♯16 耳管開放症という障害。

怠け病

朝が嫌い、なのは勿論なのだがそれ以前に何時だろうと起き上がるのが今でも嫌いだ。

昔から嫌い、できる事ならずっと布団にいたいし何なら床でもいい。
カーペットでも座椅子でも、ソファがあれば最高だ。

耳管開放症の診断基準の一つにもなっている前屈での緩和。

椅子に座り、前屈みをして頭部を下に下げることで鼓膜付近の耳管に血液が溜まり浮腫む。
これにより開いている耳管が塞がり楽になるという現象。

もちろん当時はそんな事はつゆ知らず。
大体この時代の私が明確に耳管開放症であったとも言い切れないが、横になっている間は自分の声は響きづらいと言う感覚は覚えている。 

だからと言ってずっと横になるのも出来やしない。

布団は私にうまく話す機会をくれた。
横になっているとよく話す、けれど起き上がると話さないなんて確かに傍目から見たら怠け病だ。

何も間違ってない。

実際耳管開放症は別名怠け病と言われていた。

仕方がない、だってこれは個人の症状にもよるが痛みが伴っているわけではない。
だからこそ理解されづらい部分がある。

小学生の時に『ぼくの世界、きみの世界』と言う国語の授業をやった人はいるだろうか。
もし知らないなら検索すれば全文が出てくる、ぜひ見てほしい。

薄暗い電球、頭痛、チョコレート。

今の時代最も必要な内容なのではないかと思っている。

日本は世界から見てもオノマトペが異常に多い国だ。
水だけでもキラキラ、サラサラ、ザアザア、チョロチョロ、ピチャピチャ。
水だけなのにまだまだある。

病院で自分の症状を説明するときにも使うオノマトペ。
ズキズキ痛い、ガーンと響く、ギュウッと締め付けられる。
どれも今この表現だけでどう痛いのかがわかる人も多いだろう。

非常に便利なオノマトペ。
人に自身の経験から来る記憶、想像を思い起こさせる言葉の羅列。

それが私たち耳管開放症には難しい。
いや、もしかしたら私自身が出来ていないだけなのかもしれない。

ぼくの世界、きみ世界にあやかって一つ私があなたに問いかけたい。

私はほっぺに空気を入れることが出来ないんだ。
すごく音が大きく聞こえて、耳からも音がするんだ。

全く意味がわからないと思う。
けれど一部の人はわかるんだ。
これは私だけではないと強く言い切れる。

なぜなら特定機能病院で受ける耳管開放症の診断基準の一つにもなっているから。
人は絶対に分かり合えない部分がある、同じ価値感や同じ感覚になる事は非常に困難であり時としてそれが膨大なストレスになる。

そして人に非常に理解されにくいこの病気は更に困難を増す。
理解者が極端に少ないのだ。
今でこそ認知が増えてきたらしいが、残念ながら私はまだこの病気を知っている人に出会ったことがない。

医者でも難しい病への理解、当事者が伝える事を困難とする病気を誰が理解出来ようか。

怠け病。
令和五年になってやっとこの言葉はなくなりつつあるのかもしれない。

それは今が令和だから。
この話はまだ平成の小学五年の話、誰も理解者がいるはずもない。




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