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課外授業

書道家として筆一本で飯が食えるようになった私ですが…
若いころはなかなか世間に認められず…書道教室を開いて食いつないでいた時がありました。
当時、書道は礼儀礼節からという言葉を掲げていましたので俗にいう不良と呼ばれる子もあずかっておりました。
ある日の授業終わりに今でいうところのタレントのローラのような風貌の金髪の高校生に「先生…相談したいことがあるからこの後一緒に…」と誘われたことがありました…私は「すまない…今は次の作品が立て込んでいて…」と断ると次の日、その女の子のグループ3人が授業中に「先生…あの子の誘い断ったんでしょ!?」と大声で授業を中断させてきました…ああ…この子たちはこうやって遊んでいるんだな…と思った私は「日本には春夏秋冬というハッキリとした季節があるだろう??君たちのように年中、色を売っていたのではその色が魅力を失っていくだけでなく…その色にすら気づかないのだよ…」というと、近くにいたお嬢様学校に通う清楚で成績優秀な石原さとみ似の女子大生のA子が「先生は鈍感なのではないですか??私も髪を切りましたが気づきましたか??」と珍しく席を立ち大声を出したのです…教室はシーンと空気が張り詰めた後ざわつき始めました…A子は「ああ…私ったら…破廉恥…」といって走って教室を出ていきました…
とりあえずその場を収めて授業を終わらせると…駅の前でA子が待っておりました…
「先生…相談したいことがあるのでお茶付き合ってもらえませんか??」私は財布の中を確かめるとルノアールに入っていきました。
話を聞いていると…A子は誰もがうらやむ大手企業に内定が決まったことと、デートクラブにハマっていて援助交際をしているがやめられくて困っていると相談を受けました。
「勇気を出して話してくれたね…でも、君の美しさはいつまでも続かないように…もうデートクラブに行くのはスッパリやめて大手企業で頑張ってみたらどうだ??仕事っていうものは軽い気持ちでは続けられない大変なものだぞ…」と言うと「先生が好きって言ってくれたら…私と付き合ってくれるなら…スッパリとやめます…」と言いました。
私はまたこの娘もハニートラップか…と思い「先生をからかうのはやめなさい…」と一蹴して家まで送りました。
その後…A子は教室に来なくなり一か月後A子の親から自ら命を絶ったと報告を受けました…
なぜ、あの時…嘘でもA子に「好きだ」と言ってあげられなかったのか…自分を責めました…
おそらくA子は愛というものに悩んでいたのでしょう…成績優秀なA子に向けられるのは親の愛ではなく期待…デートクラブという新しい世界も彼女の体への期待とお金を裏に隠した表向きの愛…私には書道という現代の生活ではなんの意味もないと思われるものに心血を注ぐ無償の愛…そんなものを感じていたのかもしれません…

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