見出し画像

学振PD中の3ヶ月間研究留学@フィラデルフィア:世界トップレベルの自閉症研究拠点で学んだこと

こんにちは。酔いどれ研究者の松田(@stargate_boy)です。行動デザインを標榜しながら、行動イメージング技術を活用とした、ヒト-ヒト相互作用の心理学研究を進めたい!という怪しげなことを言っているのですが、そもそも、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)のある未就学児に対する発達支援研究が専門だったりします。

研究留学Advent Calendar 2019の24日目の記事でございます!

私(当時学振PD3年目)は2017年4月から7月までアメリカのフィラデルフィアにある、フィラデルフィア小児病院(CHOP: Children's Hospital of Philadelphia)にある、自閉症研究センター(CAR: Center for Autism Research)で訪問研究員(Short term researcher)をやりました。

1. いつ行ったか

2017/4/11-7/11(3ヶ月間)

でした。本当はもっと長期で行きたかったのですが、祖母の介護などの都合で、3ヶ月が最長だと判断しました。ずっと世界トップレベルの自閉症研究拠点で研究をしてみたい、と熱望していたので、学振PD最終年度に「今しかない!」と決断したのです。ちなみに、第一子が2月に誕生したばかりだったので、兎にも角にも寂しかったです。出産直後の大変な時期に送り出してくれた、奥さんには感謝しかありません。

2. どこに行ったか

画像1

フィラデルフィア小児病院(以下CHOP)は、小児ガンの研究で有名なところですが、そこにある、自閉症研究センター(以下CAR)は自閉症研究者で知らない者はいない、というぐらいの超有名な研究センターです。PIが10名以上いて、ポスドクは3−4名程度という超攻撃的布陣です。

画像2

超広いフロアに全員デスクがあって、Research Staffが数十名ひしめく様なところでしたが、アジア人男性は私一人だけでした。プロジェクトは全てGrantベースかつチームで動いているので、僕の様に個人でプロジェクトを進めている人はほとんどいませんでした。そう、他の人との関わりがほとんど無くてめちゃくちゃ寂しかったです。あと、スラングがガンガンに出てくるし、めちゃくちゃ皆んな早口なので、フィラデルフィアを舞台にしたドラマを見ながら耳を慣らす練習をしていました。

3. 何をやったか

アイトラッカー(Tobii)を用いた学習心理の実験プログラムをひたすら書いて、試して、書いて、という孤独な時間を過ごしていました。元々臨床発達支援研究をしていたのですが、倫理的な制約によって、子どもと関わることが出来ません。そこで、実験プログラム作成をメインにしたワケです。あとは週に1度、Science Meetingというのがあって、PI+ポスドクが研究プロジェクトを発表して、討論する、という内容でした。3カ月目には、何とか皆んなに顔を覚えてもらえるぐらいには、頑張って議論に参加していました。ちなみに、実験プログラム、3ヶ月でなんとか目処は立ちましたが、現在も未完成。頑張らないとあかん!

4. どうやって行ったのか

学振PDの研究費で行きましたが、ぶっちゃけフィラデルフィアは物価高いし、住居費も高いので、めちゃくちゃ貯金を切り崩しました。しかも3カ月の滞在期間にSan Francisco(IMFAR)とDenver(ABAI)にも行ったので、本当にお金無くなりました。受け入れに関しては出身研究室に1カ月滞在(2011年だったかな...)したことのある研究者が丁度CARに移籍した年だったので、2016年の学会参加タイミングでお願いしました。

5. 学んだこと

最先端の研究所でのプロジェクトの進め方、コミュニケーションの取り方

そんなスピード感でやるのかー。とか、PIはとにかくグラント取って、論文書いて、実験は全部RAにやらせて、とか。とにかくシステマティック。院生は既に決まっているプロジェクトに乗っかるので、チームサイエンス感が物凄い。良きも悪きもそんな感じでした。あと、論文投稿する前に、仲間の研究者に送ってコメントをもらう、というのもとても勉強になった。

3カ月でも英語コミュニケーションは上達する

とにかく週6は日本語インプットを遮断して、英語でしかコミュニケーションしない、という修行をしていたら、東海岸の超高速スピーキングも何とかついて行ける様になれました。非ネイティブがほとんどいない職場だったので、本当に英語についていくのが大変だった...成田に帰った時には日本語が聞き取れないぐらいでした。

人脈は大事

プロジェクトで関わらなかった人とは、あまりコミュニケーションする機会は無かったのですが、それでも単純接触効果は偉大です。以降も継続して年に1回はCARに行く様にして、共同研究のプロジェクトが消え去らない様、細く長く、で進めています。

6. まとめ

3カ月という短期間であっても、わたしにとっては、人生で最も長く海外に滞在した期間でした。研究にほぼ全てのエフォートを費やせた時期に、世界最先端の研究センターに滞在出来たことは、言語化がまだ出来ていない部分も含めて、有益だったんじゃないかなぁ、と思っています。ASD研究者の留学体験はなかなか少ない(特に心理学分野)ので、ちょっとでも垣根が下げられたらいいなぁ、と思ってます。

7. 雑記

フィラデルフィア滞在中は、留学生向けのハウジングを利用していて、https://ihousephilly.org/
そこでの友人との関係のお陰で救われていました(CARでは最初の方、全く友人を作る機会が無かったので....)。留学生が多いので、英語のハードルも高く無かったし....あと、自炊が出来たのでメンタルがやられなかった...米国のご飯は辛い(チャイナタウンに救われまくった)....NYとか、遊びに行っても良かったのだけど、なんかストイックに過ごしすぎたのは、少し後悔。ビールが安かったのは良かった。受け入れPIが忙しくてほとんどオフィスにいなかったけど、別のPIがめちゃくちゃハートフルに助けてくれたのも、大きな救いになった...あと、フィラデルフィアは気候の変化がとても大きいのが辛かったなぁ。次に米国留学する時は西海岸がいいなぁ笑。やっぱりスペインに留学したいなぁ笑


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?