クラビ連発足について思うこと(Negative ver.)

先日、日本地ビール協会(CBA)、全国地ビール醸造者協議会(JBA)、日本ビアジャーナリスト協会(JBJA)の協働で、業界発展を目指す「日本クラフトビール業界団体連絡協議会(以下「クラビ連」)が発足しました。

クラビ連に最も強く求めたいことは、「消費者の目に見える形での業界への貢献」です。その詳細は、Positive ver. をご参照下さい。

https://note.com/beer_ale2017/n/nadec130bafa9

この協働のことを知った時、大きく2つの懸念を感じました。

懸念① 「業界発展」の「業界」の認識について

クラビ連は、団体名にも「クラフトビール」という言葉が使われていることからも、「クラフトビール業界」の発展を通じて日本のビール文化の発展を目指す団体という認識です。ですが、そもそも各団体での「クラフトビール」の認識が一致していないのではないか、という懸念です。

まず、JBAは、2018年、「クラフトビール」を以下の通り定義しています。

1.酒税法改正(1994年4月)以前から造られている大資本の大量生産のビールからは独立したビール造りを行っている。
2.1回の仕込単位(麦汁の製造量)が20キロリットル以下の小規模な仕込みで行い、ブルワー(醸造者)が目の届く製造を行っている。
3.伝統的な製法で製造しているか、あるいは地域の特産品などを原料とした個性あふれるビールを製造している。そして地域に根付いている。

定義して4年が経過しましたが、これを用いたデータ等が公表されているということはありません。ただ、現在も定義のページは生きていることから、JBAとしては上記を定義とし、この定義に当てはまるものを「クラフトビール」と認識していると分かります。

一方で、JBJAの代表である藤原ヒロユキ氏は、今年2月の記事で以下のように述べています。

クラフトビールの定義とは? 醸造規模の大小ではない。
「知識と技術」+「発想と創造性」が重要である。
クラフトビールの定義を「小規模な醸造所が造るビール」とすることは、木を見て森を見ずとしか言いようがない。

…これだけを見て判断するのであれば、思いっきり対立構造です。藤原氏は個人の意見とも言えますが、JBJAの設立者であり現在も代表であるという点を考えると、その論調も少し苦しい気がします。
また、CBAについても、「クラフトビールの品質向上に資するため」という趣旨で開催された先の「ジャパン・グレートビア・アワーズ2022」にて、キリンのグループ会社であるスプリングバレーが出品されていることから、少なくともJBAの定義に当てはまらないビールを排除していることはないようです。

ここで、どちらの言い分が正しくて間違っている、ということを言いたいわけではなく、協働して業界発展を目指す、一枚岩で取り組む、と言っている団体間でその「業界」の認識に齟齬があれば、どこかで軋轢が生じないかという大きな不安があります。細部には目をつむり協働する、ということなのかもしれませんが、最終的に業界発展を謳う以上、その業界の認識のすり合わせは必要でないかと思います。

懸念② 運営体制について

これは業界団体に限らずですが、団体は、設立(=整備)することと同時に、継続して運営(=運用)することが重要です。今回の発足は「整備」に当たるので、今後「運用」していくことが必要ですが、各団体のホームページを見ると、果たしてそれは可能なのか、という懸念です。
JBJAは、記事は日々アップされており、一定程度運用されています。また、ビール業界の求人情報サイトであるビアQも随時求人が追加され、運用されているように見えます。
一方で、JBAは、4年以上更新のないTwitterをはじめ、発信されている情報は相当少ないと感じます。ホームページ上でも記載に誤記や表記の不統一も多く、見やすいページとは言い難いです。
また、CBAは、審査会やビアフェス、セミナーの情報はアップデートされていますが、DATAのリンク先やCopyrightの年数が古い等、ページ全体を運用できているとは言い難い印象です。また、直近でジャパン・グレートビア・アワーズ2022の受賞結果が公表されていますが、より見やすい形での公表、例えば、都道府県別や賞の結果別で絞る、年度別で比較する等が簡単にできれば、受賞結果に伴う知名度の拡大や売上の向上により寄与できるのではないかとも思います。

これらの原因として、いずれも営利目的の企業ではないため、十分な人材を抱えることはできず、そこまで手が回っていないということが考えられます。ただ、消費者が興味を持って、またメディア等が正確な情報を求めてホームページを訪れた際に、そこに求める情報が分かりやすく揃っていることも、機会を逃さないという点では重要な要素であると思います。
クラビ連の活動スケジュールにも「Webコンテンツの拡充」「情報発信強化」といった記載があるので、整備するだけでなく、未来に向かっての継続的な運用を期待します。

まとめ

Negative ver. としてここまで色々と好き勝手に書きましたが、団体間の矛盾点や運営の課題を指摘することが趣旨では全くありません。大きな期待があるからこそ気になるというところで、また、各団体、目に見えるところ以外でも色々と活躍してくれているんだと思います。そうなのであればなおさら、必要な部分において目に見える形でもリーダーシップを発揮してほしい、業界の発展に努めてほしいと思うところです。

ビールで明日を幸せに。🍻

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