導員と合流して挨拶もそこそこに早速車を走らせました。
吉岡指導員の色気は写真以上で少し緊張しましたがとりあえずは何も考えずに普段通りの運転を見せて欲しいとのことで会話をしながら車を走らせていると緊張も解けてきてなぜペーパードライバー講習を受けたのかその経緯を話しました。
後半は妻への愚痴となってしまいましたが…話が弾み結局は指導も受けることはなくドライブだけで終わってしまいました…
次の日も吉岡指導員とのドライブとなってしまいましたが段々ともう運転が上手くなりたいという気持ちは薄れ彼女に会いたいという気持ちが強くなってまいりました…
段々と慣れてきた私たちはは講習時間内にドライブスルーに何回通れるかなどほぼ講習と関係ないことをしては楽しいドライブをしていたのです…
「自信の無い運転だったのが堂々と運転するようになりましたね…」と彼女は言ってくれて…隣に美女が乗っているという自信が運転の自信につながったのだろうか…と思いながら彼女からの卒業を考え寂しくなってしまいました…
翌日に最後の講習を控え次の予約をとろうとスーパーの駐車場に車を止めました。
彼女との別れ際「次の講習で最後でございますが…あなたと別れるのは名残惜しい…うちの運転手として働いてくれないだろうか…」と言うと「運転が上手くなるために講習を受けたのに運転手を雇うなどは本末転倒ではありませんか…??それはある意味で私の存在を否定しているに等しいでしょう…」と彼女は言いました…
「もう、会う方法はないのかね??」と尋ねると「私たちは夢の中にいたのです…刹那は刹那であるから輝く…」と彼女は目を瞑りました…
私は彼女に接吻しようと顔を近づけると助手席の窓には妻の顔が張り付いておりました…
すんでのところで接吻を回避して窓を開け「指導員の吉岡さんというのだ…いやぁ…君のためにスパルタで練習していたんだよ…ハッハッハ」と言うと妻は無言で去っていきました…
吉岡指導員も興醒めしてしまったのか次の日はとても事務的なドライブとなりました…
それからというもの…運転に自信のついた私でしたが妻と出かけるときは妻が運転するようになり、吉岡指導員のフローラルの残り香も妻のファブリーズによって消えてしまいました…
私は妻を愛しているのですが…ハンドルを握ると吉岡指導員を思い出してしまうので車に乗るのを辞めてしまいました…
別れても吉岡指導員の存在を車に乗るたびに思い出させる…罪な女だ…と悲しみに暮れていましたが…ある日スーパーの駐車場で吉岡指導員がとんでもなく濃厚な接吻をしているのを発見して私は再びハンドルを握ることを決意したのでした…